第1章 魔女の課外活動
第3話 説明前に手品から
ちょっと透明がかった白いカップで紅茶が出てきた。
香りはとてもいい。
僕では何もわからないけれど、多分いい紅茶だ。
「さて。まずは私から自己紹介するか。
ん?
「2年はM組まであるんですか」
僕の学年はA組とB組の2クラスだ。
「M組というのは、そうだなあ。募集要項の特別科ってのはわかるか」
そう言われるとそんなのがあった気がする。
一般募集無し、指定人推薦のみという受験制度なので無視していたけれど。
「指定人推薦のみという特殊な募集枠ですよね。でも今日入学式に出たのはA組とB組だけですよ」
「特別科は別扱いだからな。教室も別棟だから普通科の生徒とは会わないし」
「何故そうなっているんですか」
「まあその辺はおいおい説明だな」
聞けば聞く程わからない事が増えていくような。
そして今度はあの白い女子生徒が口を開く。
「私は
なるほどなと思う。
髪に限らず確かに雲母といわれればそんなイメージがする。
鉱物っぽいというか微妙に生き物っぽく無い雰囲気を含めて。
「さて。柿生君の自己紹介の前にちょっとお話をしましょう。その前に前提知識の確認です。柿生君は何故、この学校を受験したか、お聞かせ願えますか」
完全に僕の名字はわかっているようだ。
名札もつけていないしカバン等に名前が書いてある訳でも無いのに。
でもそれにこだわっていては話がすすまない。
だからここは聞かれた通り答えておく。
「浅間工業大学に全入できる割には難易度がそこまで高くなかったから。あとは地元を離れてみたかったからです」
玉川先輩はは頷いた。
「なるほど、一般的かつわかりやすい理由です。
それなら浅間工業大学がそれなりの評価を得ているという事は知っていますね。
では何故浅間工大がそれだけ実績をあげられたか、ご存じでしょうか」
そこまでは調べなかった。
だから、
「わかりません」
と素直に答えておく。
玉川先輩はもう一度頷いた。
「そうですね。一般にはあまり公開していませんから。
そこで一般人であった柿生君に、これからひとつ手品を披露しましょう」
玉川先輩はそう言って、机の引き出しを開けてトランプを取り出す。
「よくあるお約束の手品です。まずはこうやってカードを並べてシャッフルします」
彼女は手品師のような鮮やかな手つきで様々にトランプをきる。
「そうしてこうやって後ろ向きに並べます。全部並べるのは面倒なので10枚くらいでいいでしょう」
僕と彼女の間にトランプを数字の見えないように並べる。
「さて、ここで私は後を向きます。柿生君はどれか1枚のトランプを選んでこっそり番号と記号を確認して下さい。
確認したら私に確認した旨を教えて下さい。
私は後を向いたままそのカードが何か当てる。そういう手品です」
そう言って玉川先輩は椅子を回転させて後ろを向く。
何故こんな手品をするのか不審に思いつつ。
僕は右から3番目のカードを選ぶ。
そして他から見えないように少しだけめくって端を見て確認した。
これなら棚のガラスが反射しても見えないだろう。
「いいですよ」
「ハート7」
即座に答が返ってくる。
あっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます