第25話 今日は朝食当番です
色々眠れない条件が揃ってしまった夜。
それでも何時しか意識は遠のいていたらしい。
それに気づいたのはたたき起こされたからだった。
「朝ですよー。今朝は強制料理当番です」
ん、何だって。
「全員1回は色々当番に当たるんですよー。今日は正樹君は料理当番なんですよー」
聞いていないよ~。
でもまあ仕方ない。
起きる。
なお起こしてくれたのは美都理さん。
ついこの前までは人見知りで僕とも会話出来なかったのだけれども。
顔を洗う間もないまま厨房へとひっぱられていく。
調理場では既に4人がスタンバイしていた。
舞香さん、明里さん、未来さん、理彩さんだ。
全員名前と顔が一致する面々だけだったので一安心。
そして着いて。
「おはようございます」
と言ってすぐに。
「正樹、遅い!」
未来さんに怒られた。
「すみません、当番に気づいていなかったので」
「気づいていないというよりは知らない、ですね。当番連絡票が回っていなかったようです」
舞香さんが僕の代わりに事情説明をしてくれた。
そういう事まで魔法で把握できるらしい。
「うん、じゃ仕方ないか」
という訳で。
「何をすればいいですか。指示下さい」
明里さんが頷く。
ちなみに眼鏡無しモードだ。
「まず全体像。
今日の朝食は鶏煮こごりごはん。
御飯と冷たい鶏のにこごりとほうれん草と卵いためとみそ汁。
ほうれん草卵いためは舞香と理彩が、みそ汁は私と美都理が担当。
鶏肉は今圧力鍋でガンガンに熱を通している。あと10分経ったら加熱終了で蓋をあけるので、その時に料理鋏と菜箸で中の鶏肉を小さめにほぐして欲しい。ほぐしたら少し落ち着かせて、脂が上に出た時点で未来の魔法で冷やして完成。
なお、御飯は18合炊飯中」
なるほど、魔法で冷やす工程が出来る訳か。
それは便利だな。
18合は多いんじゃないかという気がするけれど。
6つ口があるガスコンロ。
うち2つは圧力鍋が蒸気をしゅっしゅっ吹いている。
2つは大鍋にだしパック、不明海藻、豆腐が入って火を通している状態。
残り2つでは舞香さんと理彩さんがテンポよくほうれん草と卵を炒めている。
2人ともなかなか慣れている感じだ。
妙に手つきがいい。
「舞香さんと理彩さん、ひょっとして以前から料理をやっていたんですか」
「私は毎回麺類か卵系の担当なのです」
これは舞香さん。
理彩さんは小さく頷いた後、
「小学校で家庭科クラブだったんです」
と教えてくれた。
「なるほど。手つきが妙に慣れている感じだなと思ったので」
と褒めていると向こうから苦情が来る。
「そっちを褒めるのもいいけれど、正樹が来るまで計4キロの冷凍肉を何とか鍋に押し込んだ私にも感謝しろよ」
それは確かに大変だったかもしれない。
「それは済みませんでした。で、参考までにどうやって入れたんですか」
「ごめん、実は解凍と加熱は美都理さんに頼んだ。美都理さんは加熱側で私は冷却専門だから」
あっさり白状。
なるほど、美都理さんは炎系魔法使いだった。
持ち魔法は料理にも応用可能らしい。
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