第8話 小学生で厨2病

「何なら一緒に色々なところを見て回ろうか」

 という栗平の誘いを断って。

 目立たないように教室を出て、専門教室棟へ。


 2階の廊下は静まりかえっている。

 物理・化学準備室前まで来たが人の気配を感じない。

 中にいるのかなと疑問に思いつつ。

 僕は扉をノックする。


「失礼します。昨日お邪魔した柿生です」


「どうぞ」


 昨日いた先輩のどちらとも違う女子の声がした。

 ちょっと不安に思いつつも、僕は扉を開く。


 で。

「失礼しました」


 部屋を間違えたようだ。

 僕は慌てて扉を閉じようとして。


「ちょっと待て。間違っていない。落ち着け」


 そう女の子の声で言われる。


 見えるのは昨日のいかにも理科系準備室というのと全く違う部屋。

 白い壁にアンティークな木製家具。

 そして広い木製のテーブルが2つ並んでいる部屋だ。

 そしてテーブルに5人の女子生徒が座ってこっちを見ている。

 よく見ると2人は昨日お馴染みの鶴川先輩と玉川先輩だった。


「まあ安心して入ってくれ。見かけは違うがここであっているからさ。人数がいる時は魔法で空間拡張とか色々やっているんだ」


 と鶴川先輩に言われたので中に入って。


「どうぞ」


 と玉川先輩が横の椅子を勧めてくれたのでそこに座る。


「今日は悪かったな。悪い先輩がいてさ、どうしても呼べって」


 鶴川先輩がそう言ったという事は、


「あのしおりにメッセージを書いたのは鶴川先輩ですか」


「それは私だ」

 一番窓際に座っている女子生徒がそう偉そうな口調で言う。

 けれど。

 女子生徒?


 見かけは高校生どころか中学生でも無い。

 小学生、それもせいぜい3~4年生程度だ。

 この人も外国出身なのだろうか、金髪で色白。

 その金髪をツインテールにしている。

 顔も見るからに童顔。


「まあ最初に自己紹介をしておこう。私は百合丘ゆりがおか静音しずね、3年M組、ここの研究会の会長をしている」


 3年?

 会長?

 その視線の意味がわかったのだろう。

 彼女は続ける。


「この外見はわざとだ。年を取らない魔法は簡単だが若返る魔法は難しいからな。自由自在に若返る魔法をマスターするまで年を取らない事にしている」


 なるほど。

 取り敢えず理屈は理解した。

 そして右隣の黒髪ロング、黒縁眼鏡の女子生徒が軽く頭を下げる。


「副会長、生田いくた麻里まり、3年M組」


 そして会長の左隣のふわっとした雰囲気の女子生徒が頭を下げる。


「私は向ヶ丘むこうがおか遊里ゆうり。柿生君ごめんね、こんな変な面子の前に呼び出して。会長がどうしてもって抑えられなくて」


「変な面子とは何だ」


「静音がその代表ですわ」


 さらっとだけれど何気に厳しい事を向ヶ丘先輩が言って。

 そして会長はにやりと嗤う。


「クックッックッ、まあいいだろう」


「会長、その台詞は厨っぽいんで止めたほうがいいですよ」


 鶴川先輩の指摘にも会長は動じない。


「甘いな、私の姿はまだ小学生、厨っぽい位でちょうどいい」


 会長、何か良くわからない趣味をお持ちのようだ。

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