めいいっぱい

火落

笑った決意。


「アルフィス、今日の天気は晴れかな?」

アルフィスと呼ばれた少年は答える。


「いや、ディーバ。今日は晴れねーよ」

ディーバと呼ばれた青年は少し目を開け

「どういうことだい?」


「感染者が出たって、システムが言ってる」

ディーバは真剣な目つきへシフトさせ言った。


「わかった。 気をつけろよ?」


アルフィスは快活な笑顔を見せる。

「ったりめーよ」


ワライムシ……


それは人を笑わせる。 いや、笑い以外の感情が奪われると言ったほうが正確だろうか。

感染した人間は笑って人を殺す。 笑って物を壊す。


まるで、狂人かのように……


ーーゼンダーバレーー 市街区


そこには感染者と軍が拮抗していた。


軍は感染した人間に同類にされ、元仲間を殺しているだけである。


「くっそ! 全然へらねぇ!」

アルフィスは、タタタターと走ってきた。

「大丈夫か!?」

「アルフィスか? ダメだ! 全然減らない」

軍の一人は言う。


「バライズ、ちょっと俺一人に任せてくれないか?」

軍人【バライズ】必死に言った。


「ちょっと待て! お前のチカラは凄まじいが! それでも!」

アルフィスは笑う。


「大丈夫だ。 少し新しい武器を使ってみたくてねぇ」

アルフィスは、ホルスターから最新式の刀を引き抜く。


それは軍が開発した新作の軍刀。

【ロード ブラスター】

エネルギーを凝縮させ、刃先へと充満させる軍刀だ。


バライズは、少し苦い顔をすると……

苦々しく言った。

「わかった。 だが危険だとわかったら我々も援護するぞ」

アルフィスは言った。

「かってにしろー」


「さあ、 テストタイムと行くか」

アルフィスは走った。


その速力は、常軌を逸しており感染者の前に来た。

「は! システム起動!」

すると、彼の軍刀【ロード ブラスター】の柄部分から、青い光が漏れる。

青い光はホログラムを生み出し展開、【レーゼン モード】を起動した。


「レーゼンモード!切り裂け!」

アルフィスの剣先は、深く深く突き刺さる。

感染者の一人の肥大化した悲惨な手がアルフィスの頬を掠める。


彼は即座に刀で、肥大化した腕を登り細切れにする。

「はあ、はあ、やっぱキツイな」

というが、後ろから最新式の軍刀が迫る。

アルフィスは、来るのを読み前へと足を進め刀を避けた。


「その刀は……」軍服を着ているがボロボロで、辛うじて胸にある印章でやっとわかるぐらいだ。


「お前も大変だなぁ、だけど」

軍服の上から一気に腹を切り裂いた。

「死んでんだから寝てろよ。 ずっと」

彼を後ろを振り向いた。


「お、」後ろにはさっきの感染者と同じ軍服を着た感染者がもう後ろまで迫っていた。

「ちょ! ヤバ!」

アルフィスは、剣を振り切ろうとするが間に合わない。


「くっそ」

しかし、アルフィスは無傷だったなぜなら。


「後ろに気をつけろよ? アルフィス」

そこにはさっきの指揮官【バライズ】が立っていた。

両手で持っている小銃アサルトライフル電磁力回転小銃パラライズ・アサルト】で感染者を滅多にしていた。

「助かったぜ。 バライズ」

「いやおうよ、 俺もそろそろ軍の戦い方は飽きちゃってな」


「は、お前らしい」


「行くぜ、バライズ」

バライズは、顔を不敵に笑わせ【電磁力回転小銃パラライズ・アサルト】を構える。

「おうよ、アルフィス」


バライズは、アルフィスの背後に立った。

感染者が、攻め入って来る。


「こっちも、レーゼン使えるんだぜ?」

と言って、【電磁力回転小銃パラライズ・アサルト】に取り付けられた【ACCESS】と綴られたボタンをカチッという音とともに押す。

すると、電磁力 回転小銃はバライズの目に青い光を当てる。

【レーゼンシステム、起動致します】

と網膜投射で写っている。


「オラオラオラ!」小銃は獣のように唸り、軽い射撃音から放たれる弾丸を全て感染者に当てる。


「ナイス! 次は俺だ! 」

アルフィスはレーゼンモードを展開したまま、空へとまった。

「よし、この高度なら【レーゼン・バースト】が使える!」


ロード ブラスターは、アルフィスの腕に巻きつくように青い光を発する。

「貫け! 【レーゼン・バースト】!」

感染者がウロウロしている戦地に向けて急降下。


身体全体を青い光が包み込みまるで青い彗星のよう。

落ちた。


砂埃が、優しく舞う。

「よし、さすが最新式の軍刀だ」


バライズは、こっちへ歩いて来る。

そして、バライズは高々と宣言した!


「これより! 感染者一行を倒した!」


軍人全員が、狂ったように叫んだ。

しかし、アルフィスは悶えていた。


それはあまりにもの苦痛が彼を襲ったためである。

「あ……くっ……」

バライズは即座に、異変に気付きこちらに来た。

「アルフィス! どうした!」


軍全員がざわつく。


そして、バライズは見てしまった。

彼の首にある【感染者である印】を……


「そんな……」

彼らは悲嘆にくれるのだった。



ーーーーーーーーーーーーーー





アルフィスは目を覚ます。

周りは鉄格子で覆われていて、前の見覚えのある門番がこちらをみる。


「起きたか、アルフィス」

軍人【バライズ】は言った。


「バライズ! これは!ここは!?」

バライズは悲しく目に涙を溜めて言う。

「お前は、もう【感染者】だ……」

アルフィスは困惑した。

意味がわからないという顔をした。


バライズは鉄格子の間から小さな手鏡を手渡した。

「自分の首を見てみろ」


アルフィスは絶句した。

「な……ッ……これは……ッ!」

バライズは、さらに非情とも言える残酷な言葉を紡いだ


「お前は政府の意思決定により処刑される……」


アルフィスの顔は地獄に行った後のような顔へと変貌していた。

悔しく、しかし何もできない。

理不尽そんな言葉だけ、頭の中を回った。


ーーーーーーー


ディーバはテレビを見ていた。

「遂に、アルフィスも【感染者】か……」


ディーバは自分の腕を観る。

そこにはアルフィスと同じ【感染者の印】があった。


「私も本当のことを話さなければいけないね」


ディーバは少し、哀れみを感じさせる笑みをこぼした。


ーーーーーーーー


ゼンダーバレ 処刑場所。


アルフィスは、俯いていた。

たった一度の理不尽なことにより自分の人生が終わったのだから。

何もできない自分に悔やんでいた。


「これより、感染者の処刑を開始します」

「感染者は椅子に座ってください」


アルフィスは、言われた通り座った。


「さあ、処刑開始です」


首を斬られる 斬首だ。

見覚えのある顔は悔やんでいて、同胞が死ぬのを見るのが辛そうだ。

「すまん!」


刀が首に触れ一気に振りかぶる。

「……あれ?」


「ごめんねぇ、アルフィス。 残念ながらまだお前を死なせないよ」

全員が彼を見る。


「ディーバ!」アルフィスは、立ち上がろうとするが、拘束が邪魔して動けない。

「お前は! 誰だ!?」

一人の軍曹が唸った。


「ただの……【感染者まほうつかい】さ」

彼は『笑う』

一瞬、腕が光った気がした。

ディーバは腕を突き出す。

「ブラスト=バースト」

驚いたことが起こった。

その手から白色に輝く円が浮かび上がり、衝撃波を放つ。


その衝撃波は巧みに動き、アルフィスを拘束していた器具を取り外した。

「逃げるぞ! アルフィス」

ディーバは、アルフィスの腕を掴む


「おい! これは! なんだ!?」

アルフィスは困惑しながら叫ぶ。


ディーバは困り顔を言った。


「後で! 話す! 今は逃げるよ」

「ポート=ダイブ!」


アルフィスとディーバは、一気に地表から空中へ飛び立った。

「脱走者と侵入者が逃げたぞ! 追え!」

一人の軍曹が慌てたように言った。


バライズは、帽子を下にし

「あいつらしいや」

と一言。


ーーーーーーーーーー

ゼンダーバレ軍 基地。

「警報、警報エマージェンシー 脱獄者1名 侵入者1名 全力で叩き潰せ 繰り返す……」

未だに、警報音がブーブー鳴っている。

そろそろ、うるさく感じるぐらいには。


アルフィスは、上を向いた。

「ディーバ、お前が使ったのってなんだ?」

ディーバは、腕を見て言った。

「これか? これは感染者にしか使えないマホウってもんだよ」

「魔法? おかしくねぇ?」

この世界の魔法が軍が持っている【レーゼンシステム】と感染者が持つ【マホウ】と言うものだ。

だがディーバは感染者ではないはず……


「いや、私は感染者だよ」

アルフィスは衝撃の事実に反応が遅れる。


「えー! どうい……」

口を塞がれたアルフィスはフゴフゴ言いたそうにする。

「ちょっと黙って、軍に見つかるだろう? 言ったよ後で話すって少し待ってて」

ディーバは口から手を話すと、扉の前まで来た。

そこには二人の門番が居て、

「おい誰だ!お……」

「ディープ=スリープ」

彼は手を突き出して、マホウを放った。


「んな………」

二人の門番は『まえ』は言えずに、その場に崩れた。


「ふう、カードキー借りるよ」

ディーバは、門番からカードキーを奪い、タッチリーダーにセタッチする。


短い電子音が軽やかになり、それと反して扉は大きな音を立てて開いた。

アルフィスを手招きし、アルフィスも走ってそこに行く。


「ここは……【武器庫】」

アルフィスは手にグーをつきながら言った。

「そう、せめて私は魔法が使えるが、アルフィスはまだ覚醒してないからな」

「ここから持ってちゃおう」

ディーバは少し笑った。


アルフィスは2本目の【ロードブラスター】を手に取る。

「言っておくがレーゼンシステムは使えないよ。 軍に見つかるからね」

「わかった」


「んじゃ、私も」

と言ってとったのは拳銃型の武器【ファー・リライド】という電磁波を送り出す銃だ。

「これで、殺さなくていい」

ディーバは、ファー・リライドのスライドを動かし戦闘準備は完了のようだ。


アルフィス達は、武器庫から出た。

「アルフィス」

ディーバでもない声から呼び止められた。


「ああ、バライズか……」

バライズは、こちらに 電磁力回転小銃パラライズ・アサルトを向ける。

「そうだ。 どうかロウに戻ってくれないか? そうしないとお前を殺しちまうかもしれない」

バライズの必死の懇願だった。

彼は一応軍の中で権力をもつ、だから言ったのだ。 止められるかもしれないと。 責任をバライズがとりそうすればアルフィスが生き残れるかもしれない可能性を見つけたのだ。


だが、

「いや、いい。 今はお前の敵だ。 敵に情を使うんじゃないよ。 敵だろーが」

アルフィスは不敵に笑った。


「そうか。 ならしょうがない! 軍の人間【バライズ・モーティマー】として! お前らを捕らえる!」

バトルがこうして始まった。


バライズは、電磁力回転銃パラライズ・アサルトを構えると、サクッと撃つ。

「全く、電磁弾だとしても油断はできねえぜ」


アルフィスは、バライズは背後へ周り【ロードブラスター】で腹を切ろうとする。


「させるか! 軍式【電磁力爆弾マグネット・ボム】 」

ボムはアルフィスの前に貼り付けられ、空気を吸い込み爆発する。


「おぅお!」アルフィスはへんな雄叫びを上げながら背後へ下がった。

「あぶねーな、オイ」


「だけど、ボムを使ったってけどは容赦しなくていいんだな?」

バライズは言った。

「ふん、容赦しなくてじゃなくて容赦させないんだ」

「あっはっは、そうかい。 じゃあお言葉に甘えるぜ?」


途端、アルフィスは加速した。

ロード ブラスターに付いている【超速化機構バイス・スピード】と元々の常軌を逸した速度で進む。


「来いよ」

と彼は言って。

斬られた。


アルフィスは言った。

「お前最初から本気じゃなかっただろう? 【レーゼンシステム】も使わなかったし……」

バライズは、血反吐を吐き言う。


「親友相手に本気になれるかよ。 お前がオカシイんだ」

アルフィスはわらった。

「そうかい、んじゃ寝てな」

ディーバが、首筋へファー・リライドの引き金を引き微弱な電気を放った。


バライズは一瞬ピクッと痙攣を起こしたかと思うと、目を瞑った。


ーーーーーーーーーーーーーー

軍の廊下を歩いている時、アルフィスは聞いた。

「ディーバ」

ディーバは反応した。

「ん?」

「俺、感染者なんだよな」

ディーバは応える。

「ああ、お前は感染者だよ」

「じゃあ、なんで体に変化がないんだ?」


「それはだな。 お前は気に入られたんだ」

アルフィスは眉をひそめる。

「気に入られた?」

ディーバは、両腕を頭の後ろにして言った。


「ああ、そうだ。 【ワライムシ】はな、強い人間ほど猶予を残しておく。まるであらかじめ取り決められたようにな。 だから私も自我を残したまま【マホウ】を行使できる。 私は直感でわかったんだ。 そしてその猶予は死期を悟った時、初めて【死期】が分かる。 ただ、ワライムシが弱いって判断しちゃうとすぐに乗っ取られてしまうからね」

アルフィスは、背筋が凍った。


「お前ら! 何をしている!」

背筋が凍っている場合ではない。 とアルフィスは思った。


「何って? 脱獄だけど」

「ディーバ、俺は強いぞ?」

ディーバは、やれやれと言って

「そうだよね、強いよ」


「まあ、手助けはさせてもらうけど 」

「はあ!」

アルフィスは、新型の剣【ロード ブラスター】を縦に振って軍装備に包んだ相手の倒す。


「こっ………この感染者どもがあああああああ!」

指揮官らしき男は、最新式の軍刀をもって斬りかかったてきた。


「ちょっとは活躍しないとねー 【アルデバラン=フォース】!」

指揮官が持っていた軍装備がバラバラされ、ディーバは腕を胸に持ってくる。

軍装備はディーバのところに行ってパラパラ落ちた。


「ちょっと寝てなよ 」

と言って首筋にファー・リライドを突きつけ発砲。

指揮官は気を失った。


「まだまだ、いやがるねぇ」

アルフィスはロード ブラスターを逆手持ちにし、もう一つの方は軍装備の一つ【強化拳銃ブースト・ハンドガン】を持った。


「貴様ら…… 【レーゼンシステム】を使え!」

一人が高く飛び上がり、【レーゼンシステム】を起動。 一気に斬り伏せようとする。

アルフィスは、それをサクッとよけて【強化拳銃ブースト・ハンドガン】を両腕に撃った。

「うぐ………!」

軍人は、痛みに顔を滲ませ呆気なく倒れた。


「これからどうするか」

アルフィスは歩く。

ディーバは答えた。

「これからは軍から逃げなくちゃ、それと成し遂げたい事を決めなきゃね」

「成し遂げたい事?」

「そう、成し遂げたいこと」

アルフィスは首を傾げた。


「ワライムシは人の決意や、成し遂げたい事を成功させると宿主のチカラを認めて、呪いを打ち消すんだ。 まあ、まだ私はやってないけどね」


アルフィスは考え込み、一つの結論に至る。

「世界を救いたい………」

「え?」

ディーバの顔は凍りついた。

「俺は………」

「ワライムシによってみんなの平和が途絶えようとしているんだ。 だから」

「世界を救う」

ディーバの顔面は蒼白だった。

これから彼らは、軍に追われながらも世界のために行動するのだろう。


それは【新たなる神話】となるのだ。

さあ、行きなさいアルフィス。


笑い狂い、そして救いなさい。


世界を………











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めいいっぱい 火落 @hioti

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