第2話 エリーさんのこと

わたし、本当にへこむんです、エリーって呼ばれて・・・。

「待て!エリー」「お座りエリー!」とかよくお父ちゃんが言うんです。

わたしの事だろうなぁって思うんですけど面白くありません。

知らんぷりを決め込んでいます。

ごめんなさい。

エリーさんってお父ちゃんちにいた柴犬さんです。

もちろんすずは会ったことないんだけど、エリーさんがすずの頃に、お父ちゃんちにやってきて、

亡くなるまでの17年間ずっと、どこに行くにも一緒の家族だったそうです。

最後は目が見えなくなって6年前に大往生したそうなんだけど、みんな口をそろえて「かしこかった」って言ってるんです。

すずほどじゃないわよねぇ、面白くないわ。

こんなこともあるんです。

「この時期のエリーはもっと聞き訳が良かった」「エリーはこんなんではなかった」って。

ホントかなぁ。

すずだってご飯食べるの、ツバ、ボトボト落としながらでも「よし!」ってお母ちゃんが言うまで待っているのに・・・。

おしっこもうんちもちゃんと決められたところでしているのに・・・。

まぁ、たまにはうれしくなっておもらしすることあるけど、

まだ子供やもんねぇ、多めに見なきゃぁねぇ。寛容力ってのが必要よ。

エリ-さんにもきっとそうだったはずよね。

大体、すずは欧米系だけどエリーさんって柴犬でしょ・・・。

言うこと聞くようになったら「忠犬」って言われるくらい尽くすらしいけどそれまでは死ぬ思いでしつけられたんやと思うわ。

お父ちゃん怖いもん。

この間なんか、お父ちゃん「こらっ」と言ったんだと思うんだけど「がぅっ」としか聞こえなくて、

「お父ちゃん、犬語しゃべれるんや」って震えあがっちゃいました。

お父ちゃん若かったからもっときつかったって言うし、エリーさん屈折していたんやろなぁ。

私みたいにチャラチャラしてじゃれついていたら

「エリーとは・・・」と言いつつも喜んでいるよお父ちゃんもお母ちゃんも。

ある意味忠犬よね。


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