第59話 秋の夕陽に
ようやく街並みも秋の装い。
日曜日、静かな休日である。
昼過ぎに彼女がやって来たので、老犬の散歩がてら河原にサックスを持ち込んでみる。
柔らかな暖かい陽射しと優しく少し冷たい北風が心地良い。
そう云えば、彼女と二人でというのは久しぶりな様な気がする。
彼女のサックスの音が秋の景色の中に溶け込んでいく…
彼女のサックスの音には最近力強さが加わり、不思議と、彼女の父親の音に(私が嘗て聞き惚れていた)似ていると感じる時がある。
勿論、今の彼女にそのことはまだ言えない。
彼女の心がもう少し大人になってからでよいことなのだ。
今はただ、その無垢な心の音を素直に、この天高い秋の空に吹き上げてくれればいいのだと思っている。
天気が良くてもそこは秋。
陽が傾き始めると少し寒くなってくる。
人間二人は帰ろうと立ち上がるが、総毛皮の老犬は、物足りない様子で私たちを見上げたが、やがて渋々と重い腰を持ち上げ家路へ…
茜色に輝く夕陽が黄金色の世界を作り出し…
ススキの穂が秋風に、心地良さそうに揺れていた…
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