第21話たださずにはいられない
「ふむ、海の近くは沼地であったが此方の方は……川も近くにあって、良い土地ではないか。それに民の顔が明るいのは良い事だな」
ゆるりと馬上より、
「さて……一度、郡役所の方に顔を出しておくか」
陽の光にキラキラと
ふと、気がついた時には
「新しく
舌足らずだが、愛らしい声で喋りかけてくる童。
「こんな格好をしていれば、間違えるのも仕方ないか……だが、役人ではないぞ、これから
将門は笑いながら、わしゃわしゃと童の髪を少し乱暴に
「そうだ、童よ。ここの
将門の言葉に引っかかったのか、頭を
「お隣さん?
童は
「ふむ、向こうだな、ありがとう。そうだ、礼と言っちゃなんだが……」
そう言いながら、
「お、あったあった……これよ」
取り出したるは、竹で作られた薄く平べったい翼――その中心に一つ穴が空いている。そして細長い棒状になった
「見てろよ、この穴に
くるくると
「わ! 飛んだとんだ、すごい! おじちゃんが作ったの?」
おじちゃんと呼ばれたのに少し落胆したのか元気なく、答える。
「いや、
いわゆる、
「おじちゃん、ありがとう!」
お礼を言い、手を振りながら友達の元に駆けていく童、それを見ながら優しい笑みを浮かべる。
「子は良いな、やはり……宝だ」
将門を見送るように
そんな
「おお、ここか! 見事なまでの門と柵ではないか、これなら万が一に、盗賊が来ても民を守れそうだな」
将門は軽く
すると、
「ここは
「おっと、これは申し訳ない。
それを聞いて、腰にやっていた手を戻す門番二人。
「これは……大変な失礼を致した。最近、
深々と礼をし、謝罪の言葉を述べる門番二人。
将門は二人の肩をぽんと叩きながら、顔を上げるのを
「職務に忠実なのは良い事だ、
「おや、こんな田舎で会うとは奇遇な……
足音の正体は奥より出てきた、神経質そうな顔をした男であった。
「門番よ、
将門はじっと口を開かずに、神経質そうな顔の男を見る。
「うむ……顔に覚えが無いぞ? すまぬ、何処の誰であったか?」
将門は京で遂行した、職務を幾つか思い出したが……男の顔に見覚えなく。心から出た言葉であった。
「ぐっ……失礼な。
神経質そうな顔の男は怒り顔のままで、
それを見た
「
怒号――地の果てまでも響く様な声と共に
――その一歩は将門が
「そ……
恐ろしさの
将門は男に向かい、一歩、また一歩と近づき……七歩目、男の前へと立つ。
「ひゅ、ひゅい……一体どうするつも」
将門が手を男の顔に持っていった直後に破裂音――神経質そうな男は言葉を、最後まで
「馬鹿者が……しかし、一体誰であろうな
ぽりぽりと頭を
「
気絶した男の
その光景を唖然としながら見送る門番と、遠巻きに眺めていた影一つ。
「へえー
影の声は小さく誰にも聞こえない……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます