第14話 合宿は決定した

「でも合宿といきなり言われても、そんなにお金無いですよ」


 うちの家は普通のサラリーマン。

 仕送りはぎりぎりの額である。 

 小遣いに余裕などない。


「心配する必要は無い。貸別荘と言っても学校の施設だ。この学園の学生や生徒なら1泊1人500円という冗談みたいな値段で使える。その分整備は行き届いていないから、行ってから掃除する必要があるがな」


「それは……安いですね」

 思わずそう言ってしまう。


「元々は提携企業の保養所だったらしいの。それを格安で学園が手に入れて。だから古いしボロだけれど設備そのものは整っていますよ。テニスコートもありますし」


 遊里さんが追加説明。

 それはそれは。

 のせられているようだが楽しみになってきた。


「周りに他の別荘無いから、騒いでも多少魔法を使っても問題無いしさ」


 これは波都季さん。

 それは僕にとってちょっと微妙だけれどな。


「交通機関とかはどうなんですか」

「大丈夫ですよ。学校持ちでマイクロバスを出しますから。車ならここから1時間かかりませんわ。費用は宿代500円と買い出した食糧の割り勘分だけですわ」


 沙霧さんがそう説明。

 何か至れり尽くせりという感じだ。

 何か落とし穴があるような気がするが、見当たらない。


「問題無いなら計画詳細だな。沙霧、任せていいか」

 沙霧さんが頷く。


「ええ。いつもの通りでいいですわ。買い出しは行く途中にスーパーセルパと業務用スーパーに寄って。掃除は遊里さんと美都理にお願いすればすぐですしね。魔法で一発という感じで」


 魔法で掃除とはどういう感じなのだろう。


「なら評決だな。まずは新人歓迎合宿の件について。4月10日金曜日放課後から12日日曜日夕方まで。場所は当学園コテージ。費用は1人1500円でいいだろう。賛成の人は挙手!」


 僕も含め全員が手を挙げた。


「全員賛成、了承」

 麻里先輩がそう呟くように言って。


「内容は現在時でM組共通掲示板に流します」

 舞香さんがスマホをポチポチ高速で操作している。


 という訳で。

 いきなり今週末は合宿になってしまった。

 ふと考えると色々のせられてしまったようで。

 かなり不安。


 あ、不安と言えば。

「そう言えば合宿って生徒だけで行っていいんですか」


 仮にも男女合同のお泊まりなのだ。


「顧問の先生が一応ついてくる。でも最小限以外は口出しをしない性格だし心配はいらないな」


 波都季さんが教えてくれた。

 この魔女の活動に顧問の先生がいるのか。

 考えてみれば当たり前だがどうにも想像がつかない。

 でもどうせ魔女なんだろうな。


「顧問の藤沢先生は男性で魔法使いでもありません。M組の統括主任で1年M組の担任でもあります。ここの活動には最小限しか出てこられませんけれど」


 僕の考えを読んだかのように舞夏先輩が教えてくれる。

 まあ舞夏先輩は何でもわかる魔法持ちだけれども。

 男性で魔法使いでない先生か。

 何故そんな先生がM組統括主任とかここの顧問とかをしているんだろう。

 そう思う僕の耳に。


「なら錬成合宿については新人歓迎合宿が終わってからだな」

「同意」

「そうですね」


 という三役の声が聞こえた。。

 会議は終了の模様だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る