#2 矢澤夏海side


あれから私は楽しみながら勤務が出来ている。滑り出しはなかなか良いのではないかと思っている。私は3日目の勤務の日に学年会議に出席した。私の担当は3学年の学年主任。そして、3学年の理科。理由は単純で、高校勤務の経験を活かして生徒たちの受験にアドバイスをしてほしい…という校長先生の意向だった。勿論、今までやってきたことが他の仕事の役に立つのは凄い嬉しいけれど、正直気は浮かなかった。私も、私の妹もそうだったように、中学3年生は難しい年頃だと思うから…。そして部活は女子ソフトテニス部を任された。私の専門はバレーとハンドボールなのだが、この学校は先生が既に決まってしまっていた。テニスのルールから確認していかないといけない…。


始業式。就任式は始業式の後にあるからと、舞台袖で待機しておくように言われた。私の母校とは違い、田舎でないこの学校は舞台袖まできちんとしていた。舞台袖の放送機器のセットに見入っていると、いつのまにか始業式が終わり、緞帳が降りていた。

「先生方、舞台へ移動お願いします。」

そう言われて移動した場所には6つの椅子が用意されていて、私は1番最後の自己紹介スピーチを任された。

「みなさん…こんにちは。矢澤夏海です。3年生の学年主任と、理科を担当します。部活は女子ソフトテニス部です。去年まで高校に勤務していた経験を活かして、みなさんの受験をサポートして行きたいと思っているので宜しくお願いします。」

私のスピーチが終わると全校生徒で校歌を合唱し、就任式を終えた。

終わったと同時に、緑のシューズ…つまり3年生の生徒が私の元にやってきた。

「矢澤先生!私、女子テニス部長の神崎希っていいます。引退まで短い間ではありますが、ご指導宜しくお願いします。」

校則通りの高さに結ばれたポニーテールを揺らしながら元気の良さそうな女の子が自己紹介をしてくれた。左目にある泣きぼくろが印象的だ。

「ああ、部長さんね。今日、ミーティングあるから理科室集まってくれる?」

「了解です!伝えておきますね。」

それだけいうと、またポニーテールを揺らしながら去っていった。

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