第4話 ラッキースケベ回ってテンションあがるよね?
一晩が明け、俺は打ち合わせのために昨日翠に働いてもらえるように頼んだファミレスへと向かった。
「ふあーあ、昨日準備に手間取って全然寝れなかったんだよな……」
今日の打ち合わせに必要なものはプロットと呼ばれる今書こうとしている話のあらすじだ。
今後どういう話にしていくのか、どんな展開にしていくかをこと細かに記したもので、それがないと打ち合わせに支障をきたしてしまうので、必要不可欠なアイテムだ。
その他にも必要なものはあるのだが、まぁ、後に説明するとしよう。
「あ、かーらすーまさーん!」
「遅いです、五分の遅刻ですよ」
「すいません、急いだことは急いだんですけど」
「まぁ、言い訳しなかったので今回は不問としておきます、さて早速ですが、プロットを見せていただいてもいいですか?」
「あ、ちょっと待って下さいね」
俺は鞄からプロットの用紙を取り出して烏丸さんに差し出した。すると、烏丸さんはまるでパラパラ漫画を読んでいるかのように、サァーっと目を通すと「解りました」と……あれ、もう読み終わったのかこの人!まじで!?
「今回は魔法使いモノですか……いいんじゃないですか?ごちゃごちゃしてない設定にも好感がもてました」
「まじだったか……」
「どうかしましたか?」
「いや、なんつーかここはこうした方がいいとかってのありました?」
「そうですね……ここ、学園の先生が魔法について語っているシーンですが、もう少し噛み砕いた……簡易な説明に変えませんか?いつもそんなにまじめじゃない先生ならこういった説明の時にもまじめには説明しないと思うんですよ」
「おぉ、確かにそうですよね……」
そしてこの解析度である……だから、俺はこの人が担当であることが嫌だと思ったことはないし、多分今後思うことはないのだろう。
「ふぅ、大体こんな感じですかね……あなたはやればできるうえに面白いの書けるんですから〆切をちゃんと守ってください」
「は、はい……すいません……」
「ふふ、では何か頼みますか?うちで経費として落ちるので何でも頼んでください」
「あ、ならこれとこれで」
「わかりました、すいません、ピザとレアチーズケーキ、チキンドリアとミルクレープ、ドリンクバーを二人分お願いします」
注文を済ませると烏丸さんは俺に一つお尋ねしますが、と質問を投げかけてきた。
「あなたがここを強く希望したのは何か理由があるんですか」
「えっとですね、ここ今日だけ友人が働くことになってて、ここを推したの俺だったんで、様子をちゃんと見ておいてやらないとなぁって思って……こんな理由じゃ駄目でしたかね?」
「いえ、そんなことないですよ?……どの子ですか?」
「えっと……あ、あれです」
「へぇ、可愛らしいですね………彼女さんですか?」
「ちっ違いますよ!!ただの友達です!」
「ほんとうですか?信用出来ませんね」
えぇ……俺信用ないのか……あ、そりゃそうか、俺〆切めちゃくちゃ破ってるしな。
「さてと、ドリンク注ぐついでに翠の様子見てきます、なに飲みます?」
「ウーロン茶で」
「了解です、じゃあ……行ってきます」
さてと、翠はどこかな?と探していると、こちらを明らかに不満そうにむくれた顔で睨んでいる翠の姿があった。
「おぉ、頑張ってるみたいだな」
「ムスーン」
「いや、なに?どうした?」
「しーらない、私ほったらかして担当さんとイチャイチャしてる蓮君に教えることなんて何もないもん」
「いちゃいちゃ??いや、俺は打ち合わせをしてただけで……」
「ふんだ」
「えぇ……」
ここからは途書きを私南沢翠が少しお借りして、今日あった出来事をお教えします。
今日……。
「今日一日のみですが、よろしくお願いします」
「よろしくね、今日は一日中働いてくれたら給料弾んであげるからね!」
「はい!一生懸命頑張りますね!」
なにかが始まると分かると、私は何とも言い難い高揚感を感じていた。
……ただ、この後の事を考えると私はとてもじゃないが恵まれてるとは言い難いのだった。
「南沢さん五番テーブル!急いで!!」
「は、はい!いますぐ!」
「急げ!お客待たせんなよ!!」
「わ、わかってます!今の仕事が終わり次第行きます!」
「頼むよ!急がないとお偉いさん帰っちゃうから!」
「私頑張ります!」
その時私達はお客さん総勢百五十人を抱えており、一分一秒遅れるわけにはいかない……つまり文字通り切羽詰まった状況なのだった。
「私はできる、私は出来る私は出来る………」
「南沢さんこっちを………」
「準備もう済ませてあります!」
「えっ……もう!?」
「ならこっちの……」
「その準備……いえ、全テーブルの準備及び、セッティング全て終わってます!!」
「はやっ!もう私達ホールスタッフの仕事ないよ!?」
なんと、私南沢翠はホールでの仕事のすべてを一人でこなせるまでに進化していた……今考えても飛躍的な進化だと思う。
そして私達は全ての仕事を軽くこなしたのだった。
「終わったー!」
「お疲れさまでした、初めてなのにココまでできるなんてすごいわね!さすが、あの先生の推している生徒なだけあるなぁ……」
「えへへ……あ、休憩いいですか?」
「うん!何時間でもいいよ!給料下げたりとかしないから休んでおいで!」
この時私が蓮君のイチャイチャシーンを目撃することによって現在に至るわけだ。
×××
「全く、私が真剣に働いているときになにしてるの……」
「えっと……打ち合わせですが?」
「もう、信用性皆無だよ!」
「酷くない!?」
なんでちゃんと仕事してるのに怒られてんの俺……。
「はぁ……とりあえず、俺戻るわ、人待たせてるし」
「ふん!」
俺はなんかよくわからん理由で切れている?翠と別れて席へ戻った……。
「なんなんだあいつ……」
「どうしました?」
「いや、なんと言いますか、翠の奴俺がイチャイチャしてるとかなんとか言って怒ってやがったんですよ」
「……君、今までラブコメを書いてきたというのに、彼女の気持ちが全く分からないというのかい?」
「はい?それとこれと何の関係があるっていうんですか?」
「あぁ、彼女が起こる理由がわかったよ……」
怒る理由?全くもってさっぱりだった。
しかもラブコメが関係ある??それだとまるで、あいつが俺の事を好きみたいじゃないか?……いや、そんな事ないだろうけど……。
「あなたの事ですから気付かないのでしょうね?」
「……なんか、俺だけわかってないっていうのも気分がよくないんですけど?」
「いいんですよ、あなたはそれで、お陰で私にもチャンスがあるってことがわかりましたから」
「チャンス?」
「いえ、こちらの話です」
「うーん……あ、そういやこれ、ウーロン茶っす」
「ありがとうございます」
烏丸さんは俺からウーロン茶を受け取ると、ちゅ~っと結構な速度で飲み干した。
そして、俺に「ウーロン茶お替わりです」っと言うとさも当然のように俺をドリンクバーへと向かわせた。
「いいですか?三十分くらいかけて注いできてください」
「え?三十分?」
「いいから早く行ってください」
「は、はい!」
ドリンク何にしようかな?お茶系かな?まさかの炭酸系かな??いや……もしかするとホットドリンクかもしれない!など、小説の行稼ぎのために別にそこまで重要じゃないようなことを考えながら行くと、ドリンクバーには清掃のために来たのか、翠がいた。
「よ、よぉ……清掃かい?」
「っ!……ふん」
そっぽを向くと裏へ走って戻ってしまう翠、それを見送るかの如く見つめている俺。
多分周りからは、振られたor嫌われた……まぁ、どっちも一緒か、に見えているのだろう。
さすがにここまで来ると今日のところは引き下がるしか……あれ?烏丸さんがなんかハンドシグナルで……えっと?彼女を追いかけろ?
「いや……えぇ……」
どうしてですか?と俺が返すと、君の今後のためだ!と強気で返してくる烏丸さん。
(※ここからは会話のようにハンドシグナルが繰り広げられます、メンドクサイ方は飛ばすことをお勧めしますが、話が分からなくなっても責任はとりません)
『今後のため?』
『そうです、あなただって独りは嫌でしょう?』
『そうですね……一人じゃなにも出来ないですもんね……』
『よくわかってるじゃないですか、じゃあ、彼女がなぜあなたに怒って裏へ戻ってしまったのか……わかりますね?』
『……早退ですか?』
『あなたは一度病院に行くべきです、重病患者として迎えられるはずですから』
『えぇ……わ、分かりましたよ……行ってくればいいんでしょ?』
『病院に?』
『翠のところにだよ!!!』
っとまぁ、失礼極まりないやり取りを済ませた後に、俺は烏丸さんの監視の眼が光っているということもあり、裏にいるであろう翠の元へと急いだ。
裏はそこまで凝った作りになっておらず、一度は言ったことのある人間ならば、どこになにがあるなどと言ったことは容易に覚えることができた。
「はぁ、つっても会ったところで何を言えば………」
結論翠はロッカールームにいた。
「「あ」」
裸に大事なところを布で隠しているような感じで。
「え、えっと……ご馳走様……」
「きゃあああああああああああああああああああああああ!!」
「ご、ごめん!」
「いいから出て行って!!」
「わ、わかってるよ!ほんとごめんな!…………あれ?」
「どうしたの!」
謝罪とともに去ろうと思っていた俺はこの事態について酷く焦ってしまった。
「ドアノブ…………取れちまった……」
「うそでしょう!?ちょっとどいて!そしてこっちを絶対見ないでね!!」
「は、はい!」
その布を腰に巻き、胸を手で隠すスタイルの翠は(見てないよ?)ドアノブがあった場所をなにやらガチャガチャとしており、終いにはタックルでぶち壊そうとしている。
だが、やはり巻いている布をかばっているせいあってか、体勢が崩れて、俺の方へ倒れ込んでしまう。
「きゃっ!」
「うぉあっ!」
「いてててて……大丈夫か?翠」
「う、うん、だいじょ…う、ぶ……?」
そこでお互いに理解した。
俺が翠を支えようとしていた手は翠の胸に、翠は翠でタオルをかばう余裕も胸を隠す余裕もないのだろう……すっぽんぽんになっていた。
「いやぁぁあああああああああああああああああああ!」
「うわああああああああああああああああああああああ!」
そこからはひどかった。
まず悲鳴を聞きつけたバイト場のチーフさんから警察呼ばれそうになり、そこに何の騒ぎかと駆け付けた烏丸さんに無言でコンドームを渡され………いやほんと、あせったったらありゃしない。
「いや……ほんとすいませんした」
「もうお嫁にいけないよ……」
「あ、いや大丈夫だって!世界には傷物が好きな人だってきっといるさ!」
「それフォローになって無くない?」
「それに、ほんとに誰も貰ってくれない時には俺が貰ってやるしさ!」
「………ほんとに?」
「多分」
「多分じゃん!ぬか喜びさせないでよ!」
「これはほら!俺がこんなことしなくたってお前ならモテモテになるって意味だよ!」
「好きな人以外にモテてもなぁ……」
好きな人以外にモテても意味がない、そう言えるのは彼女がどこまでも一途に尽くす人間であることの証明となりえるだろう。
好きな人以外見ておらず、眼中にない……それは彼女に好意を寄せている者ならば残念がるであろうが、一つ考えてほしい、自分がこんなに愛されたらどう思うか?嬉しくはないだろうか?
だから、もしこんなセリフで断られたりでもしたら諦めるんじゃなくて、また燃え上がれ!同志よ!!
「好きな人でもいるのか?」
「え、あ、まぁね?」
「へぇ……」
「………」
「………」
「え?」
「え?」
「いや、それで終わり?聞きたい事ないの?」
「まぁ、特にはないな」
「あぁ……そう」
「ん?……あ、そういえば、明日から部活開始するからな?」
「わかった………」
「じゃな」
「あ、ちょっと待って」
俺は呼びとめられる声に従順に振り向いた。
「なんだい?」
「……今日の事誰にも話さないでいてあげるからさ………もう、こんなことするのは……」
「?」
「わ、私にしかしちゃダメだからね!」
「え……」
「っ!じゃあ、そういうことで!!」
そう言うと翠はさっさと行ってしまい俺は最後まであいつの気持ちを理解する事ができなかった。
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