第20話 文句を言いたいのは

 まずは料理を取ろうかな。

 そう思って割り箸を割って、適当なおかず等を皿に取る。

 からあげ、おにぎり、ハッシュドポテト。

 とりあえずお腹にたまりそうなものを中心に。


 なお女の子メインのせいか、おやつ系っぽいものも多い。

 アップルパイとか小さいチーズケーキとか解凍フルーツとか。

 取り敢えずからあげを1個食べたところで。


「それでは1年生から自己紹介をしていただきましょう」

との沙霧さんの台詞で思わずむせそうになる。

 そんな用意はしていないぞ。


「それではまず、未来みくさんからお願いします」

 良かった僕の番じゃなかった。

 聞きながら自己紹介を考える事にしよう。


「初めまして。私は狛江こまえ未来みく、見たとおり元々は日本ではなくオーストリアの出身です。未来の方で呼んで下さい。使用魔法は冷凍系統です……」


 未来さんは先生がいた場所を挟んで隣の女の子だ。

 小柄で金髪ツインテールという、微妙に会長とかぶる外見。

 こっちの方が年相応な感じだけれど。


 そして、

「次は理彩さん、どうぞ」

 今度も僕じゃなかった。

 でも僕以外の1年は2人だそうだから次こそは僕だよな。

 そう思いながら彼女の方を見る。


 栗色の短めの髪に瞳が薄い茶色で大きいのが印象的な、中肉中背な女の子。

 でもかなり胸があるような感じがする。

 気のせいかな。


喜多見きたみ理彩りさ。東京練馬区出身です。使用魔法は心理ショックや欺瞞系です。どうぞよろしく」

 あっさり終わってしまった。

 無口なタイプなのかな。


「それではトリは正樹君、どうぞ」

 僕の番だ。

 仕方なく立ち上がる。


「柿生正樹です。東京都足立区出身で、ご存じの方も多いと思いますが一般生で魔法は全く使えません。宜しくお願いします」


 座ろうとするのを会長に手で制される。

 そして沙霧さんの台詞が続いた。

「それでは正樹君に質問がある方、お願いします」


 おい待て。

「何故僕の時だけ質問コーナーがあるんですか」

「他はM組で大体知っていますからね」

 あっさりそう沙霧さんに返されて。


 そして見知らぬ女子の質問が始まる。

「入会動機は会長に惹かれてと、会長が自分で言っていましたが本当でしょうか」


 これは断固として正確に答えるべきだろう。


「ひかれたというのが物理的な方でしたら比喩として間違っていません。ただ正確には会長に脅迫されたからです。入会しないとストーカーするぞという」


 ああ、あのいつもの奴か。

 そんな声が何処かで聞こえた。

 理解して貰えたらしい。


 そして次の質問者。

「会長は私の恋人だと言っていたのですが、本当ですか」


「断じて違います。というか会長どんな噂を流したんですか。僕はあくまで会長の脅迫に負けただけでそれ以上ではありません」


 更に次の質問者。

「会長と運命的な出会いがあったというのは本当ですか」


「僕が妙な空間にはまったのを波都季さんに助けてもらったのがきっかけです。その後準備室で僕に起こった出来事とこの学校について、波都季さんと舞香さんに教えていただきました。会長が出てくるのはその後の事です。運命関係ありません」


「つれないな、私と正樹と仲だというのに」

 横から会長がそう文句を言う。


「どういう仲ですか。というかどんな噂が流れているんですか」

 文句を言いたいのはこっちの方だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る