第53話幕間:坂東調査
目に付く鍛冶場では活気多く。鍛治師は
刃の磨き具合たるや、
切っ先が曲がりたる刀は優れて候。我も一つ欲しけり。
戦さ続きなれども、
平将門殿の善政を
皆が明るく、兎角、世話好き、誠に住み心地良しであり候。
税を収むる事も遅れず。
平将門殿の善政、周辺諸国に知れ渡り。各々の
神馬は
野本に火を放ちし、下手人は
将門殿を噂を耳にすれば、讃える声、多し。
所感であるが、大変興味深し。
そこまで
「うん? うーむ? 戦さ支度か? 違うな、訓練だな。春先だというのに、ご苦労な事だ。が……これが将門殿の強さの秘訣の一つやも」
木の曲がりくねった太い枝の先に器用に座りながら、
「そうだな」
不意に横合いから掛けられた声に驚き、男は体制を崩し、下へと真っ逆さまに落ち――ずに、その足首をしっかりと掴まれ、宙吊りの形となる。
木から落ちるところを救ったのは
「大丈夫か? 此度が初の任か?」
小太郎は無表情のままに、宙吊り状態の千寿郎を心配する。
「はて? 何のことでしょうか? ただ木の上で涼んでいただけで御座います」
冷や汗を垂らしながらも、しらを切る宙吊りの千寿郎。
「……将門様が望月三郎諏方殿より、既に聞き及んでいる。将門様は調査の手伝いや案内をしてやれ、と仰られた」
ただそれだけを言って押し黙る小太郎。
ややあって答えが出たのか口を開く。
「では、案内等々お頼み申す。望月千寿郎と申します」
「飯母呂小太郎。……先ずは
願っても無い申し出を、ありがたく受ける千寿郎であった。
飯母呂の里にて。……小太郎の嫁とは知らずに年若い女に求婚し、小太郎に殺されかけたのは、また別の話。
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