第5話 ヴェルジーネ・ファミリーの「冷酷な聖母」
「はいよ、ジャンボン・フロマージュだ。お待たせしてすまないね、
「はは、待ってはいない。ちょうどいいところだ。私も、『冷酷な聖母』にも、
「そうかい。なりゃ、報告は早いほうがいいようだね。あんたんとこの、二人兄弟もようやく出番が来たってね。あたしも息子どもに、
「マリア、
「ヴェルジーネの『神の母』の名にかけて、静かに派手に残酷にやってやるよ。何、
「感謝を捧げる、マリア。だが、お前の息子たちの命は大事にしてやれ」
「グラツィエ。腹を痛めなくても、息子は息子さ。多少は出来が悪くても、男としては自慢の連中だ。無駄死させてたまるか」
「オペラ座の演目は『インディゴと40人の盗賊』と来る。客席が
「盗賊はあたしかい? それとも」
「そんな外道な
「ふん。
「真面目な話だ、マリア。身軽を信条とするお前だ。
「あ、あ、あんた、死ぬ気かい? だとしたら、この場で
「優しい女。死ぬ気はないし、石屋などにくれてやる命もない。だが、場合によっては、この剣と刀を抜くつもりだ」
「よせやい、冗談は。ふん、冗談じゃないのは承知だ。今の言葉で、この戦争を理解したよ。あたしも、劇場に行ってくる。久しぶりに人間相手にナイフを振るいそうだ」
「マリア、気をつけてな。お前に何かあったら、私ですら涙を流す。
「あいよ。それじゃ、劇場で会おうか。違うね。
「ああ、善い夜を。と、エルボイス、今、戻ったところか。安心しろ、『冷酷な聖母』はもう帰った。で、どうした、その情けない姿は?」
「マーマン、やっちまったす。つうか、やられちまったっす。オーヴ家の次期当主っすよ。『
「エルボイス、私の愛する息子。気にするな、オーヴの血だ。ひょっとしたら、私とて、その弾丸の
「あざす。マーマン、ペテン師は金を手に入れた模様っす。これで、オーヴ家の
「見たのか?」
「見てないっす。逃げるのに懸命っしたから。でも、金は間違いなく」
「
「うっす」
「その様子だと、今夜は動けんな。大人しく寝てろ。ゴーレムとて痛みはある。後で、痛み止めの護符を打ってやる」
「なんかあるんすか? つーか、マーマン、その服を着たの初めて見たっす。キレイっすね」
「気にするな。そして
「っす」
「弟も大変なことになったな、ジュリエット。お前も何かあるのか?」
「マーマン、美しい」
「はは、無口なお前が口を開いたと思えば、そんなことか? そうあるまい」
「……シェリーは手強い。シェリーは
「わかった。ドクテルの愛娘は、最高傑作なんだな。ドクテルの評価を
「マーマンは誰が守る?」
「優しい息子。お前の母は
「……マーマン、用心を」
「っす」
「フェア・デ・ブルーズ。安心しろ。母は強い。それぞれがそれぞれの役目に身を投じろ。脚本と役者は
「うぃす」
「……」
「やれやれだ。エルキュール・ポアロは
bulkfiction, 1889 Un-known @cool_cat_smailing
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