第20話暗雲立ち込めるアヅマ
木々が茂る道を
「
横を馬なしで走り付いてくる黒衣の一人より
それに対して将門は、にこりと
「何、
大きく快活に笑いながら、返事も聞かずに速度を上げ駆ける。
黒衣が走りながら震える、それは悲しみによるものか、喜びによるものかは当人達が知るのみであった。
――
日が
途中で
開けっぴろげの門を
「
大きな声で
呼ばれた男。――平良文は夕顔の花から指を離し
「
快活な笑い声と共に、良文は何度も背を叩く。
「ええ、
顔を付き合わせ、笑い合う二人。
「よし、
自信満々に夕顔を指差す、良文。
「それでは、断る訳には行きませぬな!
将門は居間に通され、そこには既に二人前の料理が用意されていた。
二人は向き合って、ゆっくりと座る。
「では、叔父上。感謝して頂きます!」
手を合わせてから、箸を持ち、料理を食べじめる将門。
「おお、叔父上……これ程までの高級品を
がつりがつりと用意された料理をかきこみ、瞬く間に
「将門よく食えよ、最後の
その言葉にピクリと反応し、食べるのを止め、良文に問う。
「最後の夕餉ですか。それはまた
それを見ながら、少しだけ間を置いてゆっくりと良文は口を開く。
「そうだ、
「やはり、親父殿が民達と力を合わせて、
がくりと、肩を落とし、憂鬱な表情となる将門。
「親戚は無視は出来ない。――が、やはり他人の様なもの……だからあまり、気に病む必要はない。それに、この良文は将門よ。お前の味方だからな、戦さ場で間違えて、斬らないでくれよ」
とある居城にて。――男三人が
「
三人の中で一番歳古く、威厳もある男の言葉に、他の二人が動揺する。
「
「そうですぞ、
口々に非難の声を上げると、國香と呼ばれた男は怒鳴り声を上げ始める。
「ならば! どうすれば良かったと言うのだ! 女々しく
その言葉に
不意に何か、良案を思いついたのか、
「良い考えが出ました! 我が娘を
良兼は自信満々の顔で答える。
「ほう、良い考えだ、
その言葉を発した後に、腕を組みながら國香は更に策を練り始める。
良兼は未だに腹に抱える案を、他の二人には全てを見せず、語らずに隠す。
良正は鼻息荒く……三人にとって、鼻つまみ者の甥っ子をどう料理しようか考えを巡らせる。
――三者三様の考えと策を多くは語り合わず。
三人の笑いがパチパチと
朝となり、
「
将門は声に向き直り、礼をする。
「ええ、あまり長居をすれば
まだ陽は昇りきっておらず。山から顔を少しだけ出し始める。
「そうか……何かあれば、
「どれが決め手か分かりかねます……が、考えてやった、新しい名が気に入ったのかもしれませんな。――では、叔父上! 息災で!」
将門は手早く、
「気をつけて行けよ、
その様子を遠くから四つの黒衣が見やり、静かに――新たな主人についていく。
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