第83話 考え過ぎは良くない?

「さぁ!まず先頭に出たのが網野さんです。」

「こっからじゃ、一瞬で見えなくなったがな。」

「そこは森果町の総力を上げた技術者の手によって、3人の現在地が分かるようにしています。」

「相変わらず、頑張る方向が気になるとこだな。」


 始めは後ろで後半巻き返そうかと思っていたが、考えが少し甘かった。スタート直後に2人は全開で飛び出した。大きく離されてはいないけど、このままでは確実に3位だ。


「網野さん、宇佐美さんがほぼ横並びだ!兵頭さんは少し出遅れたか!?」

「坊主はあれこれ考え過ぎなところがあるからな。」

「そんな感じしますね。逆に2人は本能で動きそうです。」

「がはは、それは間違いないな。さて始めの曲がり角だ。どう出る?」


 普通に曲がったんじゃ差は縮まらない。左足に魔力を…直角に曲がる!無駄無く最短で曲がる網野さんに対して、先輩が両手両足を地面につけて飛び出した。

 それって遅くなるんじゃないか?って思ったが、先輩は網野さんを交わしてトップに出た。俺はなんとか離されないで食らいついたくらいだ。


「お。宇佐美さんが先頭に出ましたね。曲がり角で何かしたんですかね。」

「また突拍子も無い事したんだろう。坊主と嬢ちゃんは変わらずって感じだな。」

「んー何したか気になるとこですね。3人を追尾できるように出来れば…」

「馬より速く走るやつらだ。今はそれに追いつくのは出来んからな。」

「今後の課題ですね。」


 気を抜けば一気に離されかねない。効率で言えば網野さんの魔力の使い方が理想か。今はよく見て盗める技術見るしか出来ない。

 今は我慢だ。


「次の曲がり角ですね。と言うか速いって次元超えてる気がします。」

「まぁ学園から半日で走って来た連中だからな…」

「人ってあそこまで速く走れるんですかね?」

「気になるなら、訓練方法でも聞くといい。儂には無理だと思うがな。」

「彼ら研究した方が、今後の技術に役立ちそうですね。」

「…ふむ。後で聞いてみるか。」


 さて次のコーナー近い訳だが。先輩はきっとさっきのやるんだろうな。俺は網野さんがさっき曲がった方法で行こう。

 予想通り先輩は両手両足を地面について…ずざぁー

 先輩は地面を少し滑ったみたいだ。その間に網野さんと俺は先輩の前に出る。


「おっと!ここで順位が変わった!!」

「きっと滑ったんだろうよ。少し外に膨らんでたからな。」

「町長よく見てますね。」

「あれしか見るの無いしな。それに2人は奇抜な事はしなそうだからな。」

「成る程。さぁこれからの展開が読めなくなって来ました!この後どうなるのか!?」


 こっちは砂がサラサラしてる気がする。普通に走れば問題ないんだが、先輩みたいに大きく踏み込むとあーなるのか。

 とりあえず次のコーナーもそれに気をつけようかな。


「3度目の曲がり角は順位変わらず来ましたね。」

「同じ失敗はしないだろう。勝負は最後の曲がり角だ。」

「直線ではここまで動きがないですからね。」

「きっと3人とも走る速さはほぼ一緒なんだろうよ。」


 さぁ最後のコーナーだ。俺は堅実に行って、最後の直線で魔力使い切るくらいの気持ちで行くしかない。俺と網野さんはそのままコーナーを抜ける。

 先輩は…?


「網野さんが先頭を維持してますね。その後を…」

「2人並んだな。だが嬢ちゃんが少し前に出そうだな。」

「そろそろ見えます!一体どうなるのか!?」

「「な!?奇抜すぎるだろう!!」」


 先輩はコーナーから四足歩行で走り続けている。確かにチーターとかそれで速いけど、それを実行に移すのは先輩くらいだろう。

 まずいな、少し離された。しかし、網野さんはずっと同じ走り方なのに全然追いつけない。


 ここが最後だ!後の事は考えない!それぞれの全力がぶつかり合う。

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