第18話クビ喰む
その姿を焼き付けるように、しっかりと両目で見つめる面々。
「首だけでも動くなんて。
「貞盛! 陛下を守れ!」
いの一番に
――朱雀天皇の眼前に迫る、将門の口。
――が、
「
首に噛みつかれ、ぽたりとぽたりと右腕から血が滴る。――貞盛は痛みなど意に介さず。
「ふう……肝を冷やしたわい」
藤原忠平は汗を拭いながら、襟元を正す。
「むう……ふう……」
「斬った後に、
「
朱雀天皇の顔から笑みが消え、幼いながらにも真剣な面持ちとなる。
「
朱雀天皇の口から
「
扇を上げ、紡ぐ
きらりきらりと淡く輝く
「
朱雀天皇の足元より、三十六の細い光柱が出で、
「
徐々に
「
朱雀天皇は口を
「
将門の
俄かに、
「呪も解け、準備は整った」
朱雀天皇は将門の額にあてていた扇を外す。
目を見開き、全てを呪うような恐ろしい顔、ではなく……
「――と、その前に
朱雀天皇は扇で
……しかし、貞盛は首を横に振る。
「それは、
何を思ったのか、貞盛は右腕の
「むん! むん!」
掛け声と共に、右腕に力を入れる貞盛。
見る間に、腕の筋肉の力のみで傷を塞ぐ。――ぽんぽんと傷が塞がった、右腕を叩きながら、大笑いをする貞盛。
「大丈夫? なら始めようか。
朱雀天皇は将門の首を正面から見据えるように
「
朱雀天皇の澄んだ声が遠くまで……
黒い……一切の陽の光も、火の灯りも奪い去るような漆黒の湖。
辺り一面も闇の
そんな湖に五体を投げ出し浮かび、
『小次郎』
ゆっくりと響く声に反応して
「懐かしい呼び名だ……この将門を……今もそう呼ぶ者は少ない。とうとう幻聴まで聞こえるようになったか」
誰もいない……独り笑い、独り
ふいに将門の視界を光る物が横切る。
「む、なんぞある?」
ぱしゃりと水面を掻き乱しながら、慌てて起き上がり、光る物を探す――それを見つけるのに時間は掛からず。
闇の世界でここに居るぞと主張する、水面に留まる、光る蝶。
「これは一体……」
光る蝶が、ついて来いと言わんばかりに飛び舞いながら、将門を誘う……蝶に釣られ将門も、ぱしゃりぱしゃりと水音を立てながら歩みはじめる。
幾ばくか歩むと、湖に浮かぶ島のようなものが見えはじめる。
そこにだけ闇の中で唯一、陽の光が天より射し込んでいた。
光る蝶が島に止まり、人型に変わる。
「久しぶりだね、
その姿と声に驚き、
――あの時から随分と時が経ち、成長している。が、それでも将門は見間違う筈もなく。――平伏す。
「お久しゅう御座います、陛下。――この度は我が不徳の
将門の謝罪の言葉に対して、からからと笑う朱雀天皇。
「もう君の体は罰を受けた、乱も鎮まった、魂にまで罰を与える気はないよ……それよりも、東国に戻ってから起こったことを……そして何より、君を、小次郎をこんな所に幽閉している者の話を詳しく聞かせてよ」
その言葉を聞き、面を上げる将門。
「
「もちろん構わないよ、此処は誰にも邪魔をされない場所だ……ゆっくりで構わないよ」
島に唯一ある切り株に座し、
将門は記憶を呼び起こすように、ゆっくりと語り出す。
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