第3話クモ
「我らの棟梁に傷を負わそうとは笑止なり」
枯れ枝のように細い腕……しかし、地に手が付きそうなほどに異常に長い。――柳のように腕を
「ほう、やるじゃないか……ならば! 」
「お前、腕に何か仕込んでるな……鉄の
「当たらずとも遠からず」
手長の者は両腕の
その下からは鋭い突起が付いた鉄板と思わしき物。それが幾枚も
「この腕で
長い腕に見合う細長い指。それは
「武具なんて
挑発しながらも、
満仲が投げつけた刀は
「その
独特の破裂音を鳴らして迫りくる腕。
――刹那の
「先程までの勢いは
手長はくつくつと笑いながら、さらに腕を振るう速さを一段また上げる。
満仲は
「よし、こんなものだな!」
満仲は限界がきていた刀を手放し、飛び退く。
にやりと笑い、
「お前こそ動きを見切れてないじゃないか、ご自慢の腕を見てみろよ」
「何を馬鹿なことを……言って……こ、これは何だ?」
細長い両腕には符が何枚も何枚も貼り付けてあり、手長は剥がそうと手を伸ばす。
「遅い、老猫よりも遅いぞ!
満仲が言葉を紡いだ瞬間。――符より
予想以上の
「お……おお、まさか」
図らずも手長の者は、斬りやすいように
「ここまでだな……では、一足先に地獄にて待て」
手長の者の首を落とそうとさらに歩みを進め、
「――っち! 水を差しやがって」
満仲は刀を振るう先を急激に足へと変える。
刃と蹴り足が衝突する――軽快な音とともに綺麗に刀が
その光景を目の当たりにし、
「
「くはは! やるじゃないか、やはり一対一では
豪快に笑いながら
足太の者は手長に付いた
「兄者、一対一の闘いに水を差してすまぬ。――しかし、我らは武人に
足太の者は手長の者の手をとり、勢いをつけ立たせる。
「ああ、強い。我ら真なる姿に、いや奥の手まで使わねばならぬかもしれん……が、やるぞ」
その言葉とともに手長の者を足太の者が肩に担ぐ形となる。その姿はまるで――
「あん? まるで妖怪、手長足長――いや、妖気は見えない……何より手長足太だしな」
「左様……我ら元来の妖怪ではない、ただの人よ――混じりモノだがな」
担がれている手長の腕。――一瞬の溜めと破裂音に煌めきとともに
足太に担がれ武器のように振り回され、それは一定範囲に入ったものを全て跡形もなく壊す。
「兄者の腕で壊れるか、我の足で蹴り砕かれるかの違いよ……好きな方を選んで死ね」
「三つ目の選択肢がないぞ? お前らが斬られて死ぬという選択肢がな!」
その言葉を契機に
腕の暴風のような乱舞により地が
そんな死地へと
「二度目だ……遅いぞ!」
「おおお! 愚弄しおって!」
暴風に太足の蹴りによる怒涛の連打。――
「なぜ……よけきれる、何故だ! 我らの連撃は必中」
「遅いからだって言ってるだろ」
血ぶりをしながら悠々と
「兄者、奥の手を使いましょうぞ」
「使うしかあるまいか……棟梁、先に九泉へと向かいます、あとの我らの悲願を頼みました」
手長を足太は肩車する形となり、呪の言葉を唱え始める。
「我が身を依代とし、
二人の身が人ならざるもの……八本足を持ち毛むくじゃらの身体に鬼のような形相となる。
地鳴りとともに呪の影響か結界が悲鳴を上げ始める。
結界を外側から、維持し続ける
「
危機を敏感に察知している
「
符から雷鳴とともに
「――――――」
人の言葉を失い、
「そうなるとは思っていた……雷符――我が刀に宿り、
刃を符で
「
「蜘蛛よ、ゆくぞ!」
「うお!」
脚を避け、すれ違いざまに斬り落とす。切断面から白い血が流れ落ちる。
「――――!」
蜘蛛は咆哮とともに脚を失った為に体勢を崩し倒れこむ。
「まだまだ!」
「ふき飛べ!」
巨大な光の腕で蜘蛛を力の限り殴る。――巨体が宙に浮く。
しかし、満仲は追撃の手を一切緩めずに、蜘蛛の顔面を殴る。――結界の壁まで飛び、蜘蛛は
柔らかい腹を晒し、背を結界に焼かれながら、苦悶の鳴き声を上げる。
「蜘蛛の動きを封じ給え!」
左腕から蛍火のような光が飛び、壁にぶつかった蜘蛛に吸着する。
蜘蛛は一刻も早く体勢を整えようと、光から逃れようと、なんとか
満仲は蜘蛛へと近づく。
「これで終わりだ……ではな、土蜘蛛よ。迷わずに纏めて逝けよ」
渾身の力を両腕に込め刀を振り切る。
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