第22話東は荒れる
その右手には
「なんだあれ……」
郡役所に
運悪く、行き当たった役人の一人は
最奥――その部屋に辿り着くと足を止め、
「来たか、中に入れ」
その声に
部屋の中には
「そこら辺に適当に座っておいてくれ、これを終わらせてしまうからな」
棚に囲まれるように部屋の中心に
その
「この奥まで怒声が聞こえておったぞ、
その言葉に照れ臭そうに、ぽりぽりと頭を掻きながら座る
文机に齧り付く男は、将門の姿をチラリと見ながらも、書き
「
しかし、照れもせず、言葉を荒げる訳でもなく、淡々と筆を動かし続ける。
「うむ、自分に出来るだけの仕事をしたまでよ……して、
手を止め、将門の右手に掴まれたままの男を左手で指す。
「生きております、指で
「そうか、ならば
少しの間、書く手が止まっていたが
「
「
話を聞きながら、
「やはり、一悶着ありそうか……
深々と礼をし、頭を下げる将門。
「有難う御座います、そういえば門番の二人……職務に忠実で良く鍛えておりますな、何か褒美でも与えてはどうでしょう?」
武芝は
「
「おお、あの二人は兄弟でしたか! 御見通しですな、その通り! 気に入りました! 出来れば
将門は興奮気味に這い迫りながら、
「今すぐにとはいかんぞ? 何せ、
「有難う御座います!
将門は武芝の両手を包むようにがっしりと握り、ぶんぶんと縦に降りながら礼の言葉をかける。
「あーよいよい! 出来るだけ早くする! 腕が千切れるから止めよ!」
将門はその言葉を聞き、満面の笑みと共にぱっと手を離す。
「早速この事を門番の二人に報告してきます! では、
駆け抜ける突風のように紙を舞わせ、ドタドタと外に向けて走っていく将門。――その場に男を放ったらかしにして。
その姿と舞う書類の惨状を見ながら武芝は手で顔を覆う。
「門番兄弟よ! 喜べ!
「それは誠ですか?」
将門は二人を見ながら、腕を組み、しっかりと首を縦に降る。
「ふむ、生活などは保障する、新しく切り拓いてからになるやもしれんが……田畑もやろう」
その言葉に二人は喜び、握り拳を固くしながら、両膝をつき
「「我ら兄弟! これより、将門様に付き従い申す!
将門は屈み、
「よう言うてくれた! 今、この瞬間より二人は我が両腕よ!」
二人の顔をしっかりと見ながら将門は続ける。
「二人とも準備に手続きがあろう、終わり次第、
門番の二人は立ち上がり、礼をし、準備の為にその場を後にする。
「懐かしき故郷の地……親父殿、
「む、あれは追われているのか? 追っているのは大方……盗賊か何かだろう、助けねば! 行くぞ、
その腹を蹴り、ぐんぐんと加速し、追われていた者の目前まで近づく。
追われていたのは衣服が乱れた女であった。
「そこな追われる者よ、伏せよ!」
大声で叫ぶと女は
「跳べ、力丸!」
うずくまる女を跳び越え、追っていた盗賊の内二人。女にしか目が行っておらず下を向いていた、その頭頂部を目掛けて、力丸は
「なに――きゅぴ」
「地面――くにゃ」
将門と力丸の体重が乗った前脚により、盗賊の頭部は地面と
「よくやった、力丸! あとは任せよ!」
刀を抜き放ち、力丸より飛び降りざまに盗賊の首を
「なんだてめえ! 俺らの楽しみを邪魔するのか!」
残った盗賊四人の中、
「虫相手に語る口は持たず……ただ潰すのみ」
「こ……の野郎! 一気に掛かれ!」
挑発に乗せられ、叫び声を上げながら四人バラバラに走りより、正面より将門へと襲いかかる。
最初に迫ってきた盗賊の一人、刀を両手で振り上げた瞬間を狙い。――横薙ぎに抜き滑らす形で胴を斬る……でろりと
「一つ」
次に左右から迫ってきた盗賊二人。
将門は右手に持った刀で右側から迫った盗賊の首を突き刺し、同時に左側から迫ってきた盗賊の刀を持つ手首を左手で掴む。――将門の左の手から、ゴキリと音が鳴り折れる。
折れた盗賊の腕から、刀を奪いざまに
「三つ」
頭目らしき男は奇声を上げながら、
将門は冷静に避け、刀を弾き飛ばし、頭目を股下から上に。――
男は徐々にメリメリと音を立てながら、股下から割れて行き、首だけが半分に割れずに残った。
「四つ……さて、襲われていた女は大丈夫であろうか?」
将門は、虫を潰したところで何も面白くないといった顔をしながら、伏せたままの女の元へと歩み寄る。
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