第6話 話は分からなくても頷けばいい。

「翔くんデカイねー上が雲の中だよ。」

「森の中にこんなビルが…ぜんぜん見えませんでしたね。」


二人でその高いビルを見上げている。森の中に佇むその建物はどこか不思議な雰囲気がある。

兎さんは迷わず個々に歩いてきたが、何かあるような気がする。


「ところで、和歌先輩。ここで待っててって言われたんですよね?」

「ん?そうだよー。誰か呼んでくるとも言ってたよ。」


とりあえず待つしかないか。ところで誰かってどんな人だろう。

そもそも人なのか?先輩は勘で動く事が多い。結果は大抵は悪い事にはならない。

ここまで来て悩むこともないか。待つだけだな。

んー…しかし静かだな。おや?静か?


「和歌先輩!?いないし!!」


ち、ちょっと目を離した隙にいないとか!子供か!?

俺は保護者なのか!?いやいや。落ち着け。周りを見ても見当たらない。

探さないと!

すると、ビルの自動ドアが開いた。


「翔くん!中すごいよーなんだかメカメカしてる。」

「わ、和歌先輩!一人で行くのはダメですよ。しかも勝手に入っちゃいけません。」

「むー。お父さんみたいな事言わないで。」


ぐふっ。お、お父さん!?やはり保護者なのか。一つしか違わないのに。

いじいじ。


「ふふふ。いじけると地面に何か書く人っているんだね。よしよし」

「和歌先輩…。弟とか言わないでくださいね。」


びくっとした先輩は頭を撫でるのをやめた。


「……待たせたか?すまんの。」


目の前に現れたのは、人だ。言葉も分かる!あ、座ったままは不味いか。


「いえ、待っていません。話が出来る人が出来てよかったです。僕は兵頭 翔です。」

「わぁー綺麗な方です。あ、初めまして!宇佐美 和歌です。」

「ふむ。わしはステゴ・テトラベロドンと言う。ここ天河森魔高学園テンガモリマコウガクエンの学園長をしておる。立ち話もなんだしの。中で話すので着いてきてくれるかの?」


その後をすぐに着いて行く。中に入るとそこは、日本では考えられないような。まさにゲームような空間だった。

キョロキョロしながら歩く。


「こちらじゃ、ここの陣の上に立っててくれるかえ?」


学園長はそう言うと陣の中央へ歩き出す。

俺と先輩は言われた通り立ってみる。

すると床が光りだし、その眩しさから目を閉じた。



再び目を開けると扉が目の前にあった。

中に入ると…


「え?和室?なんか建物の雰囲気とは違うんですね。」

「ふむ。ここはわしの趣味じゃ。さて、適当に座っとくれ。」


部屋に入って思わず俺は言葉に出した。和室が来るとか想定外すぎる。

学園長に言われて俺と先輩は座る。すると学園長は話し始める。


「そうさのー…まずはこの学園の話でもするかの。ここ天河森魔高学園は元々魔物と戦う為に魔法を使った戦闘訓練する為に作られたのじゃ。今は魔物と共鳴する者が出てきた事から戦闘は少なくなったがの。今じゃ気晴らしで始めた運動に力を入れておる。」


なにやら、聞きなれない言葉が度々あったような。魔法?魔物と戦闘って。

俺が読んでいた漫画や小説の世界みたいだな。先輩はこういうの分からないでは?と思い、隣に居た先輩をみる。

先輩は隣にいる兎さんとうんうんっと頷いてる。


「う、兎さんいつの間に。」

「きゅきゅきゅ!」

「ずっとここにいたよ。だって。」


言葉が分からない俺に兎さんの通訳をする先輩。それを学園長が驚いた顔で先輩を見ている。


「なんと。ぬしは…宇佐美殿はこの兎の言葉が分かるのかえ?」

「和歌でいいですよー。えっと兎さんの言葉ですか?私は分かりますよ。翔くんには分からないみたいですが。」

「そうですね。俺にはきゅきゅにしか聞こえません。何故ですかね?」


学園長の質問に答える先輩と俺。俺の疑問に学園長は。


「ふむ。先に魔物と共鳴する者が出てきたと話したじゃろ?」

「はい。(聞きなれない言葉がぽんぽん飛び交ってたのは覚えてます)」

「魔物と共鳴する者。共鳴者は、ある条件をクリアせぬ限り一対一のみ。和歌殿は条件をクリアしていない。故に言葉が分かるのは共鳴していると確定してもよいのじゃ。」


それで私にだけ分かるのかーと感心するように頷く先輩。兎さんも頷く。

頷いてるけど、二人とも…一人と一匹?は分かっているのだろうか。


「なのでじゃ。翔殿に分からぬのは当然じゃよ。条件やらはいずれ教えるからの。」

「なんとなくは、分かりました。」


どうやら自分の知っている漫画や小説知識のおかげで、一つ疑問が解けた気がする。

と言ってもまだまだ分からない事だらけではあるが。


「ふむ。翔殿は理解が早いようで助かる。して、わしからも聞きたい事があるのだが?」

「はい。分かることであれば。」


俺と学園長は話を続ける。隣でとりあえず頷けばいい!と思ってる先輩と兎さんを置いといて。

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