第2話 第一話からアニメ作ると思った?……プロローグのせいで二話になっちゃったけど
五月十四日の午前十一時十五分、俺は体育の授業のためグラウンドに来ていた。
「はぁ……きちぃ」
「そう言うな蓮太よ、砲丸投げという種目は筋肉と体力が必要なんだぞ!千五百メートル走くらい普通だろう!」
「いや、俺が普通じゃないと思ってるのは砲丸投げのほうな?」
だれだよ、高校生の体育に砲丸投げという科目入れたの……。
まぁ、適度にサボってるから周りの奴よりきつい事はしてないけど。
だからまぁ、周りの奴に比べると体力、筋力の面では大きい差がある。
「ふう、休憩終了……っと…ん?」
「どうした?パンツが食い込んだりでもしたか?」
「食い込んではいるがそんなことじゃない」
「はぁ?じゃあなん……あぁ、南沢か」
南沢翠。俺の席のひとつ前の席に座る成績、運動ともにトップを走るエリート中のエリート。
言うなれば、何もかも平凡なステータスの俺とは良い意味で月とすっぽんの差があるのである。
まぁ、皆無に等しいが、共通点を挙げるとするならば。
「ねぇ、蓮君、昨日の新妻さんいらっしゃい見た?」
「見たぞ、あれすごかったよな!二組ともハワイ旅行当ててったもんな!」
「ふふーん!実はね、昨日のは私も当てることができたよ!」
「まじで!?すごくないか!?」
朝に同じ内容が放送されていたというのはまた別の話。
とまぁ、この俺九条蓮太と才色兼備の美少女南沢翠の共通点といえば、『新妻さんいらっしゃい』という番組を長年愛し、温かい目で見守ってきたということくらいだろう。
ここで一つ主人公であるこの俺九条蓮太の説明をしておこう。
平成二十九年十二月十日生まれの……何座かは忘れた。
血液型はО型であり、周りからは「お前ってО型にしては恨み方ねちねちしてるしおおらかじゃないよな」といわれる……正直余計なお世話だと思う。ちなみに言うと俺も宮崎と同じくライトノベル作家という自営業を営んでいるので、趣味は執筆作業とでも言っておこう。
家族構成は父(単身赴任中)母、姉、妹、奈落丸(妹が犬につけた名前)の計六人家族である……なんというか、お父さんが単身赴任してから家出の女子率が上がり、居心地がすごく悪い。
まぁ、俺の自己紹介で行数稼ぐのもあれなので、最後に一つ言わせてもらうと「十一歳の誕生日から親が俺の誕生日を忘れていて、祝ってもらっていない」と言わせてもらおう。
「あ、そうだ!なぁ、南沢?」
「……」
「南沢?」
「……」
沈黙しながらこちらをチラッチラッと見つめてくる南沢は俺に何かを訴えているようだった。
……あぁ、そうかそういうことか。
慣れてないからほんと無視されたかと思った。
「……」
じーっとこちらを覗きこんでくる南沢、これは多分もうそろそろ腹を括った方がいいのだろう。
「え、えっと……つ、翠(つばさ)?」
俺が名前で呼ぶとニコッと満面の笑みを浮かべて俺の方へと顔を近づけた。
「やっと名前で呼んでくれたね!うれしいよ」
「ん?なんでだ?」
「っ、鈍感……」
土管?マリオでもしたいのだろうか?
まぁ、少し不機嫌そうな理由は分かんないが、俺には一つだけわかることがあった。
それは、今翠がとても……。
「ごめんな、気持ちに気付けなくて……」
「わかってくれたの!?」
「あぁ、明日は必ず3DS持ってくるから!」
マリオがしたいということだろう。
「ごめんな…俺、気持ちに気付けなくて」
「っ!分かってくれたの?」
「あぁ、明日は必ず3DS持ってくるからな!」
「解ってないじゃんっ!」
「ゲームソフトの方は持ってきてるんだけどな」
「なんでそっちだけ持ってきてるのかすごい気になる!?」
えぇ…なんで俺怒られてるの?
まぁ、なんというかあれだな……女の子というのはミステリーだな。
「え?アニメを作るの?」
俺はとりあえず落ち着けた(一回殴られて)翠にアニメ制作が企画されたことの一部始終を話した。メンバーとして勧誘しようと思ったからだ。
「宮崎ちゃんが企画したんだっけ?」
「あぁ、俺も忙しいってのに……」
「あはは……それでも参加してあげてるのは宮崎ちゃんの企画を成功させてあげたいからなんだよね?相変わらず優しいよね」
「なわけあるか、仕方なくだ、参加しないと何されるかわかったもんじゃない」
宮崎は俺に対してはとてつもなく容赦なく、この間なんて………。
「えっ、セックスの描写?」
「そうなの……ほら、昨日教室で見せたのにも少しあったでしょ?あれの書き方がよくわからなくて……」
宮崎いろは……こいつは日頃多くの作品を手がけているのだが、その多くがサービスシーンのえっちが全くないのでそういったシーンが苦手なのだという。
「まぁ、俺の口から直接的に伝えるわけにはいかないが、そういうことがしっかり隅から隅までわかるサイトを教えてやる」
「ほんと!?ありがとう!さっそく送ってよ!」
「それで?ちゃんと教えなかったからとかで怒ってるとかなの?」
「いや……その……」
「AVのサイトを教えた!?そりゃ怒るよ!」
「いやまだ俺何も言ってない」
こいつ分かったうえで言いやがったのか。
「とにかく俺はその際に彫刻刀を頭部にぶっ刺されたので俺はこうして要件を飲んであげてるわけだ」
「彫刻刀っ!!?大丈夫だったの?」
「あぁ、小一時間ほど血が止まらなかったけどな」
ほんと見事なくらいに血の噴水が教室を彩っていた。
なんか先生も「アロンアルファくっつけとけば治るんじゃね?」とかふざけたこと抜かしてやがったし。
「た、大変だったね」
「そう思うんなら制作グループに入ってくれ……そして俺の癒しになってくれ」
「わ、私癒しになれるの?」
「もちろん」
こいつが入ってくれりゃあいつも少しは躊躇してくれるかもだしな……。
それ以外の理由はないよ……いや、ほんとだよ?
その後まぁ、なんやかんやあったが、とりあえず放課後。
俺と翠はいつも通っているファミレスへ立ち寄っていた。
「本当にいいの?」
「あぁ、仲間になってくれたんだ…ここは奢らせてくれ」
「ほんと?ならここは甘えさせて貰おうかな!」
そう言って俺の隣に座った翠はニコニコとしながらこちらを見つめている。
そして俺がこほんとひとつ咳をすると顔を赤らめて目の前の席へと移動した。
「ご、ごめんね!いつもの癖で……」
「メインヒロインかお前は」
「えっ?」
「い、いや、何でもない」
「う、うん、ライトノベル用語ってやつかな?」
「いや、無知っぽい言い方してるけど、お前『とらドラ!』とか結構読むだろ」
「うん、まぁ、最近は『りゅうおうのおしごと!』とかも読んでるよ」
「ならもう二度と無知みたいな態度はとるなよ?ちなみに……『最弱こそ最強のステ振りが可能な学園異能モノ』……は?」
「それは本気で見たことないよ」
ちょっとは無知っぽい仕草でも見せてくれよ……割と本気で少しだけだいぶ傷付くんだからな?俺のピュアハートをなめるなよ?この歳で未だに仮面ライダーを就職先として本気で考えてるんだぞ?……そろそろ誰か突っ込めよ……。
「うそうそ!天羽先生の作品だよね?」
「あぁ、昔の俺のペンネームな」
「知ってるよぉ、だって名付け親宮崎ちゃんでしょ?」
「お前…絶対宮崎が関係ないと知る由もなかったって感じだろ……」
こいつはいつもそうだ……まぁ、もういちいち回想には突入しないけど。
「っと、話しがずれたな、今日呼んだのは奢るだけが理由じゃないんだ」
「え?日頃の感謝もこめて彩炉に連れてってくれるの!?」
「いやまだ何も言ってないけど?」
「私つぼカルビがいいな!」
「いや、俺の話勝手に遮っておいて自分の話進めるとか図々しすぎるだろ!お前前半までのヒロインらしさ何処やった!?」
「えへへ、冗談だよ?」
「ほんとかよ……」
前半までとの比較は半端ないぞ……お前さっきまでツッコミしてたのに、いきなり化けの皮が剥がれたぞ。
「ま、まぁ、いい……呼んだ理由だがな?」
「ん」
「ここでバイトしてくれないか?」
「ん……ん?」
「バイトしてくれないか?」
「いや……え?」
「ここでバイトを……」
「いや、そうじゃなくてね!?」
「?」
「理由をきかせてくれないかなぁぁぁぁぁぁ!!?」
翠は今までのテンション最大値をふっ切る音量の叫びをファミレスに響かせた。
「なんで私がここで働く事になってるのか理由を聞かせてよ……」
「金がない、以上」
「簡潔かつスピーディーに説明してくれてありがとう全然理解できなかったけど」
「はぁ、せっかく一行使って説明してやったのに」
「私に説明するために割く一行すらも用意出来とらんのか!」
「……なぁ、お前……」
「なーに?」
にこっと笑っちゃいるが、確かな怒りがこもっている……キャラ崩壊したなって言おうと思ってたけどやめとこ。
すると、翠はまじめな顔で俺に向き直り言った。
「バイト……してもいいよ?」
「まじで!?なんで!?」
「だめもとで頼んでたの?」
「まぁ、一緒にやらないかとか言っておきながら、なんの準備もできてないどころかその準備を手伝えって言ってるわけだからな……文句を言われ……断られても文句は言えないとは思ってたけど」
「別にそこまで思わなくていいのに………頼みをきいてあげてるのは……蓮君のことが……」
「え?なんだって?」
「な、なんでもなーいっ!」
「そうか?」
今日の翠はなんだかいつもより変だな?いつもより声がでかい時と小さい時の違いがはっきりしてるっていうか……んー、内容がよくわからないから上手く言えないけど。
ここらでなぜ印税やらなんやらで金を持っているはずの俺や宮崎ゲームを売り出してすごく稼ぐようになった小岩井先輩がいるのになぜわざわざバイトをしなくちゃいけないのか途いう事について説明しておこう。
俺の通う翔海高校は、部活動について特に決まりのない結構ゆるい感じの学校だ。
それは作る際も一緒で、書類一枚を書き上げれば、高校生の誰もが夢見たであろう『電子遊戯部』や『奉仕部』、『ツインテール部』に『魔法研究会』などといった夢あふれる部活を生み出すことが可能だ。(ちなみにこの間俺の知り合いは、おっぱい研究会などというけしからん部活を作り出した者がいる)。
だが、そんな自由なものであれ、学校の許可を取る上で必ず確認されるものがあった。部費である。
うちの学校では功績に応じて部費が上がる制度とは別に学校貢献度によって部費が増えたり、場合によってはなんらかの報酬が貰えたりするのだ。
一見どこにでもあるような部費の概要のようだが………俺達の場合少しだけ通常版とは異なっていた。
「学校がいつもお世話になっているファミレスがピンチらしいんだ」
そう、なんの前触れもなく言われた俺達は巻き込まれまいと関わらないように何を言われようが無視をしていた………のだが、結果巻き込まれてしまったのだ。
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