#2 永倉美緒side

長かった就任式が終わった。私は希と帰るために希のところへ行こうとする。希は矢澤先生と話をしているみたいだ。話を終えると希は困り顔でこちらに向かって走ってきた。

「奈緒、ごめん、ミーティング入ったんだ…。」

「大丈夫だよ。てか、待ってる。ミーティング頑張ってね。」

「わ、ほんと!?じゃあごめん、待ってて!」

そう言うと、希は理科室に走っていった。

本当は早く家に帰って、CD屋さんに行くつもりだった。希を置いて帰ることだって出来たはずだけど、私のかけがえのない友達だし、矢澤先生のミーティングも気になった。私は理科室の近くにあるベンチに腰掛けて希を待った。ぞろぞろとテニス部が理科室に入っていく。

「なにしてるの?」

「えっ…。あ…神崎を待ってるんです。」

「そっか。ごめんね、5分で終わらせるから。」

「いえ、大丈夫です。ごゆっくり…。」

急に話しかけてきたのは矢澤先生だった。落ち着きがあって、低めの声が嫌味なく私の耳に入ってくる。


理科室の中の会話ははっきりとは聞こえなかったが、先程聞いた矢澤先生の声は私の鼓動を高鳴らせた。





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