#3 永倉美緒side
「ごめーん、遅くなったぁ…!」
希がミーティングから帰ってきた。25分…か。もし仮に先に帰っていたら、今頃荷物を置いて自転車を走らせている頃だろう。仕方がない。私がした選択だ。それにしてもこんなに遅くなるとは思ってなかった。
「大丈夫だよ、長かったんだね。」
私が言うと、少し顔を顰めて希が私に訴えてきた。
「そうなの、ちょっと聞いてよ!あの矢澤先生、ほんと意味分かんないんだけど。」
校門をくぐり抜けると希は声を大きくした。余程嫌なのだろう。
「なんか、今までの伝統ぶち壊し…みたいな。去年まで先輩が築いてきたこと全部フル無視なの。すっごいハードになりそう…、あーやだやだ。」
部活は厳しいほうがやり甲斐があると思う私とはやはり価値観が少し違うのだろう。
「あーそうなんだ…じゃあハズレな感じの先生なんだ?」
「そう、もう大ハズレ。大凶だよ大凶。」
「そ…っかぁ。」
希がアタリだと言うのを少しだけ期待した自分がいた。
それはまだ何も知らない先生に失望したくなかっただけか、また別の感情なのか、私はいつ分かるのだろう。
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