第3話 そして旅人は星になった



息を吐く 白い吐息が頬をかすめた 


やはり月は寒い 白い大地と共に地平線まで見渡しても何もない


宇宙を見上げると電車が地球へと帰っていく姿が見えた 線路がないのによく迷わないなと感心する


僕は休めていた歩みを再開させた それからあっという間に目的地へと到着した


月の体感時間は人間にとって短いのだろうか ともかく 入り口を通って月の公園に入った


公園内にはありとあらゆる自然が四季に関係なく伸び伸びと育っていた


落ち葉の絨毯の中にポツンとあったベンチに腰掛けた 


しばらく座っていると遠くにいた機械のライオンが近づいてきた


大人のライオンだろうか 機械とはいえそれなりの大きさなのでやはり圧倒される


手を伸ばすと触れる距離までライオンは近づいてきた 


少し怖かったがそっと毛並みをさすると気持ちよさそうに喉が鳴った


しばらくライオンはさすられるのを堪能していたが 急に耳をピクンと動かした 


僕の耳にもかすかに聞こえた クジラの鳴き声に似た高い音が聞こえた気がした


枯れた葉っぱがひらり 僕と機械のライオンの横を通り過ぎて落ち葉となった


それが合図となったかは定かではないが ライオンは僕の元から離れた 


ライオンは遠くに駆けると 僕の方に振り向いて一声鳴いた


まるでこっちにこいと言わんばかりに


僕は迷わずに行ってみることにした 好奇心の獣に素直に従ったのだ


ライオンは公園の奥へと歩いていった スピードは人間が歩く速度を超えていたので 少し駆け足になりながら追いかけて行った


やがてそこは訪れた


月の大地の様に白い花が絨毯の様に敷き詰められている区域だ 


まるで幻想の世界に飛び込んだ気分になった


そしてライオンは立ち止まる


僕はその場所に近づいた


そこには 一体の機械人間が倒れていた


性別はわからなかったが とても綺麗な顔をしていた 


僕はしゃがむと そっと機械人間の頬を触った


まだ暖かい


僕はレスキューコールを行った 結局 こうなる運命だったのかもしれない


僕はおてがらだぞと言わんばかりに機械のライオンを撫でた


静かに ライオンは嬉しそうに鳴いた

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