時刻は十時三十分。太陽が本格的に地面を照り付け始め、気温もかなり上がってきた。この気温からして今は七月か八月といったところだろう。この世界に季節があるのかはわからないが。


「ぜぇ……はぁ……うっぷ」


 考えが浅はかだった。まだつかないのか広場、と息を切らしながら愚痴を零す八号。数分ほど走ったと思う。否、その記憶すら曖昧。もはや立ってることすらままならず、尻餅をついて深呼吸をする。しかし周囲の空気も暑いため、結果的に熱風を吸い込んでは咽るという行為を繰り返した。


 ――ちゃんと長さは測った。広場から端まで一キロ。確かに遠いといえば遠いが、高校で走ったときはもっと……。


「あれ? その――」

「あんたどこかで見たことあるような顔してるわね」

「何で……て、うおっ!?」


 顔を上げると、目の前に女性が立っていた。歳は八号と同じくらい。切りそろえられた前髪に、高めの位置にあるポニーテールが風に揺れる。服装は八号と全く同じ体操服。そして、これまた全く同じヘッドフォン。


「あのー、どちらさまでしょうか」

「何で分かったかって? 勘よ、勘」


 ――この女、人の話を全く聞いてねえ。


 八号は潔く諦め、暫く目の前の女に付き合ってやることにした。

大きな目、艶やかな唇。透き通るような柔肌に、漆のような黒髪が似合う。


「……ちょっと。あなた、話聞いてる?」

「うん」


 ――こいつ、改めて見るとかなり美人じゃあないか。だが胸は小さ……い、一号?


 目の前の女性の服の胸元には『一号』の文字。


「ちょっ、どこまじまじと見てんのよ!」

「うん」


 何か言っているけど後でいいか。そういえば、俺の胸の部分にも八号って書いてあったよな。そう思い、自らの胸元に目をやる八号。


「ひっ、男のあなたと比べないでよ! 最低!!」

「うん………………え?」


 気にしてるんだから、と叫ぶ声がして何のことかと思い前を向いたら、目の前には拳があった。


「ま、待て! 何か大きな齟齬が、はふん」


 視界が傾いだ。今どきの女子ってグーで殴るのか。地面へと倒れこむ中、八号はそんなことを考えていた。


「もう知らないっ!」


 一号は甲高い叫び声をあげると、カモシカのように颯爽と駆けていった。一方八号はぐったりと地面に横たわり、ただただ落ち込んでいた。


「嫌われた……よな? はは、会っていきなり嫌われるとか。神様も酷いぜ」


 神様のせいだ。俺は悪くねえ。そう自分に言い聞かせ、痛む頭を無理やり起こし広場へと歩を進めた。


「やっぱラノベのように上手くはいかないよなあ」






***






 それから少し歩くと広場、というよりその外壁がはっきりと見えてきた。外から見ると何かのスタジアムのように見える。


「一号、嵐のような人だったな」


 先程の会話を思い出し、呟く八号。お互いの自己紹介すらしていないのに、何故か嫌われてしまった。現実は非情である。それは分かっているのに期待してしまうのが男子高校生という生き物だ。


「ま、まあ、初めて会った人が可愛い子でよかった、よな」


 一号の顔を思い浮かべようとしたが、顔より先に拳が出てきた。


 ――あまり暴力的な人は好きではないが、可愛いから許すとしよう。

 ――って、許されてないのは俺なんだけどな。


 とほほ、と一息。

 などと考えているうちに、いつの間にか壁の真下まで来ていた。多少のいざこざはあったものの無事に広場の入り口に辿り着くことができ、八号はひとまず胸を撫でおろす。

 そして一呼吸置き、気持ちを切り替えて入り口の陰から中を覗く。何もない広場の中心に九人の男女が立っていた。全員が八号と全く同じように黒いヘッドフォンをつけ、体操服を着ている。番号までは肉眼では確認できないが、そこには件の一号らしき人も見受けられた。


「ぐぬぬ、一号と会うのが気まずい」


 当然である。八号に自覚はないが、つい先ほど、彼女をとても怒らせてしまったのだから。

 八号が広場へ入るタイミングを窺っていると、一人が手を挙げてこちらを見ていることに気が付いた。


「あ、八号さんいました。こっちですー!」


 若い女性の声。もう、行くしかなくなった。

 八号が渋々皆の近くまで行くと、声をかけてくれた女性――胸に『三号』と書かれている――ではなく五十代半ばと思われる男性が話しかけてきた。

 なんだよお前かよ、という本音を殺し、笑顔で会釈をする。


「あなたが八号さんですね。よかった、これで全員集まりました」


 ――聞き覚えのある声だ。この人は確か……。


「あなたは、五号さんでしたっけ?」

「ええ、いかにも」


 五号。白髪混じりの短髪。黒縁の四角い眼鏡。髭は短く整えられており、笑った時に現れる目尻の皴は年に合わない清々しさを醸し出していた。


「それにしても不思議ですよね、なぜあなただけが違う場所から始まったのか。他の全員は初めからここに居たのに……」

「そうなんですか!? 俺も最初はここに居ましたけど、その時は誰もいませんでしたよ」

「おや、これは不思議ですね。あなただけ先にここに来ていたと。……何か知っているのでは?」


 探るような目で八号を見つめ、眉間に皴を寄せる五号。


 ――もしかして俺、疑われてる?


「い、いや、それが何も知らないどころか、記憶も曖昧でして……それより、これで全員なんですか?」


 話を逸らす目的で投げかけられた八号のその場しのぎの問いに対して。


「はい」


 五号は断定するような口調で言った。八号はその反応に違和感を覚える。


 ――確かに、一号から十号までがここにいる。だが逆に、なんで十号までしかいないと決めつけられるんだ?


「何故これで全員だとわかるんだって顔してますね」

「え? は、はい」


 意外にも五号の方から尋ねてきた。呆気にとられる八号。


「ヘッドフォンですよ。このヘッドフォン、横のふたを外すと中にボタンが付いているんです」


 五号に促され、手探りでヘッドフォンに手をかけると、何の抵抗も無くすんなりと開いた。


 ――そんな、さっきは開かなかったはず。


 思わず目を丸くする八号。その表情の変化に気づいた五号は優しく声をかける。


「驚くのも無理はないですよ。そもそもヘッドフォンを開けようなんて誰も思いませんから」


 ――違う、俺が驚いているのはそこじゃあない。


「いや、つける前に試した時は開かなかったんですよ」

「つける前? 八号さん、いくらなんでもその嘘はバレバレですよ。私たちは全員初めからヘッドフォンをつけてましたから」

「え……でも、そんなはずは……」

「ここまで来るとさすがの私も疑わざるを得ませんねえ。ふふふふ……」

「なんでそんなに楽しそうな顔してるんですか!?」


 なんとなく絡みにくい。八号は五号とは深く関わらないと決めた。


「ああ、話がそれましたね。このヘッドフォン、ボタンが十個あるんです。そしてこれは、通信用。先程の放送はこのボタンのうち、八号のところを押して話しました」


 五号が自分のヘッドフォンに付いている『八』と書かれた突起を指さす。


 ――つまり、たまたまヘッドフォンを開いたらそこにボタンが十個あって、押してみたら通信ができた。だからこのボタンは通信用で、ここにいるのは十人と考えた――ってところか。


「そんな推理、無理やり過ぎます。それに、通信用だとするならボタンは九個のはずでしょう」

「あはは、確かにそうかもしれませんね」


 ごまかされた。五号が何か隠しているのは確かだが、今の八号にそれを知る術は無かった。

 そして五号は微かな笑いを残し、他の人たちのもとへ行ってしまった。どうせならボタンについて詳しく知っておきたかったな、とも思ったが、見ず知らずの人とマンツーマンで電話するのは気が引けるしいいや、と自己解決。


 ――べ、別に、コミュ障なんかじゃないんだからねっ!


 そんな虚しい心の声は心の声故に当然ツッコミなど返ってはこない。強いて言うならばノイズ音が聴こえるくらいだ。


「ん?ノイズ音?」


 キイイイイイン。


「う、ま、またか」


 二度目の轟音。しかし先程の件で慣れたせいか、それほど苦にはならなかった。誰かが自分に通信してきたと思い周りを見渡すが、誰一人そのような素振りをしていない。それどころか皆、耳を抑えて蹲っている。


「そうか、他の人達はこれが初めてなのか。いや、それより全員が受信しているということは、これは……一斉送信?」

≪はい、おっしゃる通りです、八号さん≫


 ヘッドフォンから流れてきたのは、どこかで聞いたことのある男性の声。思い出そうとすると頭が痛んだ。


≪ああ、私のことを思い出そうとしても無駄ですよ。このゲームに参加した時点であなた方の記憶の一部は消させていただきました≫

「な、今なんて……」


 驚愕。自分が今まで疑問に思っていたことを、この男は自分がやったとあっさり言ったのである。文字通り、開いた口が塞がらない八号。


 ――人の記憶を故意に狙って消すことなんか可能なのか。


≪ひとまず正面の壁にご注目ください≫


 言われた通り正面の壁を見ると、鬼の仮面を被った男性がプロジェクションマッピングのように映し出されていた。


「なまはげ……?」

「なまはげだ」

「なまはげよね」

「うん、絶対なまはげ」


 何やらぼそぼそと呟く声が聞こえる。耳を澄まして聞くと、どうやら皆口々に「なまはげ」と言っているようだった。


 ――そう言われるとなまはげにしか見えなくなってくる。頼むから止めてくれ。


≪私はなまはげではなく……そうですね、ディーラーとでも名乗っておきましょうか≫


 ――何故ディーラーなのかも気になるが、それ以前に。


「あの、このゲームって何ですか?」


 八号は壁に映る男に問いかける。さきほどからこちらの言葉を聞き取っていることからもわかるが、この映像はリアルタイムで放送されている。つまり今現在、八号たちはディーラーの監視下にあり、ディーラーは八号たちと現実世界を繋ぐカギだということだ。


≪ええ、ではまずこのゲームについて説明したいと思います。あなた方がここにいる理由は実験の被験者に選ばれたからです。あなた方にはこれから十人でサバイバルを行ってもらいます。ルールに関してはご覧のとおりです≫


 ディーラーの言葉と共に壁に映し出された画面が切り替わった。

 真白い背景に「ゲーム」という黒い文字が不規則にぶれ、その直後。以下の文章がゆっくりと現れた。




 一、サバイバルにルールは無い。

 一、サバイバルの目的は生き残ること。

 一、この街にあるものは全て使ってよい。

 一、戦闘不能になったり、ヘッドフォンが壊れたりしたら脱落。

 一、生存者が一人になった時点でディーラーは再び現れる。

 一、最後まで生き残り、ゲームに勝利した人は、現実の世界へ戻る権利を得る。

 一、本日の正午までは一切の殺傷行為を禁止する。

 一、ディーラーの言葉は全て真実。




≪ゲームについては以上です。と、言いたいところですが……≫


 再度画面が切り替わり、今度は赤い「ヒント」の文字が浮かび上がった。


≪流石にこの説明では納得していただけないでしょう。ですから、このフィールドに攻略のヒントを隠しておきました。ヒントの場所は自分で探してくださいね。それと、最大のヒントはあくまでコンパスのようなものであってマップのようなものではありませんからご注意を≫


 ディーラーの言葉に呼応するように地図の絵が映し出され、その上に大きくバツ印が書かれたかと思うと、今度はコンパスが現れた。


 ――最大の、と言ったってことはヒントは複数あるわけか。


≪と、これくらいですかね。ああ、忘れていました。あなた方にはそれぞれ特別な能力が付与されています。個々人の能力はこの場で言うことはできませんが既にお察しの通り、各々、体の一部が強化されています≫


 ――つまり能力は既に付与されていると。


「ちょっと待ってください! 私の体は変化が感じられないんですけど!」


 ディーラーの言葉に七号が上擦った声で叫んだ。

 七号。年齢は三十代前半。やや茶色がかった髪を低い位置で一つに束ねている。健康的で包容力のあるその容姿は、彼女が主婦である証拠だ。


≪自分の能力くらい自分で見つけ出してください。これはサバイバルですよ?≫


 ディーラーは、それを切り捨てるように言い放つ。自分の力で生き残るのがサバイバル、それができない人に生きる価値など無いということだ。一気に場が静まる。そして数秒置いてから重い静寂を打ち破ったのは先のおじさん、五号だった。


「あの、いくつか質問をしてもよろしいですか?」


 その声に、壁に映るディーラーが五号を見据えた。


≪……いいでしょう。それでは、三人のみ質問を受け付けます≫


 ――三人? 何故人数を指定する。質問を限定するのなら三つのみと言ったほうが有効じゃないか……? いや、これは……。


 しかし八号の思考など介入させる暇もなく問答は進んでいく。


「では……。あなたが穿いているパンツの色を教えてください」


 五号は至って真面目な顔で、そう問うた。


≪はっはっは。今日は赤ですよ≫


 ――は?


 一瞬の間をおいて場が騒然とし始めた。真面目に引く者、頬を赤らめる者。だが皆、こんなキモいおっさん生理的に受け付けないという顔をしていた。というかもはや口走っていた。


「そんなこと今はどうでもいいだろ!!」


 後ろにいた六号が野次を飛ばす。

 六号。二十代前半と思われる容姿。肩までかかる金髪ストレート、ピアス、彫の深い顔、日焼けした肌などなど。六号を構成しているもの全てが『海のイケイケお兄さん』という、八号とは縁遠い人物像を表していた。


 ――違う。この質問で大切なのは内容ではない。そもそもディーラーは何故質問の数ではなく人数を指定したのか。

 ――それは、これが椅子取りゲームだからだ。


 十人のうちの三人に入ることができれば質問をする権利を得られる。あとは質問の数は指定されていないため好きなだけ聞けばいい。

 全く、くだらないことを考える、とつくづく思うが、声には出さない。


 ――こんな子供だましのような言葉、真面目に考えてしまった俺が馬鹿みたいじゃないか。でも、どうしてディーラーはこんな回りくどいことをするんだ?まあいい。とりあえず俺も流れに乗っておかないと。


「えーと、じゃあ……」


 ――今の気温は何度ですか、とでも聞いておこ――


「皆さん聞いてくださーい。これは椅子取りゲームなんです」


 声の主は十号。こちらは六号とは打って変わって、丸い銀縁眼鏡に清潔感あふれる真っ黒な短髪は『堅物優等生』というキャラを具現化したものだった。


「な……お前、何で……?」


 八号は十号の意図がくみ取れず困惑し、その感情がそのまま喉を通って口から漏れ出た。十号は今、これは椅子取りゲームだと言った。つまりそのことに気づいている上であえて皆に知らせたということだ。


 ――何が目的だ? 知らせない方が本人にとって絶対に得であるはず……なのに、なぜ……?


「初めの三人に入ればいくらでも好きなように質問できます。さあさあ皆さん、残りの椅子は二つですよー」


 その場にいた全員に対して、あえて大げさに、煽るように呼び掛ける十号。


「お、おいどうすんだよ」

「やだ早くしないと」


 十号の声が引き金となり、皆が焦燥感にかられる。あのように煽ったら皆が焦るのは必然。このままだと暴挙に発展しかねない。


「お、おい! 皆聞いてくれ!」


 八号はとりあえず大声を出して皆の気を引いてみた。

 八号の声が聞こえたのか、場が一瞬にして静まり返り、皆の視線が一気に八号に向いた。


 ――やっべえ、どうすんだよ俺。聞いてくれとか言ったけど、話すことなんかないよ!?

 ――考えろ、考えろ、考えろ……。


 精神を、頭脳を、感覚を一つに集中させる。意識を自分の最深部まで沈ませると、一秒が数時間のように感じた。火事場の馬鹿力というやつだろう。

 そうやって思考してみたものの、最善であると考えた結論は欠点だらけだった。


「きょ、協力するべきだと思うんだ」


 自信なさげに、弱々しく紡がれたその一言。もちろん、異論反論が出ることは八号も予測していたが、


「ぷっはははは。協力? ふざけんじゃねえ! どうせそうやって自分だけ助かろうってんだろ?」


 早速、海のイケイケお兄さん――六号が八号の提案にいちゃもんをつけてきた。見た目からして八号の苦手なタイプである。加えて先程からの六号の言動は、八号を苛つかせるには充分過ぎた。


「んなわけねえだろ! 大体お前はさっきから――」


 そこで思い留まる。待て、落ち着こう。ここで争っても何もいいことがない、と自らの血が上った頭に言い聞かせ、深呼吸。そして一旦周りを見る八号。他の人は八号たちを止める気など無いのか、顔をそらして視線を泳がせていた。


 ――まあ、ここで助けようって気には中々ならないよな。


「あの……私も、協力するってことには賛成、です……」


 突然発せられたその気弱な一言に、皆の視線が移動した。その先にいるのは三号だった。

 三号。八号より少し年下の、女性というよりは女の子という言葉が当てはまる年齢の少女。流れるような亜麻色の髪は肩上で切りそろえられ、その毛先は緩やかな曲線を描いている。大きな瞳に小さな鼻と口はまるで人形のようだった。

 突然の、思わぬところからの助け舟に八号は安堵する。


「そ、そうですよね! だから……」

「いや、八号さん。一つ見落としているところがあります」


 今度は堅物優等生くん――十号の冷静な声。誰かから指摘されることは八号も薄々感づいていた。しかし、どうしても認めたくなかったのだ。


「このゲーム、生き残れるのは一人ですよ?」


 十号は冷徹に言い放った。そこにはさもそれが当然だとでもいうような自信と落ち着きがあった。

 最後まで生き残る。それがこのゲームの最終的な目標であり、八号たちが日常に戻るためにやらなければならないこと。一人だけ生き残るということはつまり、ここにいる十人で殺しあうということ。それを理解した途端、皆の表情が雲った。


 ――こいつ、皆で殺しあうってわかってて言ってやがる。どんな神経してんだ。


 しばらくの静寂。


≪時間の関係上、質問を受け付けるのは終了します≫


 それを打ち破ったのはディーラーだった。八号たちへの配慮か事務的な事情かはわからないが、おかげで重苦しい空気ではなくなった。八号たちはただ、問題を先送りにしているだけなのだが。


≪では、サバイバルを始めたいと思います。開始は一時間後の正午です。それまでは準備期間としますので、自由に行動してください。ただし、他人を傷つける行為は禁止いたします≫


 その言葉を機にサバイバルに向けての準備が始まった。否、始まるはずだった。

 ディーラーが解散を宣言してからも、しばらくの間は皆俯いたまま動こうとしなかった。まだ現状を把握できていないのだろう。八号は今後の方針が固まり今すぐにでも出発したかったが、さすがにこの状況で立ち上がるのは気まずいと思い、皆に合わせて座っていた。


 ――もしかして、他の人も俺と同じなのかも。


 非常に日本人らしい。






***






 あれから、二十分ほどが経過した。八号が、そろそろ動かないと時間が無くなる、という焦燥感を募らせつつ何気なく辺りを見ると、全員が俯いて黙り込んでいる――何か考えているのかもしれないが――中、件の六号さえも頬杖をついたまま動かない様子だった。


「さすがにあいつも暗くなるか、そりゃあ人間だし――」

「zzzzzzzz」

「寝てる!?」


 ――いやいや、どんだけ楽観的なんだよ!? この状況で普通寝るか!?


 なんだよこのマンガ的展開は。誰も期待してねえよ、と八号が思った矢先、六号は目を覚ました。


「んんんんっと。さて、そろそろ行くか」


 六号は大きく伸びをすると、何事も無かったかのように立ち上がった。一同唖然である。皆、状況が理解できずに、文字通り開いた口がふさがらなかった。


「んだよ! じろじろ見てんじゃねよ!」


 周囲の視線に気づいたのか、六号が叫ぶ。だがそこに先程の勢いなどあろうはずがなく、それどころか所々で失笑が漏れる始末。六号は、てめえら後でぶっ殺してやるからな! とだけ言って、どこかへ行ってしまった。たった今起こった六号の件で気が軽くなった、あるいは誰かが動き出すのを待っていた八号たちは、続々と広場を後にした。




―――――――――――――――――――――――――――――————————




登場人物誰が何号かまったくわからなくなるのでその回までにわかったことまとめときます


一号

性別:女

人物:JK。ポニテ。よくいるヒロイン的性格。


二号


三号

性別:女


四号


五号

性別:男

人物:メガネおじさん。優しそう。五十代。


六号

性別:男

人物:パツキン。パリピ。喧嘩好きそう。二十代。


七号

性別:女

人物:お母さん的な。三十代。茶髪。おっとり。


八号

性別:男

人物:主人公。童顔。童貞。高校生。


九号


十号

性別:男

人物:メガネくん。大学生。優等生って感じ。

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