第3話 森に木魂する咆哮?

「「え?」」


俺と先輩は目の前に現れた。その生物に硬直してしまう。

あの歌が、実現された。そう目の前には全長2メートルくらいの熊さん。

森で出会うと言ったら熊さんなのだ。俺たちは共にその生物を見ていた。


「熊さんですね。」と先輩。

「だねー」と俺。

「夢?かなー?」ばちん。

「いったぁー!!和歌先輩なぜに俺にでこぴんを。」

「翔くん。夢じゃないよ!」


どこかでそんあやり取りあったなーっと遠い過去の話に思える。

そして、俺に夢かどうか確かめるのはやめて欲しい。しかも今は熊さんの前。

ほら、熊さんこっち見て固まってますよ。


…ガ、ガァァァァァーーーー!!!

気を取り直して。

熊が咆哮を上げると同時に、襲い…


「すぅぅ…がぁぁぁぁぁーーーーー!!!」


先輩も叫ぶ。


「「え?・ガ?」」


今度は俺と熊さんが先輩をみて硬直してしまう。

熊さんは俺に目配せをしてくる…気がした。

そうだね。俺もそう思う。


「あの~和歌先輩?」

「ん?なんだね翔くん。」

「えー…なんというか。なぜ叫ぶ?」

「熊さんに出会ったから。」


ん?どういう事?俺と熊さん。

熊さんは俺達の話している事が分かるのだろうか。

先輩の雰囲気に飲まれただけなのか。

しかし、それは続くわけもなく。


…ガ、ガァァァァァーーーー!!!!!

再び気を取り直したか、熊さんが動き出そうとしていた。


「そっか。これは嘘だったのか。」

「和歌先輩…嘘ってなんですかね?」


二人で熊さんを見ながら、少しずつ後ずさる。


「父様が『熊に出会ったら、負けずに叫ぶんだ。すると逃げるんだよ。』って。でもねー何個かたまに嘘ついてる時があって。ようやく確認できたよ。」

「でしょうね。熊さんに会う機会も、確認する事もない。この状況はお父さんが一番想定外でしょうね。」


そんなやり取りをしていると、熊さんが動いた。

その大きな手を振り下ろした。


「和歌先輩失礼します。」

「へ?」


咄嗟に俺は先輩を抱えて回避を試みる。迫る熊さんの手は空を切る。

俺はその距離をとる事に成功した。

その距離3メートル。


「あれ?ちょっと横に跳んだだけだよな?」


突然目の前から消えた標的に、驚きながらも再びこちらを確認した熊さん。

こうして、普通の高校生は熊さんと戦う事となった。

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