第65話 五十メートルの距離から

 翌日、週末の金曜日。僕とシンヤは河原に来ていた。もちろん、パチンコの発射テストをするためだ……。レーザーポインタを人に向けてはいけないし、万が一にもゴム弾が人に当たってもいけない。僕らは細心の注意を払って実験を実施する……。的との距離が五十メートルであることをパチンコに備え付けられたレーザー距離計で確認し、実験を開始する。


「よし、シュウ、始めてくれ!」


 シンヤが無線機で僕に連絡する。それにしてもシンヤは本当に色々な機械を持っている……。正直言って羨ましい。僕も金持ちに生まれてたらなあ、などと思いながら、パチンコを構える……。河原に実験場所を移すのに伴って的も直径1mから直径3mのものに変更した。さすがに五十メートルの距離から直径1mの的に当てるのはいかにSSSの補助があるとはいえ、困難だとシンヤは判断したのだ。


「それじゃあ、いくよ! 発射!」


 僕はハンズフリーの無線機でシンヤに合図を送り、ゴム弾を発射する……。ゴム弾は的の上方に大きく外れてしまう……。


「ヤッバ!? シンヤ! 後ろに人はいなかったか!?」

「大丈夫だ! こんなに外れるなんてな……。次からは、オレが発射の合図を送るまで撃たないでくれ! 安全を確認してから発射させるからよ!」

「了解!」


 僕は再びパチンコを構える……。


「シンヤ、こっちは準備オッケーだよ!」

「こっちも大丈夫だ! 撃ってくれ!」


 シンヤの合図とともに再びゴム弾を発射する……。どうやら、今度は当たったようだ……が、五十メートルも離れると的のどの部分に当たったのか僕の位置から確認するのは難しい……。


「シンヤ、どう? 当たったよな?」

「ああ、的には命中してるぜ。でも、中央からは左下に1mくらいずれた所に当たってる。修正作業するから待っててくれ!」


 無線機でのやり取りは直接口でやり取りするよりも時間がかかってしまう……。そのため、シンヤの家で実験していた時よりもどうしてもペースが落ちる……。


「よし、準備できたぜ! シュウ、撃ってくれ!」


 僕はパチンコを発射する。その後も何十回と繰り返したのだが……。


「ダメだ! 全然中央に当たってねえ!」


 直径3mの的にはほぼ百%当たるのだが、直径三十センチの的の中央に当たる割合は五十%を下回ってしまった……。そうこうしている内に午後6時を迎えてしまう……。シンヤの家ならば明かりがあるので、実験を続行するところだが、なにせここは河原だ。さすがにシンヤも巨大なライト、投光器は持っておらず、日没とともに今日の実験は終了することになった……。


「明日、明後日は土日だしな。朝からやろうぜ! 7時にここ集合な! それじゃ解散!」


 いつもどおりのシンヤの解散の合図で僕らは別れ、それぞれに帰宅するのであった……。河原に的を置きっぱなしにして……。……怒られないよね……?

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