3
八号はその後、北の大通りを進んでいた。北を選んだ理由は、一度来たことがあり、他の場所よりは土地勘があると判断したからだ。そんな八号は、住宅街を迷うことなく歩きながら、あることを考えていた。
「さて、サバイバルったって何すればいいんだろう」
広場から北方面に出発して、しばらく経って浮かんで来た根源的な疑問。このご時世、サバイバル生活をしたことがある人間の方が稀だろう。しかし、未経験とはいえ生死が懸かっているとなれば全力を尽くすしかない。
――ゲーム開始まではまだ時間あるし、本屋に行って資料でも探すか。
本屋の位置は街を散策している時に覚えたため、八号は迷わずに向かうことができた。広場から出てすぐの所に何人かの人がいたが、どの人も注意深く辺りを見回しながらゆっくりと歩いていたのを覚えている。
――あの調子じゃあゲーム開始までにろくな準備も出来ないよな。
黒縁眼鏡のおじさん――五号が言っていたことが本当ならば、八号以外の人たちは今初めて街を見ていることになる。ゲーム開始までの一時間という限られた時間の中、初見の地で準備を整えるのはさぞ大変なことだろう。
「にしてもこのゲーム、チュートリアルなしでいきなりハードモードじゃないか。ほんと場所がわかっていると有利だな。お、ここだ」
本屋は、北の端からおよそ三百メートルの場所にある商店街――大通りから西側の脇道にやや入ったところにある――の一角に位置する。大通りの長さが一キロメートルなので、広場から数えると七百メートルといったところだ。
そして今、八号の目の前には本屋の自動ドア。その上にある店のロゴが入った看板は、今にも崩れ落ちそうなほど酸化してぼろぼろになっている。
「ここで看板が落ちてきて頭に当たるってのがマンガ的展開だよな」
ドアの前で一旦立ち止まり、不安要素がないかよく観察する。
――予め確認を行うことで困難を回避する。転ばぬ先にフラグをへし折っておくのが俺流だぜ。
「さて、入るか」
気を取りなおし、本屋へと足を進める八号。確認の通り看板は落ちてこず、目の前にある本屋の自動ドア……は、しかし自動では開かなかった。
「ふがっ……」
思いっきりガラスにぶち当たる八号。鼻が潰れて変な声が漏れる。
考えてみれば至極当然なことなのだが、今この街には八号を含めた十人しかいないわけで、もちろん店を管理する店員などいるはずがない。
八号は即座に動作を停止する。この後に何を言ってもどう動いても恥をかくとわかっていたからだ。だが八号はたった一つミスを犯した。この格好が既に恥ずかしいということだ。八号は首だけを回転させ、周りの様子を窺った。
――よし、誰もいない。
神様も鬼畜ではないらしい。周りに誰もいなかったのがせめてもの救いだ。
「これはフラグじゃないからな?」
誰に言うわけでもなく言い残し、八号は本屋の自動、もとい手動ドアを無理やりこじ開け、中に入った。
この商店街には、八百屋や魚屋などの生鮮食品売り場などに加え、薬局や古風な武器屋に至るまで、日々の生活がこの商店街だけで完結するというくらい色々な店が軒を連ねていた。
「この本屋を出たら武器屋に行ってみよう」
来る途中に覗いて確認した時点で、中に日本刀などの武器が多数置いてあったのが窺えた。武器屋とは何なのか。893顔負けの品揃えである。
「ま、とりあえずは情報だよな。サバイバルのやり方とかないかな」
――あるわけないよな。
「って、これ街の地図じゃないか」
店内を適当に散策していた八号。ふと視線を落とすと足元に街の地図が置いてあることに気づいた。
「ラッキー」
それを掴もうとした時、ディーラーの言葉が八号の頭を過った。
『――それと、ヒントはあくまでコンパスのようなものであってマップのようもなものではありませんからご注意を』
「マップってのはこれのことか?」
ぎりぎりのところで踏みとどまった。その距離僅かに二センチ。
「ヒントがマップではないってだけでマップが危険なわけじゃあないとは思うけど、一応こいつは止めておこう」
――もしかしたら触れるだけで発動するトラップかもしれない。皆をゲームの中に入れたやつのことだ、用心に越したことはないだろう。
「あ……は、八号さん」
突然、背後から声が聴こえ振り向くと、本屋の入り口に三号が立っていた。そして指先に違和感を感じ視線を手元に戻すと、地図に触れていた。
――あかん。触ってもうた。
「うっ、ぎゃああああああああああああああああああ」
「きゃあああああああああああああああああああああ」
八号が可憐なソプラノ系男子の本領を遺憾なく発揮し、その悲鳴に驚いた三号が絶叫することで見事なハーモニーを奏でる。
「――って、何も起こらないじゃないか」
突然冷静さを取り戻す八号。我に返り再び本を手に取ってみるが、一切の変化を感じられない。
「ぷっ、あはは。八号さんって面白い人ですね」
「あは、あはははは」
上手い対応の仕方が思い浮かばず、八号は頭をかいた。
――別に、ウケを狙ってやったわけじゃないし、本に触れた時はマジで焦ったんだからな。
八号は一旦本を置き、三号の方へ向き直った。
三号。さきほど広場で助け船を渡してくれた人物。亜麻色のショートボブが似合う、小柄な少女。その大きな瞳は、欠片の濁りもない、純粋で透明な色をしている。透明な色というのも可笑しな表現だが、そう例えずにはいられない、そんな目。
「……八号さん? どうしたんですか、顔が固まってますよ……?」
――うん、タイプだ。どストライクだ。
「うん、タイプだ。どストライクだ」
「……八号さん……?」
気が付くと、互いの吐息が届きそうな距離まで三号が近づいてきており、上目づかいで八号の顔を覗き込んでいた。
「え……ぁ……ち、近いっす……」
「あっ、ご、ごめんなさいっ」
三号ははっとして八号から離れる。しかし、その瞳は離れることなく八号の方を見つめている。
「えーっと、俺の顔に何かついてる?」
「いえ、そうじゃなくて……その、タイプだ……とか、ストライクだ……とか言ってました」
――やっべ、声に出てたのかよ!? それじゃあただの変態じゃねえかよ!! ……元から変態だろとか言ったの誰だ。
改めて三号の顔を覗くと、かなり赤面している様子が窺えた。
「えっと、あはは、今のナシで、カットで」
――ったく何言ってんだ俺は!? くそ、わからない。そもそも俺女子と話したこと殆ど無いし。
「くすっ、本当に面白いですね。でも私、あなたのことは信用していますから」
「そりゃあ嬉しいな。でも、なんで俺のこと信用してるんだ?」
八号の質問に、三号は無邪気に笑って「それは八号さんはいい人だからです」と答えた。
人を信用するのは大切なことだ。しかし――
「まだ知り合ってから短いじゃあないか。お互いのことをよく知っている訳でもないのに、なぜ?まさか俺がさっき協力しようって言ってたから?」
「はい、それもあるかもしれませんね」
「なあ三号、お前は純粋すぎる。もし俺が六号みたいな気性の荒い人間だったらどうするんだよ」
――はあ、我ながら説教臭くておせっかいで気持ちが悪い。でも、三号だけは自分が守ってやりたいと思う。まだ知り合って間もないのに、三号はまるでずっと一緒にいた妹のような感じがしたから。
「八号さんって優しいんですね。この状況で私の心配をしてくれるなんて。でも大丈夫ですよ、だって私、皆さんの過去を知ってるんですから」
「皆の……過去?」
「はい、ここに来た時に急に頭に入ってきたんです。まるで自分の記憶みたいに」
そう言うと三号は自分の持っていた情報――皆の過去の記憶について手短に話した。
「――私が知っているのはこれくらいです。それと、なぜか皆さんの名前とゲームに関係してるっぽいことはノイズがかかったように、意図的に記憶から消されているんです」
「名前、か」
――ゲームに関することが消されているのは分かる。だが名前がわからないのは謎だ。名前が何かのカギになっているのだろうか?
――まあいいや、いずれわかるだろう。
「でも、不思議だよな。なんで三号は皆の過去を知ってるんだ? いや、違うな。なんで三号にだけ情報が渡されているんだ?」
「さあ、私にもさっぱりです。それより、皆さんは本気でゲームをやろうとしてるんですか? なぜ辞めようとしないんですか?」
「そんなの……ディーラーが――」
三号の予想外の質問に、八号は広場でのディーラーとのやり取りを思い返した。
――あれ、そういえば何故だ? 何故俺たちはゲームをやらなければならないんだ?
「――ディーラーはあの時、ゲームを辞退することについて一切言及していない……?」
八号が呟くと、三号は「はい」と頷いた。
――確かにディーラーは重要なことを隠している気がする。いや、あってるけど違うな。何かを隠しているのはディーラーだけじゃない。
「なんだか……おかしいことだらけです……このゲームも、それに皆さんも……私、怖いんです」
三号は俯き、消え入りそうな声で呟いた。しかし、これが本来の人間の心情なのかもしれない。八号も含め、全員気が動転しているのは確かだった。死の恐怖が人間を闇に沈めているのだ。
「お願いです八号さん! 信じられるのはあなただけなんです! 私と一緒に――」
三号はその目に涙を浮かべて懇願した。その言葉は途中で途切れたが、八号は全てを察した。
しばらくの葛藤。
「悪い。そいつは無理だ」
――きっと漫画の主人公やアニメに出てくるヒーローならここで三号を助けるんだろうな。だけど俺にはそんなことはできない。このゲームで生き残れるのは一人だ。だとすれば、もし二人で生き残ったとしても、いずれ俺と三号でも戦わなければならなくなり、最後には……。
「このゲーム、生き残れるのは一人なんだ。お前と仲良くなった後、俺にはお前を倒す勇気も、お前に倒される覚悟も無い。お互いに深く関わらない方がお互いのためってもんだろ。さっきは勝手なことを言って悪かったな、それじゃ」
「そ、そんな……」
これ以上の深入りは危険だと判断した八号は三号に背を向け、本屋を出ようとする。三号の悲しみ、不安、絶望等が入り混じった視線が痛いほど背中に刺さるのを感じた。
「お前はいいやつだ、できることなら生きててくれ」
そして本屋を出て歩き出す直前、八号は振り向きもせず絞り出すように言った。
――三号はその小さな体で精一杯生き抜こうとしている。そんな彼女に俺がしたことは何だ?
淡い期待を抱かせ、手を差し伸べたふりをし、絶望へと突き落とした。
「くそ、そんなこと考えるだけ無駄だ。このゲームは生死が懸かっているんだぞ、他人のことなんて―――」
そこまで言って気が付いた。
結局、人間ってのは自分が一番大切なんだ。
「『生きててくれ』だって? はっ、笑えるな。自分じゃあできないからって放り投げたんだ。本当、俺って最悪だね」
精一杯の自虐と、三号への謝罪の意を含んだ言葉。
――そう、なんだかんだ言って最終的に逃げてるだけなんだ。
八号は滅入った気を紛らわすために、少しの間街を徘徊することにした。
「はあ……ほんと、なにやってんだろ……俺」
――― ゲーム開始 ―――
『――なんだよ、そんなことだったのかよ。それなら――』
何かの核心に触れた瞬間、八号の意識は現実に引き戻された。
キーンコーンカーンコーンと遠くの方で学校のチャイムが鳴っている。何やら放送をしているらしいが、脳が覚醒しきっていないせいで濃い霧がかかったようにぼんやりとして、何を言っているかが判断できない。そんな亡霊のような八号の意識は、次の一言で急激に加速する。
≪――ただいまより、サバイバルを開始いたします――≫
そのたった一言のアナウンスが繰り返し流れる。八号を含めた十人しかいない街はやけに静かで、放送が終わった後もその残響がしばらくの間響き渡っていた。
八号がいる場所は先程違和感を覚えたレンガ造りの時計塔の前。周りを見回すが目視できる範囲には人はいない。
「ゲームが始まった……のか?」
時計塔を一瞥、時刻はちょうど正午。短針と長針が十二のところでぴったりと重なっている。ディーラーの言っていた通り、本当にサバイバルゲームが始まってしまったようだ。八号は焦る気持ちを抑えて、状況を整理するため周囲を確認する。そこにあるのは先程までと何ら変わらない風景。どうやら、フィールドに変化は無いみたいだ。
「ふう……とりあえず環境は変化なし、か」
しかし、八号が一番気になっているのはそこではなかった。
「……さっきまで俺は何をしていた?」
――三号と別れてから今までの三十分程の記憶が綺麗に欠落している。これは明らかに異常だ。そして、
「俺はさっき、何に納得した……?」
――恐らくこのゲームに関係している可能性が高い。そしてあの時俺は「それなら」と言っていた。つまり、俺が気づいた“何か”が分かったことで現状を変えることができるわけだ。俺のあの反応からして、その“何か”はきっと現状を良い方向に変えてくれるもの。となると――
「これは完全に希望的観測だが、賭けてみる価値は充分にある。よし、今からでも間に合う。とりあえず三号に連絡を……」
ヘッドフォンに手をかけたが、先程の件が脳裏を過り、ボタンを押すのを躊躇ってしまう。
「やっぱりもう一度直接会って謝るべきか」
――当面の目標は三号を探して合流することだな。だけどその前に安全を確保しないと。
そんなことを考えていた矢先、広場の入り口に人影が見えた。
「広場の入り口から誰か出てきたな。会って話をするべきだろうか」
人影は見えているが、それが誰かは判断できない。瞬時に様々なパターンが脳内で推測、演算された。先程の広場での会話や行動から、その人の人物像を考える。三号から得たその人の記憶を頼りに描き出された人物像を確かなものにし、危機的状況に陥った際のイレギュラーな行動も視野に入れ――と、格好良く表現したが、一言で言えば妄想をしている。
そして妄想の結果は、結論から述べると、危なくなる可能性が高かった。
「気づかれるとまずいな……。とりあえずこの時計塔に隠れよう。ここなら見つからないだろうし」
八号は、時計塔の入り口に向かって走った。
扉に手をかける。錆びついた金属の軋む音と共に室内に陽光が差し込む。たった一つの入り口以外に光を取り込む場所は無く、扉が閉まると同時に視界から光が消えた。
「うわ、かなり暗いな」
暗闇に目が慣れず何も見えないため、扉を開けていた一瞬を思い出して部屋の間取りを確認しながら、壁伝いに奥へと進む。部屋は約五メートル四方の正方形で、内装は全て古びたレンガ造り。部屋の中には何もなく、扉の丁度向かい側に二階へと続く階段がある。
「確か、部屋の奥に階段があったよな」
そして八号は記憶を頼りに、なんとか階段へ辿り着いた。階段の上の方に少しだけ明かりが見える。二階の窓からの光だろう。
「さてと、これからどうしたものか」
――恐らく今、この建物の外には誰かがいるだろう。扉を開けて確認すると気づかれる可能性が高い。となると外の状況を探るには上の階へ行って窓から見るしかないんだが……。
「この建物に人がいないとは限らないんだよなあ。誰かいた場合、丸腰の俺じゃあどうにもならないし」
そんなことを呟きながら階段の前で右往左往していると、金属の軋む独特な音と共に、扉が僅かに開いた。
「やば! ばれてたのかよ!?」
扉の隙間から漏れて入ってくる光は徐々にその大きさを増していく。焦った八号は、光が階段に届く前に階段を上ろうと、勢いよく階段に足をかけ、勢いよく踏み外し、階段から転がり落ちた八号はそのまま勢いよく部屋の中央へ転がっていった。
八号が恐る恐る目を開けると、扉を背にして立っている人間の悍ましい影が浮かび上がっていた。
「痛たたたた……。ひっ! す、すみません許してください何でもしますから!」
「ん? 今何でもするって言ったよね? …………ふふ、冗談です。本当に面白いですね、八号さん」
何やら聞き覚えのあるその声と台詞に、八号は目を見開いた。よく見れば、そこには見覚えのある顔。
「って、三号じゃないか!」
「はい、お久しぶり……いえ、四十分ぶりくらいですね」
三号は、八号を見下ろして微笑む。その顔は、扉から入る光と相まって、まるで天使のようだった。だがその健気な容姿を見た途端、八号は唐突に本屋での出来事を思い出した。
――仲間との協力。それは本当にしてはいけないことなのだろうか。確かに俺はあの時親密になるのが怖かった。だが今は――
「その……さっきはごめん」
正直に、真摯に頭を下げる八号。
「い、いえいえ大丈夫ですよ! 全然気にしてませんから」
そんな八号に、三号は慌てて首を振った。
「それで、さっきのことなんだけど……やっぱりお前と協力したい。こんな自分勝手な俺でよければ一緒に行動してほしい」
八号は再び頭を下げる。今度は謝罪ではなくお願いで。
「え? あ、は、はい。こちらこそ、こんな弱い私ですがよろしくお願いします」
三号は戸惑いながらもにっこりと笑ってくれた。
「でも……なんで急に協力してくれるようになったんですか? 何があったんですか?」
――もちろん急に手のひらを返したように意見を変えたのには理由がある。ただ、
「詳しくは自分でも覚えていないんだ」
「…………はい?」
八号の思わぬ一言に、三号は困惑した表情を見せた。
「さっき――ゲームが始まる寸前、俺はこのゲームの根幹に関わる何かに触れた気がしたんだ。それがどういうものかは思い出せない。だけどこのゲーム、俺らが見落としている所があると思う。このゲームが本当は皆が殺し合わなくてもクリアできるゲームだと俺は信じたい」
「は、はあ……なるほど」
突飛な発言を繰り返す八号に対して、何て返答をすればいいのかわからなかったのか、三号は苦笑した。
「ところで、なんで俺の居場所が分かったんだ?」
「八号さんの匂いを辿ってきました」
「匂い……? そうか、お前は鼻がよくなったのか」
今まで他の人と関わらなかったから実感できなかったが、皆それぞれ確かに体の一部が強化されているらしい。
「はい、実は本屋の時だってあなたの匂いを辿って……」
「ん、何か言った?」
「い、いえ! 何でもありません! そ、それより八号さんの能力は何ですか?」
「俺の能力か……」
どうなんだろう……確証は無いが、
「俺は頭がよくなったらしい」
ゲームが始まる前から、自分自身の考えではない案が頭の中に浮かんでくるのは恐らくその恩恵だろう。
「頭がいいなんて羨ましいです! 天才さんですね!」
「えへへ」
―――うわあ、女子から褒められた。しかもこんな可愛い子に。やべえまじテンションアゲアゲなんですけど〜(?)…………いや、待て。褒められているのは能力じゃないか。
それに気づくや否や、八号の頭は即座にクールダウンした。
「な、なあ、俺らの近くに他の人の匂いはあるか?」
恥ずかしさを紛らわすために質問を投げかける。
「うーん、そうですね……。私が広場に居た時点では、この近くに人はいませんでした。他の皆さんの位置なら、広場に五号さん、広場の南側に七号さんと二号さんがいます。そして、恐らく広場の西側に十号さんと六号さん、広場の東側に四号さんと九号さんがいると思います。さすがにそこまで詳しくはわかりませんでしたが」
「すげえなおい。白眼でも持ってるのか!? 日向は木の葉にて最強なのか!?」
「な、何のことですか……?」
「いや、何でもない。こっちの話だ」
凄い。予想を遥かに上回る能力だった。
だが、同時に一つの疑問が浮かぶ。
「一号の位置は分からないのか?」
「それがですね……」
八号の質問に、三号は表情を曇らせた。
「今、結構強い南風が吹いているんですよ。どうやらその影響で……」
「広場では匂いを感じなかった。恐らく北側にいるが確証は持てない、と」
「そういうわけです」
―――そうか、匂いを嗅ぐわけだから風には弱いのか。西側と東側にいる人たちの時に“恐らく”と言っていたのもそのせいだろう。
「それにしても、一号の位置は知りたかったなあ」
八号がぼんやりと呟くと、三号の表情がより一層暗くなった気がした。
「私の力不足で……ごめんなさい。……一号さんのことが気になるんですか……?」
「ああ、まあな。あいつは一番凶暴だし、鉢合わせしたら危ないだろ?」
「……ふふ、そうですね」
三号は何故か急に元気を取り戻したようだった。
「じゃあ、まずはどうしますか?」
「とりあえず街の北側にある商店街に行く」
サバイバルに必要な物資と武器を手に入れるためだ。街の北側には一号しかいないから鉢合わせする確率は少ないし安全だろうと判断した。
「さあ、そうと決まればずっとここに居ても埒があきませんよ。行きましょう! ほら、早くしないと置いてっちゃいますよ!」
「あ、待った待った。すぐ行くから…………って既にいないし!?」
「あはははっ」
―――三号って本当はこんな明るい人だったんだ。
それは、初めてのはずなのにどこか懐かしい感覚。そんな三号といると何故か楽しくて、暖かくて、自分が陥ってしまったサバイバルという現実も忘れるくらいだった。
―――――――――――――――――――――――――――――————————
一号
性別:女
人物:JK。ポニテ。よくいるヒロイン的性格。
二号
三号
性別:女
人物:茶髪。ショートボブ。可愛い系。
四号
五号
性別:男
人物:メガネおじさん。優しそう。五十代。
六号
性別:男
人物:パツキン。パリピ。喧嘩好きそう。二十代。
七号
性別:女
人物:お母さん的な。三十代。茶髪。おっとり。
八号
性別:男
人物:主人公。童顔。童貞。高校生。
九号
十号
性別:男
人物:メガネくん。大学生。優等生って感じ。
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