第6話 工業系附属高校の実情

 さて。

 昨出会った先輩は2人とも女性だった。

 でもここは工業大学付属校。

 なのでクラスは男ばかりである。

 1年A組40人の中に女性は4人。

 なおB組は3人だそうである。


 今は午後の昼休み中。

 パンを食べながら周りの男子生徒どもと会話中


「覚悟はしていたけれど花がないよな」


「しょうが無いだろう。大学卒業まで諦めろ」


「だいたい工業系来た時点で女子は少ないの想像出来るだろ」


「考えていなかった。迂闊だった。思考の盲点だ」


 なんて会話をしている。

 ちなみに右横の席にいるのは栗原。

 前の席にいるのは春日野はるひのだ。

ちなみに女子が少ない云々を言っているのは栗平の方。


「だいたい学校自体に女子が少なくてもだ。普通は近くに女子校とかあるだろう。それがどうだ。開発団地一帯、他に高校等ありゃしない。大学も工業大学だから男ばかり。ナンパの自由さえ許されない環境かここは」


「ちなみにナンパなんでする度胸はあるのか」


「無いです正直なところ」


「駄目やん。諦めてクラスの女子誰かを狙ったらどうだ」


「倍率高そう。勝てる気しない」


 そんな下らない話をして。


「だいたい本当はもっとこの学校、女子がいる筈なんだぞ」


 と栗原が言った。

 僕は一瞬ぎょっとする。


「ほう、何処におるんだそんな存在は」


 春日野はそう栗原に問いかける。


「少なくとも昨年の入学者100人のうち、30名は女子の筈だったんだ。昨年の資料ではそうなっていた。

 しかも本年卒業者98名のうち35名が女子だったんだ。このデータは学校資料にも記載されていたから間違いない」


 あ、それは多分……

 僕は特別科の事を口に出そうとして。

 そしてすぐに止めた。


 確か特別科の生徒は存在を知られるのを怖がっている人が多いんだよな。

 だからこの件は黙っていた方がいいだろう。

 そう気づいたから。

 だから。


「でも入学式でもA組とB組あわせて80人、うち女子は7人だぞ」


「そうなんだよな。この学年から定員が減ったのかな」


 という2人の議論には取り敢えず加わらないでおく。

 でも念の為話題も変えておこう。


「ところで次の時間は何だっけ」


「課外活動のオリエンテーション。部活やらクラブ等の紹介」


「どこか女子の多い部とかクラブはあるかな」


 おいおい栗平。

 飢えているなお前。


「元の人数が少ないから望み薄じゃねーの」


「漢は心の浪漫を追いかける生き物なんだ」


「栗平のは浪漫じゃなくて性欲だろ」


「正常な青少年として当然の欲望だ」


 堂々と言うな。


「ところで春日野はどんな課外活動希望なんだ」


「電子工作とかロボットとかのクラブがあればなと思うんだが」


 春日野は元々の志向が工学系らしい。


「中学時代もアルデュイーノとかで色々遊んだからな。出来れば高校に入ったのを機にもっと大作を作ってみたい。リアル系ロボットとかな」


「それは搭乗して空を飛んだり出来るのか」


「な訳ないだろう。アニメじゃあるまいし」


 なんて話をしていたら。

 キンコンカンコーン

 チャイムが鳴った。

 午後の時限が始まるようだ。

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