第15話 金曜日の放課後
そんな訳で。
金曜日の午後3時50分。
ホームルームの時間が終わると同時に僕は席を立つ。
「早いな柿生、何か用事でもあるのか」
「ああ、待ち合わせだな」
春日野にそう言うと栗平が食いついてくる。
「女か」
まあ女には違いないけれど。
「そういう楽しいものだといいけれどな」
「合コンとかなら連れて行けよ」
「その時は呼んでやるよ」
なんて会話をして教室を出る。
寮に戻って服を着替えて。
昨日夜に準備した一式入りディパックを肩にひっかけて。
学園全体の事務を扱っている事務棟の前で待つ。
M組の校舎とか特別生の寮の方はあまり出向かない方がいいらしい。
「今はまだ1年生が普通の人を怖がっていたりしますからね。用心という事で申し訳ありませんが正樹君は事務棟前で待っていていただけますか」
という指示があったからである。
待ち合わせ時刻は午後4時10分。
結構早いなと思って待っていると。
中年男性と子供……に見える会長の2人が事務棟の中から出てきた。
「悪い、待たせたな」
この台詞は当然会長だ。
とするとこの中年男性が顧問の先生か。
僕の想像とは色々と異なった感じだ。
いかにも中年太りという感じのむさいおっさん。
そんな感じである。
髪はとりあえず毎日ブラシで整えてはいますよ、という程度の64分け。
銀縁眼鏡に無精髭。
ゴルフ用っぽいスラックスと微妙に襟が伸びたポロシャツ。
どこからどう見ても冴えない中年という感じだ。
魔法持ちのM組統括主任という感じは一切無い。
「魔法研究会の顧問で特別生の担当の藤沢という。悪かったな。でもこれもまた縁という事で諦めてくれ」
挨拶からしてこんな感じだ。
「初めまして。1年A組の柿生です。宜しくお願いします」
「まあ固い挨拶は抜きだ。これは課外だからな」
そう言って歩き出す。
「何処へ行くんですか」
「この学校の車庫だ。マイクロバスを借りているからな」
会長がそう説明して歩く事約3分。
本格的な大きいマイクロバスが停めてあった。
多分路線バスの普通のと同じくらいの大きさだ。
「こんなに大きいバスが必要なんですか」
「他に適当な車が無いからな」
先生はそう言って扉の鍵を開ける。
どうやら先生自ら運転するようだ。
そして。
「正樹の席はここだ」
運転席の真後ろの2人席窓側を指定されてしまった。
そして当然のように会長が僕の横に座る。
「一般人にも男子にも馴れてない生徒が多いからな。念の為だ」
でも毎日の課外にも出ているんだし今更だろう。
そう思うのだけれども。
「バス出るぞ。取り敢えずは寮の前でいいな」
「お願いします」
という事で。
バスは曲がりながら後退して学園内道路に出て。
そしてゆっくりと走り始める。
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