第66話 千五百発
翌朝6時、僕はいつもより早起きしてSSSを服の下に着て、寮を出る。六時五十分、約束の十分前に河原に到着すると、既にシンヤは到着していた……。
「シュウ、遅いぞ!」
「まだ、十分前じゃないか……。いつもはシンヤの方がギリギリか、遅れて来るのに……」
「いつまでも過去を引きづってたらいけねえぜ?」
シンヤがそれを言うのは絶対違うだろ、と思いながら実験の準備を始める。昨日置きっぱなしにしていた的も誰かに回収されていたりすることはなく、セッティングを行う。
「そんじゃ、昨日と同じ五十メートルから始めるぞ!」
僕らは所定の位置につき、実験を開始する。二百発ほど撃っただろうか……。結局、的の中央に当たる割合は五十%を超えることはなかった……。
「なんでだろう? 五十メートルに離れた途端、ガクッと的中率がさがったね……」
「……風の影響が大きいんだろうな……。距離が長くなればなるほど、弾が着弾するまでの時間が長くなるし、それに比例して風の影響は大きくなるからな……」
「でも、それにしたって三十メートルの時は九十八%当たってたのに、一気に五十%を下回るのはおかしくない?」
「三十メートルの時はオレの家でやった結果だからな。オレの家には塀もあるし、風の影響が少ないんだろうな。なんせこの河原には風を遮るもんがなにもないからな。こんだけ広いと、場所によって風の状態が変わってくるんだろうな。SSSも風速計だけのデータじゃ、修正しようがないのかも」
「それが正しいとなると、三十メートル以下の距離の実験も河原でやり直さないといけないよね?」
「ああ、ちょっとやってみっか!」
僕たちは三十メートル以下の距離での実験も再度河原でやってみた。九十%程に下がってしまうが、命中率はそこまで極端に下がることはなかった。念のため、三十メートルから五十メートルの間の距離でも実験してみる……。
「四十五メートル辺りから、的中率がガクッと下がってくるみたいだな……」
シンヤの言葉どおり、四十メートルまでは的中率が八割を超えていたのだが、四十五メートル辺りから、六割を下回るようになっていた……。
「こりゃ、的中率を上げるのは断念した方が良いかもな。まあ、とりあえず折角だし、百メートルまでは実験しようぜ! 五十メートルはもう終わったから、六十メートルから百メートルまで、十メートル刻みで各三百発ずつデータを取ろう!」
「全部で千五百発か……」
「2日あるし、なんとか今日、明日で終わるだろ。シュウ、頑張ってくれ!」
気が遠くなりそうだが、SSSを作った時は一万項目も作業があったのだから、それに比べれば大したことはないか……。早速僕は六〇メートル離れ、発射を開始する……。外れる度に、シンヤが修正を一応加えて行くが、劇的に的中数が増えることはなかった。実験は順調に進み、八十メートルの実験が終わった段階で土曜日の実験は終了した。
「じゃ、また明日な! 解散!」
シンヤから解散の言葉が発せられ、僕らは自宅に帰るのであった……。
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