第8話 雨の日タップで
それは、私がスーパーでの買い出しを終えて、店から出て来た時のことだった。
反対側の通りで小刻みに上下に揺れるビニール傘が目に入った。
彼女である。
先日、河原の土手で老犬に吠えられて、少し困ったような様子で私に挨拶をして去って行った、あの彼女である。
“あの子、誰だったかなあ? 常連さんの娘さんだったかなあ?
店に来たことあったかなあ?
いかん。本格的に思い出しとかないと、今度会った時どう対応していいか分から なくなる。
しかし、どうしても思い出せない。
でも、どっかで会ったような気がするのだが…
う~ん… やっぱりわからん!”
私の心も今日の雨雲の空ように、モヤモヤした気分である。
彼女はというと、歩道の小さな水溜りに靴をタップさせながら、ピチャピチャとタップさせながら、この鬱陶しい雨を楽しんでいる。
私は声をかけることも出来ず、彼女が通り過ぎて行くのをただ見送っていた。
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