第9話 指標天空


雲の大地はもこもこしていて歩きづらかった すなわち立っているのも居心地が悪い 


そして ここ 天国のカフェに着いたときは椅子に座れたので足元も落ち着いた


だが今はそのもこもこが再び下にあるみたいだった カフェテラスの床は木だ


なのに平衡感覚が狂ったような気がした


この機械人間と話しをしていたが 先ほどのシグナルという言葉によって沈黙が続いている


返事を待っても返ってこないので僕が話を仕方なく続けた


「シグナルは半年前 ほぼ全ての機械人間が受信した あなたも例外ではないですね?」


質問を投げかけたが答えないので言葉を続ける


「そして事件は起こった 大勢の機械人間が行方をくらませました あなたも仕事場から急にいなくなっている」


機械人間は上を向いた 空飛ぶクジラが頭上を飛んでいた


「シグナルの音は高い音域を放っていた 人間が拾う音で言えばクジラの鳴き声に近い そして 色々な場所で意識を失った機械人間の発見報告が相次いだ 中には亡くなっている人もいる」


「君は飲まないのかね」


「そうですね 頂きましょう」


僕はオイルコーヒーを飲んだ 苦みとオイルの独特の香りがした


「話を続けます 行方不明となった人の中で 唯一あなただけが今こうして 意識を保ったまま 僕と会話をしている」


「私はシグナルを受け取っていない」


「ではなぜ職場から失踪を?」


「何となくだ 意味などない」


「あなたの自宅からシグナルの発信源となる黒い物体が発見されました これはどういうことですか」


僕の頬に衝撃が走る


身体が思いっきり後ろに飛び上がり カフェの建物におもいっきりぶつかって倒れ周辺もへこんだ


どうやらこの機械人間に殴られたらしい


僕は殴られた頬に手を当てて 話をつづけた


「とにかく 不思議なのはなぜこのような事を?そして どうして遠くに逃げなかったのですか」


「貴様 私のコーヒーに 何か入れたな」


「ええ まあ 痺れますか?とにかく 気を失う前に答えてくれますか」


機械人間はふんっと鼻で笑った


「貴様も同じ機械人間なら シグナルは受け取ったんじゃないのか」


「僕は残念ながら シグナルが発信された時刻は あなたも住んでいる機械都市にはいませんでした」


「そうか 運がいいな」


「答えてませんよ?」


「私も意味など分からん ただ 呪いがそうさせただけだ もう 製造されてから200年はたっているというのにな」


頭上にいたクジラが鳴いた それと同時に 機械人間は崩れるようにして倒れた


ため息を一つ吐く


「やれやれ 顎が外れてしまった」


僕は近くにあった顎を掴むとポケットに入れた


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機械都市のファンタジー 旋律 雲海 @senritu

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