第10話 落とし物


すずです。

お父ちゃん、「荷物送りに宅急便に行ってくる」

お母ちゃん、「大金持っていくんやから落としたらあかんで」

お父ちゃん、「わかってんがなぁ」

って出て行ってから、しばらくしてお父ちゃんが怖い顔して戻ってきました。

「お金落とした」って。

「何やってんの、もおぉ!そやからゆーたやろ。千円、二千円とちゃうで、一万円やで。

まるで子供の使いやなぁ、どうすんの!!!」

ってお母ちゃん。

それからというもの、二人に会話はありません。

「ピンと張り詰めた空気が場を覆う」て言うのはこの事かしら。

八つ当たりって怖いらしいからすずは知らんぷりして炬燵の横で寝たふりを決め込みました。

時々、上目使いでお父ちゃんを見るんですが、見ててかわいそうなくらいシュンとしています。

いつもの自信満々のお父ちゃんではなくなってる。

そんなに気を落とさんでもえーやん。たかが1万円やん。

ある時目が合って・・・、

お父ちゃんが

「すずってさみしい目をしてるなぁ。ここに来る前にずいぶん怖い思いしたんやろなぁ」

って。

いや、いや、いや、いや。それ違うって。

今この空気が怖いんよ。

それに何?そのセリフすずに言ってるんじゃないでしょ、

お母ちゃんへの白旗メッセージちゃうの。

いつもみたいにチャラチャラ・ペロペロすりゃえーの?


それにしてもお父ちゃんよりも拾った人が気になる。

道歩いていたら、なんかワクワクするものが道端でヒラヒラしてる。

何やろ?って見たとたん、

場面が真っ黒になり拾ったおっちゃんにパッとライトが当たる。

おっちゃんうしろを振り向いて

誰もいないのを確かめて・・・。

チャラ・ラ~って音楽が鳴って、

おっちゃんが顔面総崩れでニタ~って笑う。


ってやつやろなぁ。

おもろ、

でもかわいそ。


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