第17話 同室でも問題無い

 階段には2階と書いてあった。

 つまり玄関は2階で下があると言う事か。

 階段を4階まで上がり、階段の斜め前の『大広間』と書かれた扉を開ける。


 中にいたのは毎度お馴染みの面々。

 うち2人が横になって伸びている。 


「遊里と美都理、掃除お疲れ様」

「流石にちょっと疲れましたね。全部の部屋を掃除するのは久しぶりですし。美都理ちゃんが半分受け持ってくれたから助かりましたけれど。今年は何としてでも新1年で火炎系魔法得意な人をスカウトしたいですわ」


 なるほど、燃やす魔法で掃除したから疲れて伸びているのか。

 さてと。


「どうもありがとうございました。それで僕の部屋は」

 ここは多分会長等、いつも準備室にいる部員用の部屋なのだろう。

 いくら何でも女子と同じ部屋という事は無いだろうから。

 僕は先生と同じ部屋かな。

 それはそれでぞっとしないな。


「うん、だからここが正樹の部屋だが。まあ見たとおり私を含めた常連部員用の部屋だけどな」


「ここだけ約20畳と部屋が広いんだ。まあ夜のゲーム部屋も兼ねているけどさ」

 波都季さんが部屋の隅で荷物整理しながらそう説明してくれた。


 うん、部屋が広いのはわかった。

 でも何だ。


「男子女子一緒じゃまずくないですか」

「大丈夫だ。問題無い」

 あっさり会長がそう答える。


「だいたい魔法も武道も使えない正樹に魔女を●●する事など出来る訳ないだろう。だから問題無い」

 一部伏せ字が入ったのは勘弁して欲しい。


「そういう問題じゃ無いでしょう」

「ならどんな問題が」

 そう言われると困るけれど。

 僕の貞操は?なんて言う訳にもいかないし。


「ちなみに他の客室も全部使っているから逃げ場は無いぞ。2階の元従業員用和室は先生が使っているしな」


「そんな訳で。取り敢えず今回の旅行のしおりですよ。校舎が違うから渡すのが遅くなってしまいましたけれど」

 沙霧さんが2枚折りの紙を渡してくれる。

 真っ先に見てみたのは部屋割りだ。

 確かに他の部屋はそれぞれ2~3人で全部埋まっている様子。

 そして大広間のところだけ8人で僕の名前もあった。


 部屋変更を諦めて他の部分を見てみる。

 日程表というのがあった。

 今日はこの後19時から夕御飯兼宴会。

 明日は食事の他に日中は魔法スポーツ大会、夜はカードゲーム大会。

 明後日は朝食、魔法スポーツ大会、昼食、帰校となっている。


「魔法スポーツ大会って何ですか」


「テニスと卓球と威力測定ですわ。ただしテニスと卓球は魔法使用OKのルールです。ただ空間魔法だけは使用禁止です」


「前の会長対波都季さんの戦いが酷すぎましたからね。空間歪曲を使いまくったせいで、どこがコートでどこがコート外か、概念ですらわからなくなりましたから。

 あれ以来空間魔法だけは前面使用禁止にしたんですよ」


 遊里さんと沙霧さんが僕に説明。

 説明されても状況がまるで理解出来ない。

 とんでもないという事だけは理解出来たけれど。


「さて、とりあえず7時の宴会前にお風呂に入ってきたらどうですか。私達も順番でそうする予定です。男性用は大浴場とまではいかないですが、そこそこ広いですよ。先生は例年宴会が始まった後に入りに行きますから」


 舞香さんがそう勧めてくれる。

 そうしようかな。

 せめて風呂で一息つきたい。

 ここは女性密度が高すぎる。

 そんな訳で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る