第21話 よく考えて答えよう
主に会長にまつわる噂を断固として排除して。
でもおかげで色々周りと話しやすくはなった。
もちろんあくまで結果論ではあるけれど。
話を聞くとこの学校に来た経緯が色々。
深かったり面倒だったり大変だったり。
そういう意味では普通科の方はかなり気楽だなと感じる。
僕も地元でそれなりにあわないとか色々あったんだけれど。
それ以上に皆さん苦労している感じだ。
亡命みたいに外国から逃げてきた人も最低3人はいるし。
「それでM組ではどんな授業をしているんですか」
今は僕の前の席の女の子、2年生の
黒いおかっぱ髪にセル太めの特徴的な眼鏡をかけている。
ちょっと眼鏡の癖が強すぎるんじゃ無いかなとも思う。
多分普通の眼鏡の方が可愛いような気がするのだ。
でもそこを突っ込むのはもっと仲良くなってからだろう。
「カリキュラムそのものは普通科と同じ。ただカウンセリングの時間がある。あと日本以外出身者は日本語の追加授業もある」
「カウンセリングの時間は普通科には無いなあ。留学生用に日本語追加授業はあるみたいだけれど」
「魔法を安定して使うには精神の安定が必要。だから魔法使いにとってはカウンセリングの技術も知識も必要不可欠」
なるほどなあ。
「ところで明里さんはどんな魔法が使えるの」
明里さん、ちょっと考えてから口を開く。
「私の場合は特殊な視力。例えば隠してある物も中身を確認する事が出来る」
それから少し考える様な感じで間を置いて付け加える。
「ただ私を含めて自分の持ち魔法ははっきり言わない人が多い。魔法の性質によっては相手に怖がられたり避けられたりする事が多いから。例えば表層思考を読む魔法も存在するけれどそれを使えると公言する魔法使いは少ない。魔法使い同士でもそんな感じ。それは覚えておいて欲しいと思う」
僕はちょっと考えて。
そして明里さんの言葉を理解した。
その辺は配慮しないとお互い傷つくし傷つけるという事か。
「ありがとう。これからは気を付ける」
「助かる」
明里さんはそう言って微笑む。
悪くない笑顔だ。
ただ眼鏡がやっぱりちょっと似合っていないな。
あくまで個人的感想だけれども。
「あの舞香が安全だといった意味を理解した。だからついでにちょっと意地悪してみたくなった」
そう言って明里さんは眼鏡を外した。
うん、眼鏡を外した方が似合っている。
というか可愛い。
先輩だけれども。
でも意地悪とは何だろう。
「例えば私はこの眼鏡で自分の魔法を遮断していたとする。
そう。
実は私は、その気になれば見た人間の表層思考をそのまま見たり読んだり出来る。
特に見ている対象が嘘を言っているか何かを誤魔化しているか。
私はこの目でそう言った事を視る事が出来る。
ただ普段はこの眼鏡でそういった魔法を遮断している。
もしそうだとしたら、正樹君はどうする?
眼鏡を外した私を避けるか、それとも眼鏡を外した私から逃げるか?」
どうだろう。
冗談めかして答えた方が楽な質問だ。
でもいつもはあてにならない僕の直感が。
よく考えて真摯に答えろと言っている。
理由は何も無い。
明里さんの口調もあくまで軽かった。
それでも。
だから僕は考える。
確かに表層思考をそのまま読まれるのは怖い。
可愛いとか眼鏡が似合っていないとか。
そんな感想だけでは無く、もっと色々思っている事まで読まれてしまう。
それこそ一瞬ふと考える性的な部分まで。
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