第3話



通勤のバスで出会ったの

すっきりした好青年

あなたの時間に合わせるように乗って

あなたがバスで読んでた本、

私も買って

難しくて、三行で寝ちゃったけど

これがあなたの好きな作家さんなんだなあって


大きくてきれいなあなたの手

その手はお年寄り支えたり

席譲ったり

ボタン押してあげたり

私に傘、

気づかせてくれたのもあなた

お忘れですよって


それが始まり


あれから一年

私はあなたのものとなり

あなたと一つ屋根の下

いってらっしゃいと送り出す日も多くなった


やきもきする

私を置いて出てゆく日も

あなたはあのバスの中

きょうも優しいそのキャラで

みんなを和ませてるに違いないから


女子高生が囁き交わしてた

あの人すてきよね

優しいし

紳士だし


OLさんは企んでたわ

どのタイミングで声かけよう

サンジョルディの日に本あげようかな

それともいきなりお茶誘っちゃおか?


そんなこんなにもめげないように

心繋いできたけれど、

正直、

限界、

みたいな気もする…



驟雨

急いでベランダへ出

洗濯物を取り込む

少し濡れてしまった

でも

夕方までには乾くわ

一年記念日のケーキの上に

洗濯物がはためくなんていやだもの

ああ…

早く帰ってこないかなあ…



いやだ

寝てしまった

七時すぎてる!

まだ帰って来ない

どこで

何してる?

あんなに優しいあなた

あんなに素敵なあなた

私なんかといて


幸せ?



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