第3話 アラサークエスト!

『なぁ、お前ら部活始めるんだろう?』

『なんですかアラS……いえ、それがどうしたんですか?先生』

『いやね、今さっきの電話聞いてたろ?私達の学校はあそこのファミレスに結構支援して貰ってるんだけど、そこがなんかピンチらしくてな?さてさてさーて、どうしたものかね??』

いや、あんたいつもそんな口調じゃないでしょうが、あれか!机の上に置かれてた二十冊以上の七つの大罪が原因かっ。

『なにか頼まれでもしたんスか?』

『いやぁ!わかるか?なんでも今度の日曜に偉い人が来るからそれを対処するまででいいから人をよこしてくれと言ってきてな』

『で?』

『お前らの部活を創設することを許可してやるから手伝ってこい』

『いや、部活創立って特に許可要らなかったはずですよね!?なんでこんなことしなきゃいけないんですか!』

『たのんだぞー』

『聞いちゃいやがらねぇ!!』





「ってな感じでこうなったんだが」

「えぇ……っていうかその人うちの担任だよね?勝手すぎない?」

「超お人好しのお前にそう言われるって……」

あの人も救えないな……と思ったり思わなかったり。

「まぁ、それは良いんだけど、蓮君は働かないの?」

「その日は丁度打ち合わせがあってな?ファミレス自体には来るんだけど働くのは無理なんだ。……まぁ、それがなくとも俺〆切よく破るからバイトなんて許してくれるわけがないけど」

「平然としてるけど、それって悪いことなんじゃないの?」

どんなに頑張っても無理なものは無理だからなぁ……。

今のところ登場する予定はないのだが俺の担当編集の烏丸蘭子さんの紹介をしておこう。

齢二十の未婚者で、彼氏がいたことはない。

自分にも周りにも厳しい性格で彼女を知る人間であれば皆恐れている恐怖の化身………たまに可愛いところもあるんだけどな。

「まぁ、別に難しいことはさせられないと思うから日曜日は頼んだぞ」

「うんわかった!けどいいの?」

「なにが?」

「こんなに引きずると読者はこれが何の話なのか解らなくならないかな?」

「………いざって時はページを戻って確認してくれるだろ……あんまメタイ発言させるなよ……」

「ははは……ごめん」

その後俺達はそれぞれ、バイトと打ち合わせの準備がある為早めに帰ることにした。

家に帰る時、途中担当に引きずられながら泣き叫ぶ宮崎と会い助けを求められたが、こいつの担当編集が「もし邪魔するならあなたの担当編集にあること無いこと吹き込んでカンヅメさせますよ?」と脅してきたので、屈したわけではないのだが………宮崎を見捨てることにした。

「はぁ……あいつも変な担当に当たったな、あ、俺も人の事言えた義理じゃないのか」

今日はどこにも寄らず、まっすぐ家に帰ろう、そして妹に甘えよう。

「ただいま……はぁ、疲れた」

「お帰りなさいお兄ちゃん、ご飯にする?」

「もう出来てるならご飯にする」

「分かった、着替えたら降りてきてくださいね」

俺の妹言葉(ことのは)はとてもよく出来た妹だ。

両親は共働きで、家にいるのは週に二、三日程度なのだが、その間俺より早くに家に帰り着いて家事をこなしてくれているのだ。

本当であれば俺も手伝ったりした方がいいのだろうが、それを言葉は「稼ぎ頭に無理はさせられないよ、それにお兄ちゃんはいてくれるだけで私の元気になるんだから」と言って文句を言わずにこなしてくれている。

「あ、お兄ちゃん、着替えるの速かったね……覗こうかと……ううん、座っておいて?」

「お、おう、今日はなに作ったんだ?」

「シチューだよ、お兄ちゃん好きでしょ?」

「おぉ……さすが俺の妹だ……完全に俺の胃袋掴んでいらっしゃる……」

「やだなぁ……兄妹で結婚は出来ないんだよ?」

「お前今話が飛躍どころか違うところに行ったの理解してるかい?まあ可愛いからいいんだけど」

「ふふ、ついでくるね」

テクテクとキッチンに向かう妹を見送ると俺は席に着いた。

「アニメ作り……前途多難だな……」

「なぁに、お兄ちゃんなにか始めるの?」

「あぁ、ちょっと部活をな?」

「部活?でもお兄ちゃん〆切とか大丈夫なの?」

「そこら辺は企画者が宮崎だから考えてくれてると思うし大丈夫だ」

あ、いや……言い訳を考えているだけで結果としてはいいものじゃないんじゃないか?

いや、もう考えるのはやめよう。

「じゃあ、お兄ちゃん」

「あぁ、いただきます」

「はーい、召し上がれ」

「はぐ、もぐもぐ……ん、今回もすごい美味いな!なんというかコクがすごい!」

「えへへ、このシチューには生クリームを使ってるんだ」

「ほうほう?言葉は詳しいんだな?」

「お兄ちゃんに美味しいものを食べさせたくて色々と勉強したんだ」

何この妹!!くっそ可愛いんだけど!!なんだよ!俺のためかぁぁぁ!!俺が血のつながりなかったら告ってるのに!

「はぐんぐもぐ!」

「お、お兄ちゃん?そんなに急いで食べなくてもお替わりならあるよ?」

「はぐはぐっ……んっ!」

「お、お兄ちゃん!?喉に詰まったの!?はい!これ飲んで!」

「んぐんぐ……はぁ……助かった……」

誤魔化すためにやけになって食いまくっていたら命が危ぶまれるとは思わなかった……流石愛は人を殺す……だな、あれ違ったっけ?

「……あのさ、言葉」

「ん?」

「これからもよろしくな?」

「―っ!な、なに?いきなり……」

「いやさ、これから忙しくなるからさ?家での癒しが必要だからさ……これからすこしだけこうしてなでなでさせてくれ」

「ふぇ……お兄ちゃん………えっとね…」

「なんだい?」

「私……私っ!」

そこまで言うと言葉はかぁーっと茹で上がり走って階段を昇って行ってしまった。

「なんだったんだろ?」

「………お兄ちゃん」

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