第5話 道案内は兎さん?

「「えぇー!?」」


俺は目の前の状況に驚く事しか出来ない。

だって、熊さん飛んでったよ。木とか倒れちゃってるよ。

先輩だって。


「可愛いぃー!兎さんだー」

「…和歌先輩。いや、兎さんなのは分かるんですが。熊さんふっとばす兎さんですよ?」

「きゅぅ~?」


目の前に現れたのは兎さん。全長2メートルとかないんだ。20センチくらいの兎さん。

敵意はない?愛らしい感じはあるけど。助かったのか?


「うん。可愛いと思うよ。」

「きゅーきゅ。きゅきゅ。きゅっきゅきゅ。」

「ちょっと待ってね。翔くん歩ける?」

「え?あ、はい。」

「よし。じゃぁー行こうかー」



と言う訳で。俺と和歌先輩になぞの兎さんは森の中を進む。

道案内をするのは兎さんなんだよ。

なんだか分からない理由で先輩は着いて行く事を決めた。

その兎さんは先輩の頭の上に乗っている。

先輩はふむふむ。なんと!そうなんだー。と言っている。


「あのー和歌先輩。一つ良いですか?」

「ん?何かな翔くん。」

「兎さん…何か言ってます??」

「兎さん。女の子なんだって。なんでも森の長の娘らしいよー。すごいよね!」


そうか。いろいろツッコミたい。まず何からだ。どこからだ?俺は兎さんに聞いてみた。


「あのー。兎さん?」

「きゅきゅ?」

「あ。いえ。なんでもないです。」


そっか。そうだよな。きゅきゅとしか聞こえないやー。

まずここからだなー。うん。きっとそうだ。


「和歌先輩。兎さんの言ってる事分かるんですか?」

「え?分かるに決まってるよー」

「そ、そうですか。俺にはきゅきゅにしか聞こえないんですが。」

「兎さん普通に喋ってるけど?翔くんだけ分からないのかな?」


再び先輩と兎さんは会話?をしながら歩いている。

あれか、兎さんと喋れる自分より、喋れない俺の方が異常なのか?もしかしたら熊さんが何か言ってたのも分かったりして…よし。この件はスルーしよう。次だ次。


「和歌先輩。俺たちは今どこに向かってるんですか?」

「どこだろうー?なんとかなるって!このまま行くよー」


あれー?可笑しいな。俺誰とも会話ができてない気がする。先輩がこのまま行くっと言ってるなら、これは着いて行くしかないか。打開策がある訳ではないし、熊さんと追いかけっこしてるよりはいいか。もう何も考えないでただ着いて行くことにした。


「あ。翔くん。着いたみたいだよ。」


しばらく歩いて先輩に言われて、俺は目の前に現れた建物を見る。


「きゅ!きゅきゅきゅ。」

「ここで待っててだって。誰か呼んでくるみたい。」



兎さんに案内されたところは、雲をつけ抜けたビル。

分からない事だらけで俺は、半ば投げやりに思うのであった。


「あーなんか。どーにでもなーれ。」

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