閑話その1:世界の始まりと神々

■世界の始まりと神々

天地が未だ別れず、世界という概念が曖昧な時代。

この世には無垢なる巨人があるのみだった。

人々は巨人の手の中に住まい、人の命には限りが無く、巨人は気まぐれに人を殺し生き返らせ無限の時間を消費していた。

ある時、人々の中から巨人の仕打ちに不満を持ち、巨人を打倒そうと考えた十一人の英雄が立ち上がった。

それぞれが不思議な力を持つ英雄達は、その無限の命にの許す限り巨人に戦いを挑み続け、遂には長い闘争の果てに無垢なる巨人を打ち倒した。

人々は海に浮かぶ巨人の身体を大地とし、目を高くかかげ天を生み出した。そして右の目を太陽、左の目を月とした。

流れ出た血からは獣と竜とが生まれ、零れ落ちた臓腑は山と森となった。

息は雲となり、涙は海を作った。

巨人の血を浴びた英雄達は神となり、太陽と月の上に国を作り移り住んだ。

しかし、巨人は死の直前に呪いを残した。その目に移る全ての命を吸い上げる呪いだ。

故に、太陽と月の下で生きる全ての命には、やがて終わりが訪れるようになった。

神となった英雄達は死を嘆く人々を導くため、それぞれの役割を決めた。

ある神は王を作り人々を導き統治した。

ある神は神を祀る者に知識を与え、実りの時期と備える時期を教えた。

ある神は巨人の目が届かぬ山の下に国を作り、死者を導き死後の世界でも不自由なく暮らせるように統治した。

ある神は農業を伝え人々が飢えに苦しむことがないようにした。

ある神は神々の法を魔法とし人々に伝えた。

ある神は戦う者達を集め人々を守り、人々を助ける家畜を生み出した。

ある神は火を熾し鉄を鍛え道具を生み出した。

ある神は海を船を作り新たな土地を見つけた。

ある神は獣を愛し人々を喰らう事がないよう森へと隠れた。

ある神は竜を統治し人々を滅ぼす事がないよう山へと登った。

こうして世界は人々の手に渡された。

闘神たるターラーンのみは神の世界に上る事を拒み、人々の中に紛れる事を選んだと言われている。


■十一の神々

・主神(太陽神)ルーグ

(右目を掲げし者、太陽と王の守護者)


・闘神ターラーン

(英雄神、砕く者、巨人の心臓を食い破った神、全ての武術の祖、鬼神ともされる)


・豊饒神エプーナ

(女神、大地の神、また四季を象徴する事から時間の管理者ともされる、全ての神職の守護者、エルフの祖とされる)


・冥界神ファテル

(主神ルーグの兄、巨人の心臓の所有者、地下へと下り巨人の心臓から死者の国を作った、死者と死者の国の統治者、月と盗賊の守護者)


・農耕神カルティ

(水の神、全ての農耕技術の祖、農夫(婦)と技術者の守護者)


・智神エッスス

(学問の神、全ての魔法の祖、建築技術の発明者にして、芸術の神。娼婦と研究者、詩人の神)


・戦神ネムハン

(馬と牛の神、全ての戦術の祖、戦士の守護者)


・鍛造神ゴーヴァン

(火と竈の神、地下神でもある事から福神ともされる。職人と商人の守護者、ドワーフの祖とされる)


・海洋神リユル

(造船・航海技術の祖、船乗り(漁師)と開拓者の守護者)


・獣神ブリード

(森と平原の神、川と風を統べる者、獣人の祖とされる)


・竜神クルーフ

(女神、山の神、雷と嵐を呼ぶ者)


創世神話の他、それぞれの神に逸話が発生する。

闘神ターラーンの悪竜退治や農耕神カルティと鍛造神ゴーヴァンの酒勝負、智神エッススの恋歌、戦神ネムハンと海洋神リユルの冒険譚など、エンターテイメントとして広く親しまれている。

特に人と共に生きる道を選んだターラーンは、苦難に喘ぐ人々の前に現れ助けると言われているため、諸国にターラーンにまつわる英雄譚が残されている。

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