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 アマト王国の城下町外れにある小さな集落に、少年・・・もとい、少女の家があった。

 少女の名はホイップ。アマト王国に住む13歳の女の子だ。

 幼き頃に両親を亡くし、今は同じ集落に住む人たちに支えられ生活している。

 

 「ただいま」


 ホイップは帰宅すると玄関に飾ってある写真に声をかける。それはかつて自分を育ててくれた両親の写真だった。


 「今日も頑張るよ、スイーツ作り」


 ホイップはそう呟くと、自宅の地下にある作業場へと向かった。そこには緑色の布で覆われた全高約4m程の大きなマシン、通称“スイーツ”が広い作業場の真ん中に佇んでいた。

 

 「おっ、来たか」


 作業現場に近づくと、スイーツの足下には金髪で長身の男性が、ホイップの馴染みの顔が見えた。

 

 「カスタード、今日も早いね」

 「当たり前だろ。お前に頼まれて毎日やって来てるんだからな」


 そう言うとカスタードはホイップの頭に手を置き優しく撫でた。

 ホイップはまんざらでもなく頬を赤らめるが、ふと我に返り「やめて」とその手を払いのけた。


 「いつまでも子供じゃないの。私だってスイーツを弄れるくらいには成長したんだから」

 「そりゃ失敬」


 苦笑いしながらカスタードは少し残念そうに、払われた手を逆の手でさすった。


 カスタードはホイップの幼なじみで、ホイップよりも7つ年上の二十歳の青年である。ホイップの兄貴分的存在であり、昔から今でも兄妹の様に慣れ親しむ。ホイップの境遇を目の当たりにしているため、より一層ホイップを大切にしている。


 「でも俺にとっちゃまだまだお前は子供だぞ」

 「帰らせるよ」


 からかうカスタードを横目に、ホイップは作業机の引き出しを開け、中から複数枚束になった紙・・・設計図を取り出した。


 「父さんと母さんが遺したスイーツの設計図・・・私がこのスイーツを完成させてみせるんだから」

 「ホイップ・・・」


 カスタードは思わず涙ぐみ両袖を濡らした。ホイップは机を背に呆れつつも、そんなカスタードの姿に内心嬉しく感じ、こちらも思わず微笑した。


 ホイップは複数ある設計図の一枚を持ち出すと、身支度を整え涙を拭うカスタードに声をかけた。


 「ほら行くよ、城外に」


 

 



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バーサスイーツ物語 升宇田 @tepitepen

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