第7話 魔女の脅迫文

 筆記用具だけ持って大教室に移動。

 これはB組との合同教室用の教室だ。

 前から印刷された小冊子が回ってくる。

 題名は『課外活動のしおり』と書いてある。


「これからほとんどの生徒諸君が高校3年間を寮で過ごす事になる。寮から学校の教室まで5分程度。しかも我が校は校内や寮の共有部分の掃除は外部業者に委託している。だから授業終了から就寝まで、かなり時間の余裕が出来る筈だ。

 無論全ての時間を勉強に打ち込むなんてのもいい。自分1人で出来る趣味を極めたいという生徒も当然いるだろう。しかしこの余裕のある時間を課外活動に充てるというのも私としてはお勧めだ……」


 前でA組担任兼学年主任の鵠沼先生が説明している。

 僕は先生の話を聞く振りをしながら。

 配られたしおりを開いて見てみる。


 色々な課外活動の部やクラブが表になって記載されていた。

 運動系より文化部系の方が多い。

 春日野が行きそうな電子工作部なんてのもちゃんとある。

 他にも漫研とか文芸部なんてお馴染みのから筋トレ愛好会とか変態道振興会という訳のわからない物まで。


 でも……

 表を最後まで見てみる。

 魔法研究会は載っていなかった。

 やっぱりあれはM組専用。

 普通科の方には載っていないのだろう。


 ちょっと残念な気もしたけれど。

 でも僕なりにどこが向いているかな。

 そう思った時だ。

 不意に僕の見ているページの下部余白に文章が浮かんできた。


 『普通の活動に入れると思うなよ』


 えっ!

 思わず声が出そうになるのを何とか抑えきった。

 何だ今の。

 咄嗟にその部分を手で隠して。

 そして手を少しだけ動かしてもう一度読んでみる。


 『普通の活動に入れると思うなよ。魔女に関わったからには諦めろ』


 文章が増えていた。

 ちょっと考えて、そして理解する。

 これもきっと魔法だと。

 例えば鶴川先輩の魔法。

 あれは時空間の操作だと聞いた。

 あの魔法ならこんな事も出来るかもしれない。


 でも昨日はそんな様子はみじんも無かったのだけれどな。

 そう思うと。

 更に文章が追加された。


『放課後昨日の部屋で待つ。来ない場合は魔女の呪いを受けるであろう』


 おいおいおいおいおい。

 まあ取り敢えず、魔女の仕業である事はわかった。

 何だか昨日の雰囲気と違うし、ぞっとしない感じでもあるけれど。


 おかげで先生の説明とかしおりの中身とか。

 はたまた各部やクラブ等の部員自身による紹介とか。

 その辺りが全く頭に入らないまま時間は過ぎていき。


 何時しかオリエンテーションは終わって自教室へと帰る時間になったのだった。

 そして。

 最後に自教室で鵠沼先生からの一言が入る。


「今日はこれで学校は終わり。今日も課外活動の勧誘が昇降口から先に並んでいると思うが、4月いっぱいは仮入部期間、だから気軽にあちこち見て回って大丈夫だ。

 さて、質問は無いか。無いな。

 なら今日はこれで解散。日直、号令」


「起立」


 中学校までの授業と同様、起立、礼、解散で授業は終わる。

 掃除は無いのでこれで終わりだ。

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