第2話 薔薇十字団の創立者 クリスティーヌ・ローゼンクロワ
クリスティーヌはすべての新聞に目を通す。
ル・タン紙のような高級紙だけでなく、イギリスのタブロイド紙デイリー・メールまで、くまなく情報を集める。とくに注目するのは広告。真理は常に物事の裏に隠れている。
その赤い瞳で、世界を観察するように。
お供は、エスプレッソとチョコレート一切れ。
小振りな書斎机に向かって。
「まったく
「マーマン、情報っすけど、いっすか? いいっすよね? エッフェル塔を解体するって話、知ってるっすか? ノーベル解体商会のパリ支局長『リュック=エスプリ』が、うちの団員の会計士に
いつの間にか、クリスティーヌの書斎に出現した
「エルボイス、お前の軽口は
「マーマン、それだけは勘弁っすわ。俺、あんたのゴーレムだけど、もうちょっとだけ、この世で遊んでいたいっつーか、頼むっす」
「冗談だ、エルボイス。お前ら兄弟は、私の最高傑作だ。そう
「もちろんっすよ。男爵って野郎はまったくの
「ほう、メアリー・L・オーヴがパリにいるというのか。彼女の祖父には借りがある。では、挨拶に出向くとするか。オーヴ家の現当主じゃ話にならんでな。権力欲と金の亡者だ。先代が泣いている」
「それがっすね。行方がわからんすわ。いやいや、俺も探したっすよ。でも、どうやら
「そうか。ならばユダヤの連中のゲットーに顔を出すに違いない。金を
「うっす」
と言った
再び、彼女はエスプレッソに口を付ける。
「で、ジュリエット。お前は弟とは逆に無口過ぎる。同じ土から造ったというのにおかしなもんだな」
「……」
エルボイスと全く同じ
ジュリエットとエルボイスは、彼女が造った自慢のゴーレムで、フェア・デ・ブルーズと呼ぶ、彼女の
「……ドクテル。マーマンに会いに来ている」
「くだらない。どうせ、私の『賢者の石』が目的だ。そんなものはパラケルススの杖に
「……シェリーが暴れていた」
「車イスに乗るのはいいが、人造人間の娘に押させるとは小心者め。そんな
「……」
「
「……最高大
「どれ、見せろ。くだらん。こいつは『愚者の石』を
「……」
沈黙を残し、二人目のゴーレムがゆっくりとクリスティーヌの書斎を
「エッフェル塔の解体詐欺に、ドクテルと最高大
クリスティーヌは軍服から
そして、腰に短剣と東洋の刀を腰に下げる。彼女の必要最小限で、十分最大限の装備だ。
待ち構える戦闘に備えて。
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