空の住人

第7話 天空階段


荒野 草もポツンポツンとしか生えていない


風が土埃を上げる 思わず顔を手で保護した


それでも砂利が少し口に入ったので ぺっぺっと吐き出した


なんでこんなへんぴな所に作るのか 


都市近郊に作って何か問題でもあるのだろうか


ぶつぶつと頭の中で文句を言いながら 目的地にたどり着いた


上りと下りの巨大なエスカレーターが 遥か雲の先まで伸びていた


人はまばらだ 僕は後ろの頭をポリポリとかいた


長いエスカレーターは遥か遥か高く 空の上まで続いている


高所恐怖症なのだ それでも仕事なので上るしかあるまい


ポケットから切符を取り出すと 入り口の横に立っていた人間に渡し


エスカレーターの動く階段の上に乗った


ゆっくりと 上へ上へと上る


途中でコンビニがあり 翼を持つ機械人間が数人買い物をしていた


飲み物を買おうか迷ったが どうせ待ち合わせの場所で飲めばいいかと行くのをやめた


最初はそよ風だったが だんだんと強く風が吹くのが体に感じられた


下を向くと荒野と ポツンポツンと建っている建物が見えるだけ


時折強い突風が吹いた その都度エスカレーターの周りをガラスが現れて防護し


そして止むとガラスも消えていった 


強風でないとガラスは出現しないので 風で体が揺れるのが怖かった 


ただでさえ高い所が怖いのだ 身も竦む


動画サイトで見たことがあったが 一人の人間がエスカレーターから落ち


防護ガラスが生成され 遥か下まで滑り落ちる映像を思い出した


そんな大がかりなアトラクションは御免だが また最初から上るのも御免だ


普通にしていれば落ちはしないのだ 冷静に 深呼吸をして そして微妙に震えている足よ どうか治まってくれ・・


だいぶ高い所まで来た ここまでくるとずっと防護ガラスが張っている状態だ


外はかなりの強風に違いない


ふとガラスが生成されない時があった


そよ風が頬をくすぐった と思った瞬間に強い風が吹き すぐさまガラスが生成されて風を防いだ 防護ガラスが風によって激しく揺れている


深く溜息をついて 体を持っていかれないように両サイドのステップを掴んでいた


両腕を離したかったが しばらくは掴んだ力を抜くことができなかった


まあ しょうがないよな・・っと二回目の溜息


そして白い雲の大地が見えてきた 


これで下を心置きなく見れる ようやく着いたと三度目の溜息だ

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