第62話 パチンコの練習

「ああああああああ! い、いたいいい!」


 次の日、僕はあまりの筋肉痛に体を動かせないでいた……。


「どうしたの? 天野くん。そんなに苦しそうに……」


 赤崎さんが心配して声をかけてきてくれた……。今日は僕とシンヤと赤崎さんと3人で、いつものファミレスで昼食を取っていたのだ。ついこの前、このファミレスでご飯を食べた時は湿った空気になってしまったが、今日は赤崎さんもシンヤもいつもどおりの様子だった。


「いや、昨日シンヤとマラソンしてさ……。筋肉痛がひどくて……」


 僕は苦しんでいる理由を赤崎さんに打ち明ける……。


「ちょっとシンヤ、アンタ天野くんに無理させるんじゃないわよ!」


 赤崎さんがシンヤに説教する……。


「いや、でも3キロ走っただけだぜ?」

「え?」


 赤崎さんが僕の方を見る。その目は、哀れなものを見る目だった。その目を僕に向けるのはやめてください!


「天野くん……。それは体力なさすぎよ……。そんなんじゃ彼女できないわよ!」


 今回ばかりは、さすがの赤崎さんもシンヤ側についてしまったか……。……それにしても痛い……。ちなみに、シンヤの家でパチンコを研究していることは赤崎さんにはナイショだ。「絶対作るのをやめさせられるから言っちゃダメだぞ」と僕はシンヤに釘を刺されている。


 この日の放課後はシンヤがサッカーでラボ集合はなかった。しかし、僕はシンヤ宅に……ラボに向かった。何を隠そう、パチンコの練習をするためだ。もう、僕は走りたくなかった。走らなくて良いようにするには、パチンコをまともに撃てるようになるしかない!


 僕は自分でも信じられないくらいに真剣に、そして集中してパチンコの練習をする……。


 とりあえず、3mの距離から的に向かって玩具のパチンコを撃ってみる……。弾を持つ場所、目線の高さ、ゴムを引く時の腕の角度、足を広げる幅など……、様々な要素に気を付けて練習を続ける。3時間ほど練習すると、コツを掴んできたのか、運動神経がない僕でもそれなりに真っ直ぐ飛ぶようにはなった。


「お、シュウ! 来てたのか?」


 午後8時、シンヤがサッカーの練習を終え、帰宅する。僕はパチンコの訓練成果をシンヤに見てもらう……。


「おお、大分マシになってんじゃん! 明日からは実験を再開できそうだな!」


 僕はホッと胸を撫で下ろす……。なんとかマラソンの刑は回避できそうだ。

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