第8話 天空の匣

青空に星々がキラキラ 雲の大地はふわふわと漂う


背中に翼をはやした人間や、同じく翼を持った機械人間たちが


カフェテラスの前を騒がしく行き交う


よく見ると空の大地を囲うようにガラスのドームが覆っていた


「そんなに珍しいか?」


座っているカフェテラスの席で、体面に座っている翼持つ機械人間が喋った


僕は頷いた そりゃ珍しいだろう 地上の都市でわざわざ風よけのためにこんな大規模なガラスのドームなど作らない


「そうか・・」


僕の返事に反応するようにオイルコーヒーを機械人間は口に流し込む


「ここは素晴らしい場所だろう 人間や機械も翼を持った姿は大変に美しい 


私は地上の出身だがわざわざ背中に翼を付けてもらったよ」


「よくお似合いですよ」


僕はお世辞を言った


「ありがとう お世辞でも嬉しいよ この翼は特注なんだ おかげで高い買い物だったがね」


たしかに他の機械人間の付けている機械の翼とは違い スチームパンクに出てきそうなデザインの翼をしていた


「アンティークな感じが好きなんですか」


「特別好きというわけではない 私の設計者がたまたまそういう趣味でね それに影響されたのだろう」


「クリエイターの影響は大きいですからね 逃れられないと言ってもいい」


「そうだ まるで呪いのようにな」


 しばらく二人は黙った


ドームの外で空飛ぶクジラが鳴いている


機械人間たちにとって 設計者 クリエイターと呼ばれるものは親であり神であり絶対者と言ってもいい 


彼らの意向によって機械人間がどう生きるかの方針が決まるのだ


「それで」


僕は沈黙を破った


「シグナルはいつ来たんですか?」


僕の質問に 人間の人工皮膚を被った目の前にいる機械人間は不気味に笑った

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