50 オムレツの中はやわらかい方がおいしいのか?

 ここで白状するのですが、「オムレツを作るためにはまず卵を割らなくてはならない。」は50回で終わらせるつもりでいました。


 何度か書いていますが、エッセイはあくまで無名の僕が小説を掲載していく時に、どんな人間が書いているかを知ってもらう為のツールとして始めました。50個くらい書けば、流石にどういう人間か分かるだろう、というのが最初の目論みでした。

 けれど、実際にエッセイを書いていくと、小説を掲載するのとはまた違った楽しさが出てきました。

 例えるなら、深夜ラジオのパーソナリティーがフリートークをするようなものでした。一週間であったことや考えたことを発表できる場所というのは、思いのほか僕の生活を豊かにしてくれました。


 ただ、僕が書いているのは本当にエッセイなのか? 実は評論というカテゴリーの方が適切なのではないか? という疑問はあるのですが、何にしても今このエッセイの場が僕とって必要なのは確かでした。

 と言う訳で、僕は「オムレツを作るためにはまず卵を割らなくてはならない。」をひとまず終わらせて、新しいエッセイを作ろうと考えていました。理由は単純です。今、「① まず卵を割ります。」などを読むと下手すぎて手で顔を覆いたくなるからです。


 なんですけれども、有難いことに今結構な人が「オムレツを作るためには~」を読んでくださっているんですよね。

 色んな要因があってのことだと思うんですが、一つ確信していることがあります。これは僕の実力だと思っていません。情けない話ですが。

 なので、今のタイトルでもう少し続けようと考えました。僕の座右の銘は「継続は力なり」なので。とりあえず目指せ100で行きます。


 で、ですね。

 実は新しいエッセイを立ち上げるにあたって、新タイトルだけは決めていました。今回せっかくなので、それを紹介したいと思います。


「オムレツの中はやわらかい方がおいしいのか?」


 です。

 はい、オムレツ繋がりで行きました!

 今の「オムレツを作るためには~」は村上春樹のエッセイから拝借したものでした。

 なので、同じように作家のエッセイなどから拝借できるものはないか? と僕は日々本を読んでいました。


 結果、橋本治の「デビッド100コラム」というエッセイ集の中で「中がやわらかいオムレツは本当においしいのか?」を見つけました。

「中がやわらかい~」だとまんまだし、「オムレツ」という単語が見つけにくいと思い、「オムレツの中はやわらかい方がおいしいのか?」にしました。キャッチコピーは「お腹が減ってきた。」かな? と考えていました。


 おそらく100を超えてもエッセイを続ける場合は、こちらの新しいバージョンに移るかも知れません。その時がきましたら、お伝えしますが、よろしくお願いいたします。 

 ちなみに、橋本治のエッセイ「中がやわらかいオムレツは本当においしいのか?」なのですが、素晴しい内容なんです。

 一部抜粋させてください。


 ――食べ物っていうのは、なんだかんだ言いたがる人間の口を封じさせるような野蛮なところがないと、絶対においしくないと思う。


 これを読んだ時「なるほど!」と膝を叩きました。

 小説や映画、それこそ料理に関しても、レビューやツイッターという形で言語化される現代においては、「言葉を封じさせる」ものの方が良い、と言う。


 まぁ現代に読んでいるのは僕で、この橋本治「デビッド100コラム」の初版は1991年2月25日ですので、今から28年前となります。ついでに言えば、僕の生年月日は1991年2月15日です。10日後に出版された本なんですね。

 28年前と今じゃあ、まったく状況は違うので完全に鵜呑みをするのは危険です。が、個人的に橋本治の考えに同意します。


 橋本治はオムレツに対して、「人間の口を封じさせるような野蛮なところがないと、絶対においしくない」と言います。

 それは小説も、映画もそうだと僕は勝手に思います。

「なんだかんだ言いたがる人間の口を封じさせる」作品は、絶対におもしろい。

 それでも「なんだかんだ」言う(言おうとする)のが現代だ、と言う気もしますが。また、それは別の話で書きます。

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