第24話 夜の部はこれから
藤沢先生は不機嫌そうな顔で言う。
「そろそろ遅いからさっさと寝ろ。あと今回はこの程度で大丈夫だ。以上!」
そう言ってふらっと去って行く。
何が何でどうなったんだ今のは。
僕にはまるでわからない。
でも。
「さて。ちょうどキリがいいから宴会終了!片付けるのですよ」
会長の言葉で皆さん動き出す。
戸惑っているのは僕と、あと1年生2人だ。
それに気づいたのか舞夏先輩がこっちにやってくる。
「驚いたかもしれませんが、これはこれで恒例行事みたいなものです」
「って、今のは冗談じゃなくかなり危ない事態だったぞ。アレは前に一度聞いた事がある。アレが通った後は病人と死人しか残らない。ここは日本だが現象そのものは同じ筈だ」
未来さんが若干焦ったように言う。
「ええ」
舞夏先輩が未来さんの言葉に頷いた。
「何も対処しなければここでもそうなるでしょう。
もともとあれは西洋風に言うと魔とか悪、日本風に言うと陰の気が溜まって具現化したものです。瘴気とも、見かけから百鬼夜行とも言われますけれどね。
この保養所、残念な事にあまりいい場所に無いんですよ。霊気のたまり場みたいな場所に近くて霊道もすぐ近くを通っていて。
そこに魔の力を持っている人間が集まって騒いでいるのですから、色々危険なものまで活性化してああ動き出してしまう訳です」
「だったら何故ああ簡単に退いたんだ。あんなのそれなりの力を持ったエクソシストでもなければ……」
途中で未来さんの言葉が固まる。
「まさか、あの酔っ払い教師が」
「ええ」
舞夏先輩が頷く。
「藤沢先生はああ見えて器用ですし色々出来るんですよ。エクソシスト、日本風に言うと陰陽師みたいな事も含めて。実は面倒見もいいですしね。耐魔技能は本人曰く必要に迫られて身につけたそうです。この学校に赴任してくる前の話だそうですが」
「そんな出鱈目な……」
そう言いつつも未来さんは半ば認めているような感じになっている。
「藤沢先生、M組全員を敵にして余裕で勝てるレベル実力者ですからね。だからM組統括を務められるんです。まあ便利なのでバスの運転手代わりもして貰っていますけれど」
うん、理解した。
なかなか出鱈目な存在だという事は。
見かけはただの中年のおっさんだけれども。
「舞香、説明終わったのですか」
これは会長だ。
「ええ、一応は」
「では全員撤収!寝るぞ」
という訳で部屋に戻る。
◇◇◇
布団を持って部屋の一番端、窓際を陣取ったところで。
「何なら添い寝してあげるのです」
会長がセクハラをかます。
「布団が狭くなるから結構です」
そうやり過ごして布団を被ったら。
ずるずると布団を引っ張られて。
何かと思えば布団が中央に寄せられていた。
そして周りに布団が敷かれる。
8人全員顔を合わせる感じだ。
「悪いな。これがこの部屋を使う際の定番の敷き方なんだ」
波都季さんがさらっとそう言う。
「そうですか。それはすみませんでした」
「ちなみに今そう決めた」
おい待て麻里副会長。
その台詞と微妙な笑顔は何だ。
「それでは魔女集会執行部、夜中の会議開催ですわ」
寝転んだまま。
思ってもみなかった第二部が始まってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます