第11話 反抗期

すずです。

ヤンチャが過ぎて、お母ちゃんから

じゃじゃ馬すずちゃんって言われてます。

なに言うてんのお母ちゃん、すずは馬ちゃいますって。


もう、やりたい放題しています。

毎朝大和川に散歩に行くんです。

前までは見るもの触るもの、みんなが訳わかんなくて怖くて

お父ちゃんのリードに引っ張られたまんまだったんですけど

そんなもん、たいしたことないわって分かったら

大和川の散歩、ルンルンです。

ほったらかしにされてる大和川の土手は草ボウボウ。

朝早く行くので誰もいなくて、

思いっきり走りまわって、

お父ちゃんの腰まで位の草むらにジャンプインするんです。

そしたら、隠れていたひばりが飛び出して・・・。

最初はびっくりしてたんですけど

すず、楽しくて追いかけまわしています。

ある時、こんなことがありました。

いつものように草むらに飛び込んだらひばりが一羽飛びあがって行って翼バタバタさせて上空で止まってるんです。

「ピーチクパーチク」ウーン確かにピーチクパーチクって聞こえるなぁ、うるさいなぁて思っていたら

周りの草むらから一斉にひばりが数羽飛び立ったんです。

あのひばり、危険をみんなに知らせたんやねぇ。ひばりもすずと一緒で仲間で暮らしてんやなぁって

思いました。

いやいや、それにしてもお父ちゃん、ドン臭い。

早く大和川に行って走り回りたいのに、ノソッノソッと歩くんで

リードを引っ張らんとお父ちゃんついてきません。

首にグイグイ首輪が食い込んでくるけど、

そんなん構っておれずにどんどん歩いて行きます。

「走れや!」

って思うんですけど、そんなこと言うとまた雷が落ちそうなんで言ってません。

逆に

すずがヒーハー言いながらでもお父ちゃんリードしていたら

「待て!お座り!」ってうるさいんです。

すずがお座りするまで言い続けてます。

知るか!そんなん、て思ってこちらもお父ちゃんの真似をしてキョロキョロ知らんふりをします。

大和川に着いたらようやく長いリードに替えてもらって、走り回れるんでやれやれです。

土手にはひばりの他に雀や鳩もいるんで追いかけまわしたりしています。

あいつら、臆病ですから追いかけたら逃げるだけなんで

追いかけ放題。

走り放題、遊び放題です。


家でもそうです。

さすがにお父ちゃんは怖いんですが

お母ちゃんは優しんでなんでもやり放題です。


でもこの間、お母ちゃんの腕にすずの歯が当たっただけで

偉い剣幕でお母ちゃん怒るんです。

それでも、怒るお母ちゃんも面白いので、お母ちゃんに飛び跳ねていたら

お父ちゃんが鬼の顔して追いかけて来ました。

分かった分かりましたからもうしませんようぉ、

って言ってもこの時はダメ。

どこに逃げても追いかけてきて最後は

すずのほほ、お父ちゃんの両手で挟まれて

「お前なぁ、こんなこと続いたらこの家居れんぞ」

って、すごく凄まれました。

ホントの子やったらこんなセリフ無いんちゃうのって言いたかったんですけど

事実、貰い子やもんね。急に悲しくなりました。


ここんとこ、

体が大きくなってきてるし、

持て余し気味に体力ついてるし

世界がこんなもんて、見えてきたし

ヒトで言えば「反抗期」ってやつちゃうの

もうちょっと我慢してぇや、お父ちゃん。

お母ちゃんも・・・。

ほなぁ、散歩行くで!おっさん。


A A

(aa

>●<

  ~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る