第10話 変身ヒーローが異世界でハンターになる③
ゼードラの遥か西方に連なるオッシデン山脈。山頂には万年雪をいただくが、標高はそれほど高くなく、ゆったりとした山体から伸びる傾斜は緩かで、麓に広大な面積を誇る大森林の約六割をその山稜に収めている。
山脈とゼードラに横たわる広大な大森林は、複数の地域に分かれており、その地域により生息する生物が異なる。岩石が多く乾燥している地域や、逆に湿地や沼等が密集している地域等があるが、共通の傾向としてより山脈に近付けば近付くほど大型で危険な生物が生息している。
人類―――主にハンター―――が踏み入ることが出来るエリアは、山頂には程遠く、その中域より少し奥まで手が届く程度だ。最上位のハンターの中には山頂までの踏破を可能とする者もいると言われているが、その真偽は定かではない。
その大森林のごく浅いエリアと言えども、決して安全であるとは言えない。
大森林の名の如く木々は鬱蒼と生い茂り、更に覆い茂る巨木から垂れ下がる蔦や、視界の隙間を埋める様に密生する下木のせいで、視界がすこぶる悪い上に常に薄暗い。
無警戒にガサガサと茂みを抜けた先に、肉食獣の口が開いていたなんて事も、十分あり得るのだ。
そんな緑の海の中を、ケンスケとマリアは進んでいた。
舗装された道など期待するべくもなく、うねる根やむき出しの岩に、滑る苔、日当たりの悪い地面には、ぬかるんでいない所を探す方が困難なくらいだ。
茂みを抜けると、それまでの欝々とした森から一気に視界が開け、えぐれるように切り立つ岩場の上に出た。
新鮮な空気を吸い込むよりも早く、マリアが声を低くして立ち止まる。
「ケンスケさん、見つけました。」
高台から指さす先には、
「さっきの個体で間違いないな。」
ケンスケがマリア同様、声を落とす。
カバルクトスの本来の生息地域ではないこのエリアをうろうろするような特殊な個体が他にいるとも思えなかったが、一応の確認は取っておく。
「はい。マーカーの魔力がはっきりと見えます。間違いありません。」
「他の個体がいる可能性はあるか?」
仮に他の個体が存在する場合、対応が全く変わる。いったい何体のカバルクトスが生息しているのか不明であるため、山狩りを行う必要がある。当然、ケンスケとマリアの二人では不可能だ。能力が足りないのではなく、単純に手数が不足している。
「可能性が全くない訳ではありませんが、かなり低いと思います。
あの個体はオスの様ですので、恐らく縄張り争いに負けた個体が、食べ物を求めてこのエリアまで出てきてしまったのだと思います。」
仮に複数の個体がいる場合は、ボスを中心にしたメス数頭とその子供が複数という構成の群れで行動するので、単独で行動する以上、複数の個体が同時期に迷い出ている可能性は低いだろうとのマリアの見解だ。
その間も、マリアはカバルクトスからその視線を放さない。
俺には見えないが、彼女の目には煌々と輝くマーカーが見えているのだろう。
「それにしても凄いなマリア。カバルクトスの知識もそうだが、こんなに簡単に見つけられるとは思わなかった。」
「ふふ。先輩ハンターとしてはこれっくらい朝飯前です。」
傍らの木に手を置いて、得意げに胸を張るマリア。先程までの気落ちの影は見当たらない。カバルクトスを発見したことも有り、気持ちの切替は出来ているのだろう。
戦闘を前にして良い傾向だと思う一方で、ケンスケは魔術の利便性とそれを当たり前に使いこなすマリアに驚いていた。
仮にマーカーの知識が無い対象がいたとしたのなら、たやすく居所を特定出来てしまう。狙撃や暗殺など、悪用の方法が山ほど思い浮かぶ。これが、あの時の戦いにあれば・・・と、そこまで考えて、意図的に思考を消し去る。今は目の前の標的が最優先だ。
「それじゃあマリア先輩。さっさと仕留めてしまいましょう。」
おどけた様な口調であるが、ケンスケの意識切り替えてあり、脳システムの起動は完了している。
視界に映し出されるターゲットサイト。現在地から目標までの距離や風向き、周囲の動体反応までが、ドーム状に表示される。
目指すは最短。この位置から跳躍し、一撃でカバルクトスの首を落とす。
イメージは一瞬で終了し、その通りの行動を起こすべく星光炉に火を入れる。
唸りを上げて、星光炉が稼働しようとしたその時。
ケンスケの前に立ち、崖上からカバルクトスを見つめていたマリアがこちらを振り向いた。
彼女は軽く深呼吸すると、じっと俺の目を見て口を開いた。
「ケンスケさん。お願いがあります。」
不安気ではあるが揺れてはいない。挑戦者が持つ、決意に満ちた目でマリアはケンスケを見つめる。
「わたしに戦わせてもらえませんか?」
言葉だけでは、なんと不安げに聞こえてしまう言葉だろう。しかし、うかがう様なその言葉とは裏腹に、その声と目には他の選択肢は考えられないという意思が宿っていた。
【side:鬼崎ケンスケ】
俺は今、高台から降りて、カバルクトスが水を飲んでいる河原まで降りてきている。
水を飲んで満足したのか、川面から離れてのっそりと寝ている様は、どう見ても暢気な熊さんだ。
とは言え、曲がりなりにもハンターになった今、こいつをこのまま放置もしておけない。
どうせ最後には仕留める事になるなら、なるべく役に立ってもらおうと俺達は考えた。
俺の役目は、マリアが待ち受けているポイントまで誘導する事だ。
カバルクトスを見つけた時、マリアが俺にお願いがあると口にした時点で、こうなる予感はしていた。
耳と目が使い物にならなくなっていた間、マリアはこのカバルクトスを相手にする事を考えていたのだろう。
俺が回復してからの様子を見るに、俺は動けず、馬車の中のガンドルフィーニ親子を守る必要があったあの時点では、勝算は薄かったのではないだろうか。
しかし今は違う。自身の力を十全に振るうことが出来るフィールドにおびき出すというのだ。
あの時、俺の自信はあるのかという問いに
「あります。必ず仕留めて見せます。」
マリアは、確固たる自信に満ちた応えを返してきた。
そもそも今回の目的はマリアの腕試しである事を考えると、俺に否やは無かった。
マリアはこの狩りで自身の戦闘技術の成否を問うつもりだろう。
これまで俺とマリアは無色の魔術の改良に全力を注いできた。
恐らく、今回の狩りでは十分な成果を得られるはずだ。もし仮に失敗に終わったとしても、原因を追究して更なる改良を行おうと俺は考えている。
PDCAサイクルはパフォーマンス向上の基本だ。
予定していたよりも強力な試験対象になってしまったが、実際やることは同じだ。対象がその辺の小型獣種から大型の獣種へと変更になっただけで。
俺は彼女を信じて、成り行きを見守るだけでいい。危なくなれば助けに入る事もできる。
俺がゴキゴキと腕を鳴らしカバルクトスに近づいていく。
俺との距離が近づいていくにつれて、またお前かとでも言うように、巨熊がゆっくりと立ち上がりる。
鬱陶しそうな目にも、障害物に対する殺意が漲っているのが分かる。
「お前にも色々と事情があると思うが、マリアの為だ。お前にはきっちり役に立ってもらうぞ。」
言葉と共に構えを取ると、苛立ちを隠そうともしない咆哮が浴びせられた。
【side:マリア・アイゼンファウスト(現在時刻)】
川を離れて森を進むと傾斜が落ち着き、広々とした台地が広がる。
大森林の一角に突如現れる台地は、露出した岩石質の地質のせいで巨木は育たず、一面が膝に届くくらいの細い赤茶色の草に覆われている。
わたしが打合せ通りの場所に到着すると、既に遠くから重い振動が伝わって来た。ケンスケさんがここにカバルクトスを誘導し始めた合図だ。
次第に近づいてくる振動と時折聞こえる獣の咆哮を聞きながら、闘うための準備を始める。
ケンスケさんと繰り返し訓練してきたいつもの動作。素早くそして正確に魔力を練り上げ始める。
漠然と循環していた魔力が、目的を以って流れ始める。より強くより早く、そして、より鋭くしなやかに。
練り上げられた魔力が指の先まで行き渡ると、次に意識の中に武器庫を作る。
丁寧に一つ一つ。いつでも中身を取り出せる武器の箱達だ。
武器庫はわたしが認識している空間に擬似投影され、わたしにしか見ることが出来ない武装が周囲に配置された。
そして、その一つ一つに対応する
これで準備が終わった。あとは待機状態にしている術式を発動させるだけの状態だ。
今すぐにでも全力の戦いが出来る。
呼吸を整え、集中する。
力が開放されるその時をじっと待つ。
遠くから伝わってきていた振動が徐々に近くなり、不意に静かになった。
風が吹き抜けて、わたしの髪を揺らしていく。
静かな時間が過ぎていき、もう一度風が吹き始めたその時、目の前の森から立て続けに何かを砕く轟音が響いた。
「行ったぞ!」
鬱蒼とした森に切迫したケンスケさんの声と、巨大な獣の咆哮が重なる。
ケンスケさんにおびき出されて、土煙を上げながら倒木を吹き飛ばした巨大な獣が、わたしの前に現れた飛び出してきた。
何度も見たはずのその巨体だけど、それでもそこにいるだけで威圧されてしまう。
黒い体は剛毛と硬化した皮膚に覆われ、太い腕で振るわれる爪はつやつやと不気味に輝いている。
森林の獣王、鎧大熊カバルクトス。
絶対的な捕食者を体現した巨熊。
わたしはこれに勝たなければならない。
カバルクトスはわたしが目の前に立ちふさがっているのを見ると急停止し、何度も後ろを振り返って警戒している。
後ろと共に周囲を見渡しているのは、この場所が罠の中だと思ったのかもしれない。
しかし、今まで自分を追い立てていたケンスケさんは、一向に現れない。
しばらく、後ろを警戒していたけど、やがてケンスケさんが現れないと判断すると、わたしに向き直り、獲物を見下すような目でニヤリと笑った。カバルクトスの顔がそういう風に動くかはわからないけど、わたしにはそう見えた。
そして、わたしは侮られたのだと理解した。あの巨大な熊から見れば、わたしは怯えて震える小鹿のように見えたのかもしれない。
確かに、数週間前のわたしなら間違いなく竦みあがって、逃げ出す事もできずにただ殺されていただろう。
でも今のわたしは、獣風情に舐められた事に怒りしか湧いてこない。
わたしとケンスケさんで作り上げたこの力を侮られたのだ。
生かして帰すものか。その考えが間違いだったと、身を以ってわからせてやる。
煮えたぎるような怒りが全身を満たす。
わたしが立っているのは、カバルクトスが走って来た切通しの様な獣道を抜けた先。
鬱蒼とした森と開けた草原の境界線。
カバルクトスは赤茶色に染まる草原を、わたしに向かってゆっくりと近づいてくる。
その目は獲物を吟味し、どう嬲ってやろうかと言わんばかりに輝き、不愉快にねばりつく視線がねっとりと足元から全身に絡みつく。
カバルクトスは、わたしが逃げようとしない事をいぶかしんでいる様子はない。
竦みあがって動けないものと思い込んでいるのだろう。
元より逃げるつもりなどないし、竦みあがっていると思い込むのは向こうの勝手だが、このままカバルクトスの間合いに入るまで、棒立ちになってやる義理はない。
わたしはその視線を内側から払い除けるように、全身に張り巡らし待機させてある術式を起動し、練り上げた魔力を注ぎ込んだ。
一瞬にして活性化した魔力によって、全身を熱い血液が駆け巡るような感覚を覚える。そして、注ぎ込まれた魔力を燃料とし稼働し始める無数の術式達。
全身を循環し術式を満たした魔力は、擬似空間に展開してある武器に流れ込んで行く。
ただの枠組みでしかなかった武装にかりそめの命が宿る。早く解放してくれと言わんばかりに魔力が脈動する。
やがて体内を満たし、武器に命を吹き込んだ魔力は、術式に収まりきらず周囲に溢れ出ていく。
漏れ出し力ある風となって弾ける魔力は、その余波で草を千切れ跳ばし、根元からなぎ倒し吹き荒れる。
魔力は
これがわたしの戦支度だ。
「マリア・アイゼンファウスト、推して参ります」
吹き乱れる魔力の風の中、マリアの声が凛と響く。
襲われる小鹿から狩場の主へと変貌したマリアは、その全身から一陣の魔力の風を立ち上らせた。
【side:再び鬼崎ケンスケ】
カバルクトスを、ある時はぶん投げ、またある時は蹴り飛ばし、多少の森林破壊に目をつぶりながら、ようやくマリアの前におびき出した俺は、森林の切れ目にある小高い切通しの上に立った。
普段この場所は、広がる赤茶けた枯草の草原を遠い山頂から吹き降ろす風が、さわさわと草の波を撫る、静かで寂しげな風景が広がっている。
しかし、この時だけは常の風とは別に、ひりひりとした魔力の風が草の海を荒々しくかき乱していた。
「さあマリア。お前の新しい力を見せつけてやれ。」
見下ろす先では、マリアが風を切り裂いて馳せていた。マリアに置いて行かれた風が巻き、草原がうねっている。その中にある彼女の身体は幾何学的な紋様に彩られており、輝く戦化粧が尾を引いている様は流星のようだ。
苛烈な速さで立ち回っているが、その動線は直線的ではなく、カバルクトスを翻弄するように複雑な動きを見せている。彼女のしなやかな身体が作り出す動きは流麗な舞いを思わせる。
光の粒子を引き連れ、彼女が舞うたびにカバルクトスからは悲鳴が上がる。
カバルクトスはがむしゃらに爪を振り回しているが、マリアにかするどころか、まるで反応が追い付いていない。さながら亀とスズメバチの戦いだ。
「ぜあああっ!!」
マリアの手刀がカバルクトスの甲殻を切り裂いていく。
ナイフも通さなかった皮膚だが、マリアの腕を覆う魔力の刃には無力の様だ。
「しかし・・・」
刃がかなり小さい様に見える。手を覆う魔力の光はぼんやりとしており、気を抜けばただの手刀にしか見えない程うっすらとした密度だ。あれで分厚い甲殻を切り裂き、脂肪層のさらに奥の肉まで切り裂けるものか疑問に思う。
そんな事を考えている間にも、マリアの攻撃は止まらない。
「・・・!!あれは。」
マリアがカバルクトスに切り付ける瞬間、うっすらと見えていた魔力の刃が膨れ上がり、一瞬の閃光と共に深々と肉を切り裂いている。
「攻撃の一瞬だけ出力を上げることで、魔力の消費と体にかかる負荷を軽減させているのか。考えたなマリア。」
「狩り」をするハンターは戦闘時間が長期化しやすい。
魔力量と体力に限界があるマリアにとって、魔力消費量の低減と体力の消耗を抑え、継戦時間を伸ばす事は必須条件となる。
魔術の
俺が感心している間も、眼下で踊るマリアがカバルクトスに切り付ける度に、瞬く様な鋭い閃光が走る。そして、それと同じ数だけカバルクトスから赤い飛沫が跳ぶ。
分厚い甲殻も意味を成さず、鋭利な爪もマリアを捉えることは出来ない。
やがて、焦れたカバルクトスが大振りの一撃を放つ。マリアの体の代わりに、深々と地面をえぐり取った攻撃は、これまでで最も大きな隙を生んだ。
振り抜かれた腕に引き挙げられる形で、空を向くカバルクトスの上半身。その死角に踏み込み、未だ大地を踏みしめる後ろ足に一際深く切りつけると、赤く染まった巨体が地響きと共に倒れた。
同時に、マリアが距離を取る。
仕留めにかかるつもりだ。
――――
朗々とした詠唱が草原に響く。それと同時に、マリアの周囲で魔力が渦を巻き始める。
カバルクトスに向けて両の腕を前に掲げると、その腕の間に螺旋を描きながら白色に輝く魔力が収束していく。
まとめきれなかった魔力がチリチリと草や袖を撫で、時折パリパリと空気をはじけさせている。
両腕の間に凝結した魔力は徐々に回転を速め、やがて鋭い円錐型の槍を形作った。
「理論構築は完了しています。槍の生成も試しました。ただし、実際に撃つのは初めてです・・・」
結果を予測できないマリアが、撃つのをためらっている様に見えた。そのわずか数秒の間に、カバルクトスがゆっくりと起き上がり始める。
追い詰めていたはずのマリアが、逆に選択を迫られ、逼迫した顔になる。
その時、一瞬だけこちらを見たマリアと、俺の視線が交錯する。
「撃てマリア。お前の新しい第一歩を飾る狼煙だ。」
その声が聞こえたのかどうかは分からない。
ただ、マリアは小さくうなずくと、覚悟を決めた目でカバルクトスを見据える。
そして高速で回転していた光の槍が更に回転数を上げていく。
甲高い音が鳴り響き、槍の回転数が極限に達した瞬間、光の槍を撃ち放った。
「
咆哮の様な呪文が響き、大気を震わせる衝撃が走る。
カバルクトスは視認さえ出来ただろうか。常人を遙かに超える俺の目ですら、一条の光が走り抜けたようにしか見えなかった。
刹那よりも短い時間で、カバルクトスの眉間を見事に打ち抜き、そのまま後頭部を抜けた光の槍は後方の木々を音もなく貫通して行った。
そして静まり返る平原。
それまでの音が嘘であったかのように、それ以上は何も起こらず、動く物は無く、風が静かに草原を薙いでいく。
サァアという風の音が、静寂に慣れない耳に心地いいくらいだ
「・・・・・」
「・・・・・・・あれ?」
マリアが疑問の声を上げたその瞬間、俺のはるか後方の森で膨大な光と熱量が、轟音とともに膨れ上がった。
振り向けば、爆発音の発生源と思われる地点で、巨木が弾け飛び周囲の木々がえぐれ、轟々と燃え上がっている。それは、奇しくも
俺の後ろでカバルクトスがどさりと倒れる音がしたが、目の前の光景とその原因を作ったであろう魔術の威力に驚いてしまい、それ所ではなくなっている。
「な・・・な、な・・・・・」
マリアが何とか言葉を発しようとしてパクパクと口を動かしているが、全く言葉になっていない。
「しょ・・・消火っ!!消火ぁあああっ!!!」
脱兎のごとく俺は燃え上がる森へと走り出す。
生木があそこまで燃える程の熱量ならば、更に燃え広がっていく可能性は大きい。
可及的速やかに消化せねば、森一つを飲み込む大火災になってしまうかもしれない。
「は、はいいいいいいい!!!」
弾かれたようにマリアが後ろから付いてくる。
カバルクトスとの一騎打ちで疲れているとは思うが、そんな疲労や達成感など吹き飛んでしまっているようだ。ハンターの良識なのか、自分が仕出かした事態に泡を食っているのか、ともかく必死の形相で体を動かしている。
当然ながら頭部を打ち抜かれたカバルクトスは即死。その後方の森も数百メートルにわたって謎の弾痕が通り抜けている。
無色の魔術の試験的には上々と言える結果だが、威力制御の改善には時間がかかりそうだ。
複雑な気持ちで俺は余分な思考を放り投げた。今はやるべきことをやるしかない。
この大惨事の後始末はどうしたものか。
半べそで付いてくるマリアの足音と聞きながら、こっそりとため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます