第84話 速さのコツは謎のまま。

「今ゴールです!我々の前を風が過ぎ去りました!」


 俺は走りつつ溜めた魔力をゴール前で解放した。その結果はゴール後その勢いのまま倒れてしまった。

 網野さんは涼しい顔で何事も無かったように止まってた。先輩はゴール後すぐに町長に結果を聞きに行っていた。

 2人ともよく動けるなって感心してしまう。


「目で追えんな。結果はどうなるんだ?」

「そうだろうと思い、映像石も設置済みです。」


 村の人達は何やら石を囲って審議中みたいだ。先輩が見に行って教えてくれた。


「翔くん大丈夫?」

「ふぅ…はい。なんとか。」

「翔は何かするとは思ったが、あまり無茶はするなよ。」

「はは、すいません。でも俺が勝つにはあれくらいやらないと。」

「翔くんは負けず嫌いだからね〜」

「2人ともそうであろう。」

「きりんちゃんもだけどね。」


 寝てる訳にもいかないので、座っているが正直まだ立てそうに無い。解説席で動きがあったみたいだ。

 人が集まり出した。


「お待たせしました!結果が出ました。第3位から発表です!」

「勿体ぶるのは面倒だ。さっさといくぞ。3位…宇佐美 和歌!」


 町の町民達が一斉に崩れ落ちる。その代わりに学生達が更に騒ぎ出した。


「さて宇佐美さんにお話を聞いて見ましょう。この試合振り返ってどうでしたか?」

「ん〜悔しいなぁ。秘密特訓した技もちょっと失敗したけど、まぁ次また2人にリベンジするよ!」

「因みに技とは、先程の4足歩行のやつですか?」

「そだよ。友達のペティットから教えてもらったんだけど、練習が必要だね。」

「なんと!あの技を極めた人がいるんですね。凄いお友達ですね。」


 インタビュー受けてる先輩がペティットを褒められて嬉しそうだ。特に細かく掘り下げてないが、ペティットは兎ですよ。インタビューしてる人はきっと人だと思ってるな。4足歩行を試みる人は、きっと先輩くらいであろう。


「宇佐美さんでしたー。」

「実に面白い勝負だった。」

「続きまして第2位の発表です!」

「さぁ第2位はだ!」

「「翔様、翔様、翔様…。」」

「「師匠、師匠、師匠…。」」

「外野がなんか怖えな。第2位!兵頭 翔!」


 悲鳴と歓喜の声が入り混じり、網野さんの元に学生達が詰め寄る。一部生徒はその場で泣き崩れる者も居た。


「さぁ、兵頭さんに話を伺いましょう!この試合振り返ってどうでしたか?」

「色々考え過ぎた感じはありますね。2人には学ぶ所が沢山有りました。」

「そうですか。とは言え、ゴール前のあの爆発的加速は凄かったですよ。」

「今は立っているのもやっとですが。まだまだ訓練が必要ですね。」

「いえいえ。2人とも素晴らしい走りでした。」

「ありがとうございます。」

「さて!栄えある第1位でゴールした網野さんに声をかけてみましょう。」


 インタビューが終わり俺の所に寄って来る学生達。タオルやら飲み物を持って来てくれた。

 いつ準備したのか、手際が良すぎる。今は有難く貰っておこう。

 先輩は先輩で町民の人達に色々貰っている。


「さて、まずは1位おめでとうございます。」

「あ、ありがとうございます。」

「改めて今回の試合はどうでしたか?」

「ふ、2人とも凄く早くて。お、驚きました。」

「終始安定した走りでしたが、何か秘策みたいな物は有りますか?」


 お?良い質問だ。俺もそれが気になっていた。普通に走っているようで、全然追い付けなかったのは何かある。


「え、えっと。か、風を。」

「風を?」

「ば、ばーってする。」

「ん??よく分かりませんが。風を味方に付けたということですね!」


 あのインタビューしてる人、諦めたな。

 戦闘モードで無い網野さんはあまり多く語ってはくれないから、気持ちは分からなくも無いが。あの速さの謎は分からずか…気になるなぁ。


「翔くんおつかれ。きりんちゃんの走りは謎で終わっちゃったね。」

「和歌先輩も聞いてたんですね。風がどうのって言ってましたが。」

「風ねぇ。ルカちゃん入れば解読出来ると思うけどね。」

「それか戦闘モードの時に聞くかですね。この後学校にも行くでしょうし。」

「や、やっと抜け出せた。」


 学生やら町民に囲まれていた網野さんが来た。


「さ、さぁ帰ろう。」

「そだね〜お腹減ったし。翔くん歩ける?」

「はい。それくらいなら。」


 結果発表後はすぐさま解散。町長指揮の元、慌ただしく片付け始める町民達。先生達に連れられて、学生達は学校に。

 こうしていつもの町へと戻って行くのであった。

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